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◯4月_気の迷い
しおりを挟む今日は人生で1番ついてない日かもしれない。
朝、柊 湊は共通テストの結果が張り出された掲示板を見ながら自分が生徒会長になれなかったことを知った。
昼、生徒会の顔合わせで、生徒会長が一期生抜擢だったことを知った。
漆黒でサラサラな黒髪は清潔感があって、吊りがちな黒目と少し気怠げな雰囲気のせいで猫のようにすらに見える。でも身長は兄貴くらいあるから、後輩のくせになんか見下げられる感じの目線がムカつく。
山神海斗。確かに去年まで見たこない名前だった。
聞いたこともない苗字だったので、調べたら、どうやら特待生入学の庶民らしい。
放課後、生徒会室がある最上階の、その反対側の人気が少ないトイレに篭ってしまって帰れないでいる。今日は本当についてない。
「はあ…。」
ため息に少し熱が混じったものが漏れる。
これは間違いなくヒートだ。
薬ちゃんと飲んだのに。
便座に蓋をして、その上で体育座りにしてる膝をさらに引き寄せる。
ヒートのせいで過敏な体がそんな動作一つが身震いするほど、快感に変換される。
下着はもう見なくてもわかるくらい、Ω体質のせいで、後ろの孔から漏れ出た蜜で濡れてしまっている。
緊急の抑制剤は教室のロッカーに置いてきてしまっていた。
あれが最後の一つなのに。
Ωの抑制剤はなかなか高価な代物で、財閥の端くれの息子のお小遣いで毎月買い続けるのはなかなかギリギリだ。
正直先月の受診で、貯金が底をついた。
親や兄貴に頼めば、いずれは俺がΩだってバレてしまう。
だからさっき、後輩の山神からカツアゲしてきたのに。
「はぁ…やまがみ…」
熱で朦朧としてきた頭はもう、だんだん思考が回らなくなってきた。
自分が何を口走ってしまっているかさえ、認識できなくなっていた。
さっきの彼の寮部屋の匂いを思い出してしまう。
花のような甘く洗練された香り。
今の惨状も、アイツのあんな心地よいフェロモンのせいかもしれないという可能性に少し舌打ちしたくなる。
今日このまま病院に行こうと思ってたのに。
コンコンコン
突然ドアを叩かれ、一瞬意識が覚醒する。
足音にも気づかないほど、ぼーっとしていたらしい。
「入ってます…」
どうにか振り絞って、声を出す。
帰ってくれ。そう願うが、立ち去る気配がない。
「あの、柊先輩大丈夫ですか」
自分だと隠せていないことに対する驚きもあったが、声の主でさらに心臓の鼓動が早まった。
アイツだ。
「山神くんか。俺は大丈夫…」
もしかして、さっきのカツアゲの仕返しでもしにきたのか。
確かにさっきは一人でカツアゲしたわけじゃないから、一対一なら勝てると踏んできたのか。
「大丈夫そうには聴こえませんが…何かできることありますか」
その悪魔の囁きに俺は縋ってしまった。
「教室の俺のロッカーにある薬の袋を持ってきてくれないか」
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