再び歩む為に

竹桜

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第二話 不治の病

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 屋上を後にした俺は栗崎さんと他愛もない話をしながら、降りていく。

 少しして、栗崎さんの病室に到着したのだ。

 「ここまでありがとうございました、金月さん」

 「気にするな、栗崎さん」

 俺は背を向けようとしたが、それは出来なかった。

 「あ、あの、これからも私と話してくれますか?」

 「別にそれぐらいなら構わないが、俺で良いのか?」

 「は、はい。金月さんだからいいんです」

 「そうか。なら、話に来よう」

 「ありがとうございます、金月さん」

 それから、俺は暇さえあれば栗崎さんと他愛もない会話をしている。

 持ってきた小説を読まずに。

 あっという間に時が過ぎ、俺は退院することが決まった。

 ただの骨折だったので。

 その頃には桜が散り、春の陽気を感じられた。

 今は最終的な診断を受け、医師と面談している。

 「完治していますね」

 「ありがとうございます」

 俺は小さく頭を下げる。

 必要事項を聞き終えると医師が

 「あまりプライベートの話はしたくないのですが、金月さんは栗崎さんと交流がありますよね?」

 俺は事実なので、頷いて答える。

 「そうですか」

 医師は何かを考え込む。

 「栗崎さんのことで少しお話したい事があるのですが、これはプライベートな内容です。他言厳禁でお願いできますか?」

 俺が頷いて答えると医師は話してくれた。

 まず、栗崎さんは不治の病にかかっている。

 今の発達した現代医学だとしても治すことが出来ない。

 そこで寿命も聞いてしまった。

 後1年だと。

 これは覆すことが出来ないことということも。

 例え、どんな薬を服用したとしても。

 どんな手術をしたとしても。

 それに加えて、栗崎さんは家族にも見捨てられたようだ。

 元から体が弱く、あまり愛情を受けてこなかった。

 それなのに、不治の病になった直ぐに縁を切られたようだ。

 俺は内心で驚いてしまう。

 不幸だらけというのは自暴自棄にならなかったことに。

 普通なら絶望するのに栗崎さんは笑顔を浮かべていた。

 医者が俺の方を向いてくる。

 「人と話すことで病状に良い影響を与えることは証明出来ています。なので、これからも足を運び、栗崎さんと話してくれませんか?」

 医者は頼むように頭を下げたのだ。

 ここまでするか。

 1人の医者が。

 これは受けないとな。

 覚悟を見たのだから。

 それに、栗崎さんと話すのは心地がいいし、家からそこまで離れてない。

 「分かりました。幸いかは分からないですが、趣味は殆ど無いので結構時間を作れますよ」

 医者は驚いた表情を浮かべた後、深く頭を下げたのだ。

 「ありがとうございます」

 「お気になさらず。俺も栗崎さんと話したいと思っていますから」

 そこで俺は医者と別れたのだ。
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