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第一話 ハッピーエンドが無いヒロイン

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 大地が崩壊を始め、空が割れている。

 絶望的な状況だ。

 そんな中、ある崖に、少女が、立っている。

 「本当に、ありがとう、リク」と言い、少女は、振り向き、悲しそうに微笑んだ。

 その少女の髪や瞳は、黒色をしている。

 そして、その少女の背中からは、黒い翼が生えている。

 「私、リクと、出会って、から、たくさんの、奇跡が、起きた。いっぱい、いっぱい、リクに、貰った。今度は、私の番」と言い、少女は、短剣を取り出した。

 「リク、ありがとう。私を、選んで、くれて。本当に、嬉しかった。だから、リクには、生きて、欲しい。バイバイ、リク」と言い、少女は、満面の笑みを浮かべた。

 満面の笑みを浮かべた後、少女は、短剣を自らの心臓に突き立てた。

 少女は、振り向き、口から血を流しながら、微笑んだ。

 そして、少女は、崖から落ちた。

 すると、大地の崩壊は、止まった。

 いや、崩壊が、止まっただけでは無く、崩壊した大地の再生が、始めた。

 それから、少し時が経つと、大地は、全て元通りになり、空は、雲1つすら、無くなっていた。

 まるで、全てが、元通りになったかのように。

 たった1人の犠牲で、世界は、元通りになったのだ。

 犠牲になった者は、忌子と呼ばれ、全てを呪い魔王になった少女だ。

 勇者は、選択したのだ。

 全てに愛された少女では無く、全てに愛されなかった少女を選択したのだ。

 その少女を守ると誓い、脅威を全て排除したが、世界が、許さなかった。

 魔王となった少女を。

 魔王となった少女は、選択した。

 初めて愛してくれた勇者を守るために、自身を犠牲をすることに。

 魔王となった少女は、たった1人のために、自身を犠牲にして、世界の崩壊を止めた。

 魔王は、たった1人のためだけに、世界を救ったのだ。

 それが、勇者を苦しめることになったとしても。

 それでも、魔王となった少女は、勇者に生きて欲しいからだ。

 だって、この世界の中で、たった1人だけ、自身のことを愛してくれた人だから。

 トゥルーエンド、たった1人のために。

 コントーラが、床に強く叩きつけられる音が聞こえた。

 画面には、エンドロールが、流れている。

 その画面の前には、苛立ちを隠せない男が座っていた。

 なんで?

 なんで、ハッピーエンドが無いんだ?

 クロエには、当たり前のようにバットエンドばかりで、激ムズの難易度の先が、トゥルーエンドなのかよ。

 シロエのハッピーエンドは、凄く簡単なのに。

 クロエには、ハッピーエンドすら、無いのかよ。

 制作会社、どうなっているんだよ。

 十数回やって、辿り着いたのが、トゥルーエンドなんて、救いがなさ過ぎるぞ。

 なんか、萎えた。

 明日も仕事だし、今日は、カップ麺を食べて、シャワー浴びたら、寝るか。

 そう思い、立ち上がると、足元に放置していたゲームソフトの箱に足を滑らせてしまった。

 突然のことに、受け身が取れず、派手に転んでしまった。

 その時に、首の骨を折ってしまい、即死してしまった。

 痛みを感じる前に、意識を手放した。

 次に目が覚めると、見知らぬ場所にいた。

 自分の手を見て、小さいと感じた。

 まるで、5歳児の手ぐらいの大きさだった。

 おかしいと思い、ベッドから出て、鏡の前に立った。

 すると、驚きのことが分かった。

 この顔は、ゲームの主人公、リク・バレリクだったのだ。

 つまり、俺は、ゲームの中に、転生したのか。

 
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