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第十三話 調整者
しおりを挟む告白が成功してから半年が経った。
その間にリーフは人間では無くなった。
一応、私は上級魔族なので、人間から下級魔族に変える魔法が使える。
だから、人間から下級魔族に変えることになったのだが、リーフの希望でウィッチになったのだ。
どうやら、カリーサと決めたみたいだ。
同じ種族になったか分からないが、2人は仲が良い。
2人きりで街に出掛けることはある。
ちなみにウィッチとなったリーフは病弱な体では無くなった。
普通に幸せな日々を過ごしていたのだが、私は魔王様に呼ばれたのだ。
「魔王様。一体何のようですか?」
「そろそろ500年が経つな」
「そうですね」
「だから、そろそろ現れる筈だ」
「またですか。今回は早いと予想ですね」
「今回は大きな変化があったからな。あの存在は世界を調整することが目的だ」
「そうですね。私にはその時の記憶がないですが」
「まぁ、それは仕方ない。だが、グリークスは、いや、グリークス達は異端だ」
「それはカリーサとリーフのことも含まれていますか?」
「ああ。人間からウィッチになった者と本来なら持つはずがない力を持つウィッチ。そして、単一のグリークス。これで異端な訳ないだろ?」
「確かにそうですね」
「まぁ、その話は置いておいて。話し合いを始めよう」
ソファーに座ろうとすると窓から空に浮かぶ映像が見えたのだ。
私と魔王様は自然と窓に近寄り、空を見上げた。
空には無機質な表情を浮かべた美形の男がいたのだ。
「我々は調整者」
早いな。
調整者。
まだ数年はあると思っていたが、やっぱり人間の国のことが影響しているか。
「500年に1度、我々はこの世界を調整する。今回は人間の国が大きく変わった。だから、魔族側に大きく入る」
大きくか。
つまり、多くの魔族が死ぬということか。
「先に言っておく。グリークスという魔族、いや、その関係者は必ず調整する」
関係者。
そして、必ず調整か。
つまり、カリーサとリーフを殺すということか。
怒りに体を震わせているとある記憶が頭に流れたのだ。
な、何だこの記憶は。
明らかに人間の記憶で、カリーサのリーフに似た者もいる。
そうか。
この記憶は私が失っていたものだ。
ある人生を過ごした英雄の。
その英雄は勇者と呼ばれ、銀髪の聖女と婚約を結んでいたが、銀髪の魔法使いとも婚約を結ぼうとしていた。
だが、そんな時に調整者が現れ、調整を始めたのだ。
その勇者、いや、勇者達は命を懸けて調整者を止めた。
その結果、勇者達は命を失ったが、どんな運命の悪戯で分からないが勇者は転生したのだ。
人間から魔族に。
これで大丈夫だな。
私は思わずニヤリと笑ってしまった。
「グリークス。まさか、記憶が」
「ええ、魔王様。そして、調整者を倒す方法も」
魔王様にそう答えたと同時に空に浮かぶ映像は消えたのだ。
「そうか、グリークス。倒すのか?」
「当たり前です。私の婚約者が狙われたのですから」
そう言い、私は魔王様の元から離れた。
調整者を倒す為に。
さて、やるか。
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