【R18】人間界の王子様がハーフヴァンパイアに囲い込まれるまでの話

あかさたな!

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魔がさす

あさ

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翌朝、目を覚ますとそこは昨日見た天井だった。


ユシエルはまだ寝ていて、2人とも服を纏っていなかった。
手足は自由で枷はされていなかった。


これは逃げ出す絶好のチャンスかもしれない。

少しふらつきながらも部屋を物色した。
ドアは当然開かなくて、
窓から見下ろした高さは相当なものだった。

お風呂場は高いところに小さな窓しかないし、もう脱出は諦めそうになった。

それでも色々探っていくと、1箇所だけ突破口を見つけた。
トイレの窓だ。

窓の大きさはどうにか通り抜けれそうなもので、しかし窓の形が複雑で金具を割るしか通る方法はなさそうだ。

幸いにも窓のの横には足場のようなものが見えている。

流石に窓を割ったら、ユシエルも起きてしまう。

逃げ出したことがバレれば彼は許してくれないだろう。


でもこのまま囚われの身でいることに納得いかなかった。


小さい頃から誘拐され慣れていて、逃げ出したことは何回もある。
きっと今回も捕まらずに逃げ切れるだろう。
いやそうしないと、俺は生きられないだろう。


ベッドへ戻り、ユシエルが寝ていることを確認する。大丈夫そうだ。

1番硬そうな蝋燭台と体を隠すためのシーツを手にトイレへ行き、鍵をしっかりかける。

シーツをどうにか洋服がわりにして、
意を決して窓の金具を壊す。

カキーンと金属同士がぶつかる音がして、数回しばらく叩いたら、うまく壊れてくれた。

これで窓を全開にできる!


美都みと様、なにしているんですか」

そう地を這うような声が扉のすぐ向こうで聞こえたけれど、俺はそれを無視して窓から脱出した。

捕まったら、もう2度とチャンスは来ないだろう。

そう思い、必死に非常階段を降りて、庭というよりは森に近い薄暗いところへ逃げて、この庭園の出口を必死に探した。



いつまで走ってもなかなかこの庭園の端っこにたどり着けない。

そんななか、俺は出会ってしまった。

狼というよりもライオンに近い大きさの魔物に。

そいつは放し飼いにされているようで首輪はなかった。

ここは魔王の別荘。
こんなペットがいても普通なのか!?

そいつは俺を認識するとジリジリと唸りながら距離を詰めてくる。

目を逸らしたら負ける。
それほどの気迫の中で必死に逃げる方法を考えた。

木に登ればどうにかなるのか。
それとも全力で逃げれば撒けるものなのか。
その生物に対する知識はあまりに乏しくて最適解が弾き出せない。

そうしている間にも距離はどんどん縮まる。


ヤバい。喰われる。
いつもなら考えつくのに、恐怖で体が固まって逃げることすらままならなくなっていた。


もう諦めて目を瞑った瞬間、
ふっと肩に誰かの手を置かれた。

恐る恐る目を開けると、
人睨みであの怪物を退散させた、
それ以上に怖い目をしたユシエルがそこに立っていた。


「…ユシエル…」

美都みと様、覚悟はできてますよね」

そう死刑宣告されてしまった。
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