病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川

文字の大きさ
13 / 22
本編

11 イザーク視点

しおりを挟む
「アイリスおはよう。部屋に入っても良いか?」
「本日も来てくださったのですか?申し訳ありません。まだ体調が……。イザークさまはお忙しいのですから、私のことはお気になさらないでください」

 あの茶会の日から、アイリスは部屋から出てこず何かに恐れているように見受けられる。
 私を避けているというよりは、独りの世界に入って苦しんでいるような────。

 ノアの妻は多少のいざこざはあれど、今のところ悪い噂はほとんど聞かない上に、リューヌからはアイリスがとても楽しみにしている様子を伝えられていた。
 一体何が彼女を苦しめているのか?
 人間は体調を崩せば精神的にも不安定になってしまうものだ。
 それは多少仕方のないことなのだが、今回は違うように思えて胸騒ぎがする。


「……聞きに行った方が良さそうだな」
 









「急な訪問で申し訳ない」
滅相めっそうもありません。ここまでお急ぎとは何かあったのですか?」
「ちょっと聞きたいことがあってな。妻はいるか?」
「ええっと……それがちょっと、なんだか塞ぎ込んでしまっていて、挨拶ができず申し訳ございません」
 普段なら妻であるオリヴィアも挨拶を交わすが、塞ぎ込んでいるという言葉とノアの様子から、やはり茶会で何かがあったのだと確信した。


「少しだけ、オリヴィア嬢と話させてもらえないか」



 ノアは迷いを見せつつも、オリヴィアの部屋へと案内してくれた。

「オリヴィア、イザーク団長がオリヴィアと話がしたいそうだ。少しだけ話せる?」
 扉越しに声をかけると、少しの間が空いてから、ゆっくりとオリヴィアの姿が見えた。
「イザークさま、お出迎えできず申し訳ありません。宜しければお隣の部屋でお話いたしましょう」
「急にすまない」
「いえ。お気になさらないでください」
 元々控えめな人だが、今日は一段と静かだった。




 
 紅茶の香りが広がる。

 
「本日は、アイリスさまのことでしょうか」
 オリヴィアが意を決したように、アイリスの名を出す。
「そうだ。茶会の後からどうも体調が優れなくてな」
 私の言葉を聞くと目尻をわずかに下げ、息を一つ吐くと事情を話し出した。
「はぁ、実は……」


 語られる出来事に体中の血が熱くなっていく。
 彼女が一人どんな思いで今日まで過ごしてきたかを考えると、胸が痛くなった。
 私はアイリスのことをそんな風に思ったことなど、一時たりともない。
 確かに気は遣うが、苦には感じない。

 いつも真っ直ぐで頑張り屋で、あんなに心が綺麗な人と今まで出会ったことなどなかった。
 だから、俺はアイリスを守らなくてはならないのだ。


「あの、私、申し訳ございません」
 自分では分からないが相当険しい顔をしていたのか、酷く怯えている。
「オリヴィア嬢が謝ることなどない。あの場でアイリスの味方をしてくれたのだろう?」
「ですが、友人になってくださったのに、私が突き放す態度をとってしまって傷つけてしまいました……」
 突き放したという事実だけを見るのならオリヴィアにも怒りが湧くが、本当に辛そうにしているのを見ると事情があるのではと思った。

「理由があるのなら教えてくれ」
「……夫のノアと、令嬢のノアさまは昔親同士に交流がありました。ただ、ノアは少し周りより成長が遅くて身体も弱かった。同じ名だというのも気に入らなかったのでしょう。……色々とあって、親同士も今は友人関係ではありません。騎士としてここまで来るのも、相当苦労しましたし、結婚したことも気に入らないようです。だから、アイリスさまと一緒にいて、これ以上目をつけられてしまったら、夫に影響が出ると思って、でも私、本当に酷い態度をとってしまいました」 
 そう語る表情を怒りと悲しみと後悔が混ざり合っている。
 この様子なら、アイリスの友人としていても大丈夫だろう

「そうか、私がきちんと対処する。オリヴィア嬢さえ良ければアイリスと今後も仲良くしてやってくれ」
「私でよろしいのですか?」
「ああ、アイリスもそう願っていると思う。ただ、私が対処するとなるとノアにも伝えておいた方が良い」
「本当にありがとうございます。夫には私から全てを伝えます」     






 深々と頭を下げるオリヴィア嬢とノアの見送りを背に、俺は既にこれからの策を構想していた。
 今まで散々アイリスを侮辱し、苦しめてきたのだ。

 それにアイリスは今や次期夫人となったのだから、アンスリウム家への侮辱とも言える。
 リューヌからの報告でもあの家門らは問題が多いことだし、ここはもう中途半端ではなく徹底的に追い詰めよう。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。 だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。 異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。 失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。 けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。 愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。 他サイト様でも公開しております。 イラスト  灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様

虜囚の王女は言葉が通じぬ元敵国の騎士団長に嫁ぐ

あねもね
恋愛
グランテーレ国の第一王女、クリスタルは公に姿を見せないことで様々な噂が飛び交っていた。 その王女が和平のため、元敵国の騎士団長レイヴァンの元へ嫁ぐことになる。 敗戦国の宿命か、葬列かと見紛うくらいの重々しさの中、民に見守られながら到着した先は、言葉が通じない国だった。 言葉と文化、思いの違いで互いに戸惑いながらも交流を深めていく。

妾に恋をした

はなまる
恋愛
 ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。  そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。  早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。  実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。  だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。  ミーシャは無事ミッションを成せるのか?  それとも玉砕されて追い出されるのか?  ネイトの恋心はどうなってしまうのか?  カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?  

ロザリーの新婚生活

緑谷めい
恋愛
 主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。   アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。  このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。

愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】 幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。 そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。 クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』 という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。 それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。 そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。 まず、夫が会いに来ない。 次に、使用人が仕事をしてくれない。 なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。 でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……? そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。 すると、まさかの大激怒!? あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。 ────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。 と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……? 善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。 ────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください! ◆小説家になろう様でも、公開中◆

「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です

涙乃(るの)
恋愛
男爵家の双子の姉妹のフィオーリとクリスティナは、髪色以外はよく似ている。 姉のフィオーリ宛にとある伯爵家から結婚の申し込みが。 結婚式の1ヶ月前に伯爵家へと住まいを移すように提案されると、フィオーリはクリスティナへ式までの代役を依頼する。 「クリスティナ、大丈夫。絶対にバレないから! 結婚式に入れ替われば問題ないから。お願い」 いえいえいえ、問題しかないと思いますよ。 ゆるい設定世界観です

処理中です...