【夢小説】夢まち 「痛みは消せない。忘れるしかないんだよ」記憶の奥の物語によって

ロボモフ

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野鳥バス

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「次は井上小町。地下鉄その他の路線へお乗り換えの方は……」前の駅を出てまだ20秒しか経っていなかった。井上小町は初めて聞いた。降りるのはまだだ。多分次でよいだろう。バスは井上小町を通過して進んでいく。徐々にビルや信号の数が減っていく。町から離れていくようだった。「あの……。次は……」不安になって隣に座っていた乗客に訊いた。次は2時間は先になるだろうと老人は答えた。ぼーっとしている内に長距離バスに変わってしまったのだ。「すみませーん! 降ります!」ボタンは反応せず、僕は声を上げた。バスは止まらない。どんどん細い道に入っていく。急には止まれない道なのだ。僕は席を立って運転手のところまで歩いた。「210円ですか」いつでも降りられるように先にお金だけ払っておくことにした。「はい」小銭を出す途中でバスが揺れて10円玉を落としてしまった。運転手がサイドブレーキに手をかけながら身をよじり拾ってくれた。見通しのよい直線だが、その時バスは少し揺れた。だけど優しい運転手みたいだ。「ありがとう」礼を言って席に戻った。バスは急に止まることはできない。

 見渡す限り山と緑に囲われていた。深呼吸すると驚くほど空気がうまかった。ほとんど車も通らない。聞こえてくるのは野鳥の歌声ばかりだった。実にのどかだ。

「ここは何県なの?」
「僕らの生まれ育った町だよ」
 幼馴染みのまーくんだ。まーくんも一緒に乗っていたのか。生まれたとこと育った町とは本当は違うんだ。そんなことをまーくんは知らない。それとも特に気にかけてはいないのかな。
「そっか」
 言われるまで忘れていた。でもこんなに自然が豊かだったかな……。僕も町もすっかり変わってしまったのかもしれない。バスは適当な空き地を見つけ休憩タイムに入っていた。空っぽのバスを置いて、みんな自然との触れ合いに出かけていた。

「よかったら一緒に」
 話す内に打ち解けた運転手が釣りに行こうと誘った。それは次の3連休の話だった。
「せっかくですが……」
 あまりに急でスケジュールが調整できなかった。まーくんがアイスクリームを買ってきてくれた。バニラアイスだ。
「店あったの?」
 まーくんは笑いながらただ指をさした。それは川の方だった。
 僕はここから一人で歩いて帰らなければならない。明るい内に帰るなら、出発を急いだ方がよさそうだ。だけど、ゆっくりアイスを食べた。底が見えるとなぜか切ない気持ちになった。徐々に乗客が集まってきた。みかんや柿を持って、みんなゆっくりしている。野鳥の声を聞きながら笑っていた。いつになっても出発する気配がない。
 早く僕を置いて行けばいいのに。
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