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第二章【書籍設定改稿版】
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しおりを挟む「「「あにき……?」」」
おれの呟きに三人はキョトンとした反応を示す。
そしてカールとセシルが懐疑的な表情を兄貴……もとい、イグニスに向けた。
「……似てませんね」
「義兄さん……?」
「あ、当たり前だろっ、俺はひとりっ子だ……!あとカール魔導士長殿のは違う意味に聞こえるんですが気のせいですか!?」
イグニスは顔色を悪くしながら懸命に否定した。
「では、マシロ君とはどこで知り合いに?」
「どこでって……今日祭りで人混みに呑まれてたのを助けたといいますか……」
「ほお、あなたでしたか。マシロ君を保護する名目で路地へ連れ込んだ不埒な男というのは」
「ごっ、誤解です……ッ、俺はただ坊主がふらついていたので、とりあえず路地へ避難させただけで……ッ」
「えー、イグニスってば昼間姿を見かけないと思ったら、そんな楽しそうなことしてたんですか?あなたも隅に置けないですね」
「てめぇは、ややこしくなるからしゃべんな……ッ!うッ」
茶化すセシルをイグニスが焦った様子で静止した瞬間、イグニスの顔の前に拳大の水の玉が出現した。それはたまに、ぽこぽこと突起を出して浮いている。
イグニスは顔を引きつらせながら水の玉を凝視していた。
そこに表情や口調こそ穏やかだが、冷たい空気を纏ったカールが問いかける。
「誤解だと言いましたが、あなたマシロ君が闇属性であると知っていましたね?それは瞳の色を見たからではありませんか」
「えー……はい、あの、眼鏡がズレていて……ちらっと……うぐッ」
水の突起がイグニスの眼前に突き出して止まる。
「おかしいですねー。マシロ君にもサイズが合っていないと言われて調整していたんですが、特に問題はなかったんですよ。まあ……至近距離から覗き込んだら話は別ですけど」
「坊主の調子が悪そうだったので支えただけです……ッ。神に誓ってやましいことは何もしていません……ッ!」
「でも瞳の色を見たのに、あえて言わなかったのは何故ですか。普通は驚くでしょう?セシルでさえ疑問に感じていましたよ」
「そ、それは……」
言葉を詰まらせたイグニスにカールがさらに尋問を重ねようとしていたが、それを遮るようにおれはカールの胸元服の上から噛んだ。
力が入らないため傷をつけるほどではないだろうが、カールの気を引くには十分だった。
「マシロ君……?」
目を見張り、先程までの毒気が抜けた表情のカールがおれを見下ろす。
おれはそれになにも答えず、いや、答えられなくて、代わりに内腿をもじっと擦り合わせ、頭をカールの胸に押しつけた。
さんざんほっとかれていたせいで、おれの身体はもう限界だった。
上目でカールを見つめながら熱い息を吐き出すと、床を水がぱしゃんと打つ音がした。
「カール、さま……」
熱のせいで、思ったよりも掠れた声が出た。
カールは頬を赤くし、より強く俺を抱き寄せると、顔を上げて二人に早口で告げる。
「急用ができました。話はここまでにしておきましょう。では」
「お待ちなさいカール。僕も行きます」
「今すぐ手を放せセシル。殺すぞ」
殺気を放ち、本気で攻撃魔法を発動させそうなカールに気がついたイグニスが、カールの肩を掴んでいるセシルの手を剥がし、そのまま背後から羽交い締めにした。
「イグニス!放しなさい……ッ」
「どう見てもお前は邪魔だろうが……ッ。カール魔導士長!早く坊主を連れてってくださいッ」
「命拾いしたなセシル」
「ああ……ッ、待ちなさい!絶対に面白いのにぃ……ッ!」
イグニスの方が力が強いのか、セシルはもがくだけで拘束から抜け出せず、じたばたともがいている。
その間にカールはおれを抱え、足早に廊下を歩いて行く。
本当は走りたいのだろうが、おれに振動がこないように気を使っているのだろう。
小声で「少し揺れるね」と謝られた。
遠くの方ではまだ二人が言い争っている声が聞こえるが、熱に浮かされた頭では何を言っているかまではわからない。
カールもおれのフェロモンに当てられて発情しているようで、触れている箇所が熱く、耳をつけている胸からがドクドクと早い鼓動が聞こえる。
吐く息も荒く、おれの身体も益々熱くなった。
なんだかんだと久しぶりの発情におれははしたなくも、早く魔力を注いで欲しいと、そればかりが頭を埋め尽くす。
たった一階下へ降りるだけの、カールの部屋への道のりが、とても長く感じた。
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書籍版からの読者です。
WEB版2章もとても楽しく読ませていただいていましたが、WEB版1章を確認する術がなかったのがもどかしくもありました。ですので書籍版の2章も本当にありがたく拝読しております…!ありがとうございます!
変態さんの登場で更に盛り上がってワクワクしてきました(?)
これからも更新楽しみにさせていただきます、日々の糧です…!
ドリランさん、ありがとうございます✨
ようこそいらっしゃいました🤗💖
そうなんですよ!私もweb版一章読めなかった人は続きわかんないよな……ってところが引っかかってしまい、書籍版へ改稿することにしました😅
楽しんでいただけてとっても嬉しいです💖皆さんからの感想がまさに私の糧になってます✨本当にありがとうございます🙏✨
やっと説明パートというか、下準備が終わったので、これからどんどんバタバタエロエロしてきます(笑)
ドリランさんの糧であり続けられるよう、嬉々としてマシロをイケメン軍団の中へ放り込みますので、これからもよろしくお願いします😆✨
書籍を読んでからこっちきました〜!
2章の書籍版もうワクワク!
総受けの中で神的に面白いと思う!
応援してます〜
ネコさん、ありがとうございます✨
書籍からようこそおいでくださいました❗😆✨
そこまで気に入っていただけるなんて光栄です💖
もっとマシロの総受けに磨きがかかっていくので、引き続き楽しんでいただけると嬉しいです🤗💕
頑張ります💪✨
更新楽しみにお待ちしておりました!!
書籍を読んでこちらのサイトに辿りついたので
書籍版の続きも楽しみです!!
マシロくんの幸せを願ってます!
待っててくださって本当にありがとうございます😭✨しかも書籍からきてくださったとは……ッ!感激です😖💖
どんなことがあろうと、必ずマシロには『愛され総受け主人公』の責務をまっとうさせますので、引き続き彼らのドタバタエロコメディを楽しんでください🤗💖
時間はバラバラですが、毎日更新頑張ります😆✨