半透明人間

僕と世界

609.白磁_HAKUJI

久々に食べる母の朝食はやはり安心する味だ。


いつもの食卓に幼馴染とじいちゃんが加わっているのが、小さい頃のようで少し懐かしい。


「最後まで話を聞いてくれ」

そんな前置きからじいちゃんの話は始まった。


父の病状は一年も持たない可能性が高いそうだ。
世界が変わるのは遅すぎたかもしれない。


昨日、あの包帯男が訪ねてきていたらしい。
やはり見間違いではなかったようだ。
彼は処刑はされないらしい。見せしめで彼の命を奪ってしまっては、歴史が繰り返してしまうだけだから。
だから、彼は生き続ける。いや、生かされ続けて、残りの命を燃やし続けないといけない。


数年先かもしれないけど、
あのテロの計画の先には、
いつか半透明人間の僕たちも弟のように学校に通って、普通の世界を堂々と生きれることも含まれていると少し嬉しそうにも話してくれた。


それでもしばらくは半透明人間を拒絶する人もいるかもしれない。
この変化についていけない人も出るかもしれない。
だからまだしばらくは隠れて安全に過ごしてほしいとも言われた。

そして幼馴染を託され、じいちゃんは翌日には村に帰って行った。

じいちゃんはあの村で唯一の医者だ。
父に別れを告げ、僕たちにも強く生きろと励まし、最後の別れを告げられた。