半透明人間

僕と世界

605.滅紫_MESSHI

そして、ある国のトップが半透明人間の隠し子がいることを公表すると共に、
自らの国で半透明人間の自由を保障する宣言をした。

画面越しに見るその子は僕よりも一回りくらい年上のように見えた。


その子は世界中の報道カメラに向かって話した。


半透明人間も不透明人間も同じ種族同士ではないかと。

数十年前の戦争の傷跡はまだ深い。

終戦した今も疑い合い、心の平和はいまだに訪れていないのではないかと。


半透明人間を武器として使ったことは、
間違っていたのだと。

そのせいで苦しんだ人はたくさんいるし、
今も苦しんでる人がいる。



一方でチャンネルを変えると、
軍師と包帯男の処遇が国の会議で話し合われている映像が流れていた。

包帯男の正体が暴かれた日の映像が脳に焼き付いていた。

あんなに火傷をしている痛みを本当に想像できる人ってどれくらいいるんだろう。

恐怖は人の判断を鈍らせる。


失われたもの、時間は取り戻せないけれど、
未来も失い続けることはまだ取り戻せるところに人類はいるんじゃないか。