半透明人間

父と僕

202.臙脂_ENJI

外部からの移住者も旅行者も来ていないのに、
事件は立て続けに起こった。


夜の見回り強化が行われた。
だが、その見回りの集団が襲われる日もあった。


だんだん村民同士で疑心暗鬼になっていった。
連日テレビやラジオからは、似た事件の報道がされる。

見えない犯人。見えない武器。
狂気的、でもなぶるだけでトドメを刺さない猟奇さ。
複数箇所で同時に被害が出てることから、組織的な犯行が疑われている。
でもいまだに、犯人の手がかりは一切見つかっていないという。



次第に証言が集まって、
透明人間の仕業ではないかという人も出てきた。
この世界には、完全に見えない透明人間は存在しない。半透明人間が無感情になればそれに近い色も出せるが、それはもうほぼ死人と同じ思考状態だ。

この村での事件もテレビの取材班や警察が駆けつけるようになった。
1000人しかいない村。
狙われるのはいつも不透明人間。


取材班や警察がいるときはピタッと犯行は途絶える。
でもその波が過ぎて、
また村民だけの生活に戻ると事件の被害者の話がちらほら出始めた。


そこから、村人同士で互いの行動を監視して報告し合う方針が決まった。
家族を庇って嘘をついたら、その家族全員同罪とするとも。