57 / 64
第五十七話 隠してきた真実
しおりを挟むあれから何事も無かったのだが、何故こうなった?
ただの護衛、いや、妹が姉に会うための口実だったのに。
何故だ?
私は王位継承争いの会議に参加していただけなのに。
その会議には第一王子と第二王子と父上がいたのだ。
それぞれの支援者達の討論は加速していくが、父上は興味無いような表情を浮かべているだけだった。
興味を示したのは私達とマーシア嬢だけだったのだ。
何故、マーシア嬢と思ったが、エシアの妹からだと直ぐに理解出来た。
父上は。
そんなことを思っていると、議論は泥沼になっていた。
ただの感情論となっている。
それを止めたのは第一王子だった。
「このままでは埒が明かない。どうか、父上。決闘を」
父上は興味無さそうに頷くだけだった。
移動となったが、父上が待ったを掛けたのだ。
「待って。決闘の邪魔になるといけないから、隻腕の剣士はここで待機だ」
私は驚きで父上の方を向いてしまった。
「案ずるな。護衛はつける」
「感謝します」
それから、私は父上と2人きりになったのだ。
「最初に聞きたいことがある。カーシャ嬢の隣にいた少女は?」
「リニ嬢はカーシャの妹です」
「そうか、そうか。息子の婚約者の妹さんか」
そう言い、父上は嬉しそうな表情を浮かべていたのだ。
「その質問をするためだけでは無いですよね」
「ああ、そうだ。決闘となると私を昔から支えてくれた宰相がいる。そして、その宰相はミアのことを知っている」
「私が母上の子とバレないようにするためですか」
「そうだ」
そんな会話をしていると懐から大きな音が鳴ったのだ。
「父上」
「行け」
私は頷いて答え、踏み込んだ。
既に漆黒の剣を抜き、黒霧の左腕を生やして。
直ぐに到着した決闘場の真ん中には何かの結界が貼られていた。
そして、その真ん中には剣を地面に突き刺し、今にも倒れそうな第二王子がいたのだ。
「今更来たか、隻腕の剣士。だが、何もかもが遅いぞ」
そんな言葉が耳を過ぎるが、私はカーシャの方を向いた。
魔法具はカーシャが手動で作動させたみたいだな。
さて、やるか。
エシアの妹の大切な婚約者を守るために。
そう思い、私は歩みを進めた。
「いかに最強だとしても無理だぞ。この結界は王家の者しか入ることが出来ないからな」
そう言い、第一王子は勝ち誇った表情を浮かべていたのだ。
結界術か。
しかも、特定の。
だが。
(確かに有効だな。小僧が王家の血を引いていなければの話だがな)
漆黒の騎士の言う通りだ。
私はこの王家の血を引いている。
しかも、正室の。
私が結界に少し触れるだけで、一瞬にして崩れて去ったのだ。
それにシェリル達以外の者は驚きの表情を浮かべていた。
「お、お前は何だ?何故、この結界を」
「答えるのは簡単だが、見た通りだ」
私がそう答えると足音が聞こえた。
足音の先には1人の老人がいたのだ。
そして、その老人は深く頭を下げた。
「お久しぶりでございます、ハーグ様。貴方様の姿を見えて、感無量で御座います」
「もしかして、ナラシか?」
「はい、そうで御座います。ミア様にお似に」
そんな会話にシェリル達以外の者達は驚きを隠せない。
「な、何だ、お前?」
「無礼な。この御方は国王陛下の正室のミア様の御子息のハーグ様だぞ」
「宰相。一応、それは息子が隠していたことだぞ」
声がした方にこの場にいる者達の視線が向けられる。
そこには父上がいたのだ。
「さて、息子よ。王位を継ぐ気はあるか?」
「無いですよ。そもそも、今から教育しても遅いです」
「それもそうだな。だが、王位継承者を選んでくれ」
「なら、第二、いえ、第三王子でお願いします」
「うむ、了承した。ならば、姿勢を正せ」
その言葉に驚きで固まっていた貴族達は姿勢を正したのだ。
「シーグス王国、現国王として宣言する。王位を継ぐのは第三王子だ。これに異論は認めん」
その言葉の後、貴族達は頭を下げたのだ。
「これにて、決闘は終わりだ。息子よ、後でまた話そう。今は説明してやれ」
父上が向けた先には私が王家の人間だと知らなかった者達がいたのだ。
確かに。
その後、私は説明したのだ。
全てを。
全てを話し終えた後、父上と宰相と話したのだ。
そして、暫くシーグス王国に滞在することになってしまった。
結局、カーシャが取ってくれた期間の間、私達はシーグス王国に滞在していたのだ。
10
あなたにおすすめの小説
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
愛鶴ソウ
ファンタジー
十二の公爵によって統制された大陸の内、どの公爵にも統治されていない『東の地』
そこにある小さな村『リブ村』
そしてそこで暮らす少年剣士『クロト』。
ある日リブ村が一級魔物『ミノタウロス』によって壊滅させられる。
なんとか助かったクロトは力を付け、仲間と出会い世界の闇に立ち向かっていく。
ミノタウロス襲撃の裏に潜む影
最弱属性魔剣士の雷鳴が今、轟く
※この作品は小説サイト『ノベルバ』、及び『小説家になろう』にも投稿しており、既に完結しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる