隻腕の剣士は魔具と共に

竹桜

文字の大きさ
54 / 64

第五十四話 久し振りの護衛

しおりを挟む

 ツーヤにキスされた日から1週間が経った。

 そんな日に私は衛兵の格好をし、カーシャの護衛している。

 護衛の依頼をされたのだが、正体を隠して欲しいとも言われた。

 色々と面倒が起きるからだ。

 それは私も理解しているので、直ぐに了承した。

 だから、衛兵の姿で護衛をしている。

 バレないように私はカーシャの側にいないが、踏み込めば一瞬で側にいける。

 カーシャは真偽瞳を使い、真偽を判定している。

 その判定で人生が変わる者が多い為、カーシャに何かしらする者が多い。

 大体の者は懇願するが、一部の者は暴言を吐く。

 そして、中には近寄って危害を加えようとする者もいる。

 だが、その者は近くにいる警備員に拘束され、強制的に退場させられる。

 今回の私は1人の衛兵だから何も出来ない。

 だが、思ってしまう。

 私が隣にいたら、何も起きないのに。

 そんなことを思っていると裁判が終わったのだ。

 それと同時に傍聴席に座っていた人物が立った。

 立った人物は何処にも居そうな女性だったのだ。

 その女性はカーシャの方を指差し、口を開き始めた。

 「お前がいなければ、隻腕の剣士、いや、黒の聖母様にお礼が出来た。責任を取って下さい」

 そう言い、女性はカーシャから視線を離したのだ。

 「皆さんも思いませんか?確かに暴徒達にも原因はありますが、お礼が出来ないというのはどうですか?」

 その言葉に周りの人間が徐々に賛同していく。

 やばいな。

 場が支配されていく。

 (さて、どうする?場は確実に支配されているぞ、小僧)

 (そうだな。だが、1つだけいい方法がある。依頼は失敗はするがな)

 (それでこそだ、小僧)

 そんな会話を終えた私は衛兵の装備を脱いだのだ。

 そして、ペリースを身に包んだ。

 私は踏み込み、瞬時にカーシャを庇うように立ったのだ。

 「先程から聞いていれば勝手なことを」

 突然の登場にこの場は静寂に包まれたのだ。

 静寂を破ったのは訴えた女性だった。

 「せ、隻腕の剣士」

 そう言い、女性は明らかに恐怖を浮かべていた。

 それもそうだろうな。

 私は殺気を向けているからだ。

 まぁ、武器は取り出していないが。

 「先に言っておく、カーシャは黒の聖母と仲が良い。だから、こんなことをしてお礼を素直に受け取って貰えると思っているのか?」

 私の言葉を聞き、女性は絶望の表情を浮かべていたのだ。

 「追撃するようで悪いが、私達はもう2度報奨は受け取らないぞ。貴方1人のせいで」

 その言葉で、女性は両膝をついたのだ。

 それを確認した私はカーシャの方を向いた。

 「帰ろう、カーシャ」

 「ん」

 私は護衛の依頼が失敗したので、そのまま家に向かって移動を始めた。

 止められることは無かった。

 その後、何事もなく家に到着したのだ。

 家の中に入ろうとするとカーシャに名前を呼ばれた。

 名前を呼ばれた私はカーシャの方を振り向いたのだ。

 「ハーグ。屈んで、目を瞑って」

 「?分かった」

 疑問に思ったが、私は屈んでから、目を閉じたのだ。

 暫く何も起きなかったが、突然唇に柔らかい感触を感じたのだ。

 まさかと思いながら、私は目開けた。

 目を開けた私の目の前には真っ赤な顔をしたカーシャがいたのだ。

 そのままカーシャは家の方に向かって、小走りで去ってしまった。

 やっぱりキスされたのだな。

 カーシャに。
 
 私は右手で自身の唇を触ってから、家に向かって歩き始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...