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知識人と僕
502. 甕覗_KAMENOZOKI
しおりを挟む都会の夜は明るすぎる。
だからこそ人々は油断する。
話し合いの結果、僕は村に帰る方が安全という結論になった。
父は家にいる方がまだ生き延びる可能性が高そうだ。
弟は半透明の僕を心配して、頑なに着いてくると主張して聞く耳を持たなかった。
家にいるのも、父が見つかれば浄化場は庇ったからと道連れにされてしまう危険性もある。
父のこともあり、
母は家に残り、弟と2人村を目指すことにした。
弟の学校の夏休みまでは1週間ほどあったが、
それでは新月に間に合わなくなってしまうので休む連絡を入れた。
人通りがない山道を進んでいかなければならないので、
登山や野宿の荷物を詰めた鞄を弟が背負い、
僕は無色になるべく染め替えて彼の後をついていった。
玄関を開けた時、一瞬緊張で色が染め変わりそうだったが、
一つ深呼吸してまた無色に戻した。
………。
そしてなるべく無心を心掛けて人目がつかない山の入り口まで無言で進み続けた。
………。
「にいちゃん、もう大丈夫そうだよ」
そう声をかけられ、周りを確認してやっと一息ついた。
そこは一つ目の山の中腹くらいにある平地で、
生い茂った植物のおかげか下からはあまり見えない。
弟が事前に下見してくれたおかげで夜道でも無事つけた。
ちょうど日が登り始めたようで、
少し空が天色に染まっていて綺麗だった。
久しぶりの外だ。
深呼吸をして、無色に集中していた意識を解放する。
「にいちゃん、疲れてるところ悪いけど、明るいうちに進まないと後がきつくなるよ」
「そうだね。ここまでありがとう。行こう」
弟が背負っていた荷物を交代で持つ。
まだ傾斜が緩やかな山道を登り始めた。
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