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第五話 報告
しおりを挟む告白に成功した俺は直ぐに動き始めた。
まずは、鈴音の退院だ。
鈴音は入院の必要は無かったが、身寄りが無かったので病院にいたのだ。
これからは俺と同棲するから、もう必要はなくなった。
退院する際に俺は医者からあることを言われた。
それを厳守することを約束し、俺は新居に向かったのだ。
ここは新築のマンションで、3LDKの部屋。
その部屋で生活を始める前に俺はある場所に向かう。
手土産を持って。
目的な場所に到着したが、鈴音は隣で緊張した面持ちをしていた。
俺は鈴音の方を向く。
「そんなに緊張しなくてもいい。基本的に放任主義だからな」
「は、はい」
鈴音は深呼吸し、気持ちを落ち着かせた。
それでもまだ緊張していたが、大丈夫だろう。
そう思い、俺はチャイムを押す。
少しして、玄関の扉が開いたのだ。
開いた扉に俺に似た中年の者がいた。
「鍵を持っているのにチャイムを押した?」
その者は隣にいる鈴音に気がつく。
驚いた表情を浮かべたが、直ぐに納得した表情を浮かべたのだ。
「取り敢えず、上がってくれ」
その者、いや、父さんは家に入れてくれる。
リビングに俺達は座り、父さんはお茶を持ってきてくれる。
それらを俺達の前に置いてから、座ったのだ。
「斉史。私の前に挨拶するべき者がいるだろ?」
「それに関してなんだが」
俺は鈴音の方を見てしまう。
鈴音は意図を察してくれて、頷いて答えてくれる。
了承を得られたので、俺は父さんに話す。
鈴音の事情と結婚することを。
全てを聞き終えた父上は何かを考え込んでから、鈴音の方を向く。
そして、突然頭を下げたのだ。
「馬鹿息子がすまなかった。栗崎君」
いきなり頭を下げたことに俺達は驚いてしまう。
「あ、頭を上げて下さい。謝るようなことは何もないですから」
「残念ながら、あるのだ。馬鹿息子の代わりに頭を下げる理由が」
鈴音が困ったような表情を浮かべながら、俺の方を向いてくる。
自身でも理由が分からないので、頷いて答える。
鈴音は父さんの方を向く。
「理由は分かりませんが、私は気にしてないので頭を上げて下さい」
やっと、そこで父さんは顔を上げたのだ。
「ありがとう、栗崎君」
「あ、私のことは鈴音と呼んで下さい」
「分かった。これからは鈴音君と呼ばせてもらう」
父さんは優しい表情を浮かべたのだ。
俺は内心で驚いてしまう。
優しい表情なんて、久し振りに見たぞ。
「馬鹿息子で何か困っていることはあるかな?」
「わ、私の方がお世話になっているので、何もないです」
「それは良かった」
それからはリビングで何気ない会話をする。
1時間ぐらい経った時に鈴音がトイレで席を立つ。
すると、父さんが俺の方を向いてくる。
「斉史。本当に鈴音君と結婚するつもりか?」
俺は頷いて答える。
「お前は本当に馬鹿だな」
父親は呆れたような表情を浮かべた後、俺に指差す。
「ここで1つだけ断言してくれ。この先も鈴音君だけを妻として愛すると」
「ああ、断言する。俺の妻は鈴音だけだ」
父さんが頷くと鈴音が帰ってきた。
そこから1時間程話し、俺達は実家を後にしたのだ。
帰りの運転中、俺は考えてしまう。
父上が謝った理由を。
いくら考えても俺には分からなかった。
そんなこんなしていると新居に到着したのだ。
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