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第二十一話 略奪の召喚者
しおりを挟む私はサーワリ侯爵に呼ばれたので、サーワリ侯爵家の屋敷に向かった。
リニスの手紙を持って。
サーワリ侯爵家の屋敷に到着すると、執事に案内され、応接室に通された。
応接室にはサーワリ侯爵とリニスの兄が既に待っていた。
私が席に座ると要件を話し始めたが、聞いたことが無い話だった。
「略奪の召喚士ですか?」
「ああ、略奪の召喚士だ。他人の契約している魔物を略奪し、自身で召喚することができるのだ」
そんな召喚士が存在するとは。
対策しなければな。
「タリー君が契約しているハリケーンバードを奪われないように何かしら対策してくれ。ちなみに、この情報は混乱を防ぐために一部の者達しか知らせれてない」
サーワリ侯爵はエーカが特殊進化したハリケーンバードだと知らない。
教えておくか。
最悪の想定をして。
私はサーワリ侯爵の目をしっかりと見た。
「サーワリ侯爵、人払いをお願いします」
「それ程、重要だということか?」
私は頷いて答えた。
「分かった」
サーワリ侯爵は使用人達に指示を出し、人払いをしてくれた。
「人払いは済んだ。さて、どんな内容なのだ」
「私が契約してるハリケーンバードについてです」
「契約してるハリケーンバードの件だと?」
「はい。事前に言っておきますがこのことを知っているのは私とリニスだけです」
「それ程のことなのか?」
「はい。実は私が契約しているハリケーンバードはエーカ、いえ、歌姫なのです」
サーワリ侯爵とリニスの兄は驚きの表情を浮べていた。
「す、少し待ってくれ。タリー君の恋人の1人が契約しているハリケーンバードだと。私の聞き間違いか?」
「聞き間違いではありません」
「だ、だが、ハリケーンバードは黄緑色の小鳥では無いのか?」
「ハリケーンバードとしての姿はそれですが、エーカは特殊進化し、人型になっているのです」
「そんなことがあるとはな」
サーワリ侯爵は私の目をしっかりと見て来た。
「タリー君。何故、今そのことを私達を」
「略奪の召喚士にエーカを略奪される最悪の想定を避けるためです。何かしらあった場合、エーカの避難をお願いしたい」
サーワリ侯爵に少しの期待眼差しが向けられた。
「もし、そうなった場合はリニスもここに避難するのか?」
「はい。エーカだけを避難させるわけないですから。避難することが決まりましたら、必ず説得します」
「そうか」
サーワリ侯爵は嬉しさを隠さなかった。
一応、避難について話してからサーワリ侯爵家の屋敷を離れた。
家に向かって歩いていると、鐘の音が鳴り響き始めた。
衛兵や騎士団などの街を守る者達が正門の方に向かって走っていた。
走っている衛兵達の会話がちらりと聞こえた。
略奪の召喚士と。
まじかよ。
王都に来るとは。
念の為、エーカとリニスにはサーワリ侯爵家の屋敷に避難させよう。
直ぐに家に帰って、リニスを説得しないとな。
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