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第十話 恋人に

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 そろそろ、後期の授業が終わりに近づいて来た。

 僕は、ある覚悟を決めていた。

 今日、僕は、緋月に、告白をする。

 僕は、いつの間にか、緋月のことが、好きになっていたんだ。

 僕のことを主様と慕ってくれている緋月を。

 緋月は、擬人化のスキルを使って、人化させた僕のことを、どう思っているか、分からない。

 でも、少なくても僕のことを好意的には、思っているはずだ。

 そうじゃなきゃ、僕に、嬉しそうな表情を、微笑みを、笑顔を、色んな表情を、見せないだろう。

 だから、僕は、告白する。

 覚悟を決めた僕は、緋月を、王立学園の屋上に呼んだ。

 王立学園の屋上は、普段、閉まっているが、学園長に頼んで、開けてもらった。

 僕は、先に屋上に行き、緋月のことを待っていた。

 待っている間、僕は、外を見ていた。

 外は、夕日が、沈みそうだった。

 屋上のドアの開く音が聞こえた。

 「主様、用事とは、何ですか?」と、緋月が、聞いて来た。

 僕は、夕日を見るのをやめ、緋月の方に振り返った。

 「緋月、まず、来てくれてありがとう。少し、大事な用があって」と、答えた。

 「大事な用ですか?」と、緋月が、可愛く首を傾げて、聞いて来た。

 「うん、大事な用だよ」と、答えた。

 僕は、緋月に近づいた。

 そして、緋月の手を握った。

 緋月は、いきなりことで、驚いていた。

 僕は、覚悟を決め、「緋月。僕は、君のことが、好きだ。だから、僕と恋人になってくれ」

 緋月は、驚いた表情を浮かべた後、僕の手を握り返してくれた。

 「主様、私も主様のことが好きです。主様と両想いで、嬉しいです。なので、主様の恋人にならさせて頂きます」と言い、緋月は、笑顔を浮かべた。

 その笑顔は、夕日よりも眩しく、美しかった。

 僕達は、そのまま、手を繋ぎながら、屋上を後にした。

 一旦、Aクラスの教室に戻り、荷物を持って、王立学園を出た。

 王立学園を出た時には、夕日が沈み、夜になっていた。

 緋月を、いつも通り、女子寮まで、送ることにした。

 僕達は、手を繋ぎながら、女子寮に向かって、歩き始めた。

 いつもなら、会話をしながら、歩くのだが、今日は、会話が無い。

 僕も緋月も、なんか恥ずかしくなって、会話を出来ずにいた。

 そんなことしていると、女子寮の入り口に着いた。

 いきなり、緋月は、僕に抱き着いて来た。

 緋月が、耳元で、「あ、主様、おやすみなさい」

 「お、おやすみ、緋月」と言い、抱き返した。

 しばらく抱き着いた後に、僕達は、離れた。

 緋月は、顔を赤くして、逃げるように、女子寮の中に入っていった。

 僕は、そんな緋月を見送ってから、男子寮の方に帰った。

 この日、緋月が、僕の恋人になってくれた。
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