モテたかったが、こうじゃない 魔力ゼロになったおれは、あらゆるスパダリを魅了する愛され体質になってしまった

三ツ葉なん

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web版設定第二章

11

「ごめんマシロちゃん、レイの様子見てくるからここにいてもらっていい?」

どこか決心した顔のアレク王子に嫌な予感がする。
もしかしてレイヴァン様に説教に行くのかな?おれの出した結論に納得してないみたいだし。

もしそうなら嫌だな。
だっておれのせいで兄弟喧嘩になっちゃったら気まずいじゃん。
せっかく兄弟仲も良くなってきてるみたいなのに…。

不安が顔に出ていたのか優しく微笑まれる。

「大丈夫、レイも落ち込んでたから話を聞いてくるだけだよ。あれでも一応双子の弟だからね」

「そっか、そうだよね。あ、レイヴァン様にもう怒ってないよって言ってもらえる?」

「…わかった。マシロちゃんは怒ってない、って伝えておくね」

「ありがとう」

「1人にさせてごめんね。お菓子全部食べていいから。…それとも自分の部屋に戻る?」

「ううん、待ってる。いってらっしゃい」

「そっか。じゃあ、いってきます」

優しく頭を撫でられてからアレク王子が部屋を出ていった。

ひとりになった部屋はやっぱり広くて、急にしんと寂しくなる。

かといって自分の部屋は、今は戻りたくなかった。だってあそこはレイヴァン様とえっちした場所でもあるから。

いくら吹っ切れたって言っても全く何も気にならないって言ったら嘘だ。気分は重くなる。

次のえっちはカール様とだ。約束だとまだ3日は猶予がある。それまでに、もっと平気にならないと。

みんなの“好き”を履き違えないように。

これはお互いのためなんだ。わきまえないと。

テーブルの上にある色とりどりのクッキーを一つ摘んで口の中に放り込む。

さくさく音を立てて砕かれるクッキーは前に食べた時より味気なかった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




頭を撫でられる感触に意識が戻ってくる。いつの間にか寝ちゃったみたい。

アレク王子帰ってきたんだ。起きないと…でも、まだ眠い…。

「…うぅ…ん、おかえりぃ…ごめ、まだ眠くて…」

「・・・・・」

何も言わないアレク王子は頭に置いていていた手を滑らせて頬に触れてきた。指先が口の端を掠めた時、ほんのり甘い匂いがした。

これは…チョコレート?

匂いを確かめようと手の方に顔を傾けた。手に頬ずりした形になる。

その瞬間手が離れ、勢いよく扉が開いた音がした。

ばんっ!!

「マシロちゃん…!大丈夫…っ!?」

「えっ、アレク王子…?」

扉から聞こえた声にびっくりして覚醒する。

部屋に入ってきたアレク王子が焦った様子でおれに近づいてくる。…そばには誰も居ない。

「あれ?てっきりレイがいると思ったんだけど…」

「レイヴァン様?どうかしたの?」

キョロキョロと部屋の中を見渡しながらアレク王子が渋い顔になる。

「あいつ…転送魔法でいなくなったんだよ。話の途中だったのに。死にそうな顔してたからてっきりマシロちゃんに会いに行ったのかと思ったんだけど…」

「死にそうな…て。怒ってないって伝えてって言ったよね?」

「伝えたよ。でもその前からすごく落ち込んでで、マシロちゃんに嫌われたって」

嫌い…まではないけど…。まあ、あんな出ていき方したら誰でもそう思うか。あの時はおれも考えがぐちゃぐちゃで余裕なかったし、悪いことしたな。

「レイヴァン様どっか行っちゃたの?」

「うん…。レイの話も聞いて、と言っても、ショックが大きかったみたいであんまり話にならなかったけど…。マシロちゃんに“あんた”って言われたのが相当キツかったみたい」

あぁ…言ったな。あの時は名前呼びたくなかったんだよね…。

今思えば王子様相手に相当失礼だったかも。いや、今更か?

「言われたことなさそうだもんね」

「まあ…でも、マシロちゃんに言われたからあそこまでショック受けたんだと思うよ」

「格下だもんね、おれ」

「いや、そうじゃなくて…。まあそれで、マシロちゃんはもう怒ってないって言ってたから明日の朝謝りに来るように伝えた途端レイが焦り出して、魔法でどこかに行っちゃったんだよ。だから先走ってマシロちゃんに会いに行ったのかと急いで戻ってきたんだ。いないみたいだけど…どこ行ったんだあいつ?」

さっき頭や頬を撫でてたのって…でも目を開けたら居なかったし、仮に来てたとしてもおれに会いに来たんだったらいなくなってる理由が分からない。たぶん寝ぼけて誰かいると勘違いしたのかも。

「探す?」

「うーん…、どうかな?ここにいないって事は俺から逃げたのかもしれないし、だとしたら今はひとりになりたいのかも。明日の朝どうせ来るし、そっとしておこう。俺も気が立って言い過ぎたかもしれない。話聞くだけって言ったのに…」

「じゃあ、明日一緒にレイヴァン様に謝ろう」

「そうだね。…レイも反省してたみたいだし。明日三人でちゃんと話し合おう」

話し合い…か。おれレイヴァン様の話、最後まで聞けるかな…。

いくら割り切れたって言ってもついさっきだ。また見当違いに怒っちゃうかもしれない。明日か…正直気が重い…。

「マシロちゃん眠い?色々考えて疲れたね」

「うん、ごめん…。あの、今日ここで寝てもいい?」

「えっ!いいけど…。俺がいて嫌じゃない?」

「?嫌じゃないよ」

「嫌じゃないんだ…」

もじもじし出すアレク王子にピンと来る。あぁ、おれ今レイヴァン様の色の瞳だから気まずいのかな?
そりゃそうか、いくら優しくしてくれてるにしても、弟に抱かれたばかりの男と一緒に寝るのは嫌かもしれない。

ちょっと甘えすぎたか。

「ごめん、やっぱり自分の部屋で寝…」

「いい!いい!ここで寝なよ!俺はソファーで寝るから…っ!」

おれが自分の部屋に戻りたくないのを察してくれたのか全力で呼び戻される。

しかも王子様なのにおれにベッドを譲ってくれるなんて、やっぱりアレク王子って良い人。

「そんなの駄目だよ、おれがソファーで…」

「それこそ駄目だよ!風邪ひいちゃったらどうするの?」

それを言ったらアレク王子もだろ。

「…じゃあ、一緒にベッドで寝てもいい?」

「いい!いい!…えっ!?一緒に…っ!?その…マシロちゃんはいいの?俺と一緒に寝るの…」

「?いいよ」

「いいんだ…」

「だって、アレク王子は安全だし」

「…?安全…?」

「うん。アレク王子は別におれの事好きじゃないでしょ?告白の時も嫌そうだったし」

「え”っ」

「えっちしたのも覚えてないし、そもそも酔った勢いでだったわけだし。ノーカンでしょ」

「…ノーカン…」

「だから全然気にしないよ!」

「あー…はは…、そっかー…。じゃあ一緒に寝ようか…」

アレク王子が遠い目をしてるけどどうしたんだろう。

お互い納得したところで先にお風呂に入られてもらった。

部屋に備え付けになっているお風呂はさすが広くてのびのび入れた。

脱衣室に新しい服が用意されていて、これも大きいシャツだけ。アレク王子のだ。ありがたく借りよう。

着替えて部屋に戻ると交代でアレク王子がお風呂に向かう。

ほかほかになった身体が余計に眠気を誘って、我慢できず先にベッドに潜り込むとそのまま眠ってしまっていた。

ふかふか最高…。

お風呂から上がったアレク王子が、ぐーすか気持ちよさそうに寝るおれを見て落ち込んでいたのを知る由もなかった。













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