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第二十一話 堕落した愚か者達

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 あれから、1週間に1度、ラーカ侯爵に会うことになった。

 会う日は、1日中ラーカ侯爵家の屋敷にいる。

 朝食だけ家で食べ、寝るギリギリの時間まで、ラーカ侯爵家の屋敷にいる。

 ラーカ侯爵のフェリアの溺愛は、凄まじいものになっている。

 フェリアのために、敷地内に図書館を作るレベルだ。

 16年分の愛は、凄いな。

 ちなみに、フェリアは、貴族の身分は、戻してないが、親子の縁は戻した。

 なので、今のフェリアは、フェリア・ラーカになっている。

 そんな感じの日常を過ごしていた。

 今日は、ラーカ侯爵家の中には、私しかいない。

 フェリアは、ラーカ侯爵と一緒に、買い物に出掛けている。

 最近のフェリアは、本当に幸せそうだ。

 婚約者の私と、溺愛してくれるラーカ侯爵がいるからな。

 まぁ、私達の結婚式が、近いのも関係あると思うが。

 後、2ヶ月すれば、フェリアのことを妻に出来る。

 こんな幸せな日常が、続けばいいのに。

 そんなことを思いながら、紅茶を飲むと、爆音が聞こえた。

 な、何だ?

 爆音がしたほうを向いた。

 向いた方には、ラーカ侯爵家が燃えていたのだ。

 黒い炎で。

 早く、消さなくては。

 私は、梅雨を唱えた。

 雨が振り、黒い炎を消した。

 焼けた匂いがする。

 どうにか、最小限に防げたようだ。

 誰だ?

 黒い炎を使った者は。

 あの炎は、堕落した者しか使えないぞ。
 
 疑問に思っていると、空に3人の人影が、空に浮かんでいた。

 あれはもしかして。

 空から、声が聞こえた。

 「お前さえいなければ、俺様は、英雄になれたんだ。たかが、仲間を1人見捨てたぐらいだろ。それで、勇者の資格を剥奪なんて、馬鹿げている。だから、復讐をするんだよ」

 「そうよ。私は、聖女として、チヤホヤされたいの。それに、あんなちび女一人見捨てたぐらいどうでもいいでしょ。そんなことよりも私が、聖女であるほうが、重要よ」

 「あんな役立たずのせいで、私は、全てを失った。だから、雨男。お前を殺したあと、フェリアをじっくりと拷問してから、その辺の男達に凌辱させる」

 元勇者と、元聖女と、元女剣士か。

 どうやら、堕落したようだ。

 おい、元勇者。

 フェリアを見捨てたぐらいだと?

 あんな可愛いフェリアを見捨てられるかよ。

 それに、元聖女。

 フェリアが、チビだと?

 あの身長が、可愛らしいだろ。

 そして、元女剣士。

 お前は、死にたいのか?

 フェリアのトラウマを刺激して、更には、凌辱だと?

 私の中は、怒りで満ち溢れていた。

 さて、死んでもらおうか。

 いや、直ぐ殺すのは、勿体無い。

 なら、元女剣士が、言ったことを全員にするか。

 堕落した者なら、誰も文句を言わないだろう。

 時雨を唱えた。

 すると、先程よりも優しい雨が降ってきた。

 堕落した者達は、その優しい雨に降られると、黒い何かが、抜けっていった。

 力を失った堕落した者達は、地面に叩きつけられたが、時雨のお陰で、その傷は治っていた。

 だが、堕落した者達は、何かを騒いでいた。

 闇から得た力などと。

 その声すら、不快だった。

 氷雨を唱え、堕落した者達を凍らせた。

 後処理は、ラーカ侯爵に任せよう。

 伝えるときに、処理方法も伝えておくか。

 雨はもう必要無いな。

 私は、雨を止めた。

 それなのに、何故か、空に黒い何かが浮かんでいた。

 

 

 
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