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side フェリコット
side フェリコット4
その年、フェリコットは16に。トラヴィスは18になっていた。
学院に入学して一年の間は、2人の関係は今までと変わらない。
けれども一年経って、下の学年に平民からコーネリウス子爵家の養女になったというリエラヴィア・コーネリウスという少女が入学してきたことで、フェリコットの全てが変わってしまった。
ふわりとした柔らかな青い髪に、真白に金が混じった美しい瞳。逸話に名高い、贄の聖女とよく似た容姿をもつ、元平民らしい天真爛漫な性格をしたリエラヴィア。
トラヴィスとリエラヴィアがどうやって出会って、どういう経緯でそういう関係になったのかは分からない。
けれど、フェリコットが気がつく頃には、トラヴィスとリエラヴィアはよく2人で過ごすようになっていた。
リエラヴィアはフェリコットには許してくれない、トラヴィスの名を、ラヴィという愛称で呼んだ。
リエラヴィアはフェリコットには許してくれない、トラヴィスと一緒の昼食を毎日とっていた。
リエラヴィアはフェリコットには許してくれない、トラヴィスとのダンスを練習と称して踊っていた。
それが、フェリコットにはショックだった。
幼い時のように癇癪を起して、物に当たり散らして、なにもかもぶち壊してやりたくなった。
リエラヴィアより私の方が努力してるのに
リエラヴィアじゃなくて私がトラヴィス様の婚約者なのに
リエラヴィアより私の方がトラヴィス様の事が好きなのに
醜く溢れたのは嫉妬だ。
苦しくて、苦しくて、リエラヴィアをどうにかしてやりたいと思ったが、それでも彼女を引き留めたのは長く受けた教育だった。
「誰かを貶めたりするような令嬢では、トラヴィス様の隣に相応しくない」
どんなに悔しくても、それだけはフェリコットの守るべき矜持だった。
その矜持のおかげで、フェリコットは絶望することなく、むしろ負けず嫌いが作用してリエラヴィアに負けるかと拳を握った。
嫉妬に狂いそうになっても、彼女は高慢で傲慢で、我儘で前向きで、健気で一途な少女のままだった。
リエラヴィアはきっと、トラヴィスにとって大事な人なのだろう。
フェリコットはトラヴィスを愛していた。たとえ愛されなくても愛していた。
だから、醜く燃える嫉妬を押し殺しながら、リエラヴィアと仲良くなりたいと考えて、一緒に昼食をとってみないかと提案することにした。
「殿下! 殿下! あの、一緒に昼食をとりませんか? リエラヴィア嬢もご一緒に――」
「は? お前の顔見ながらなんて、食欲がわくわけないだろう」
「ですが、今日は我が公爵家の料理人が腕によりをかけたお弁当が……」
「しつこいっ!」
トラヴィスはそう言って、必死に縋りつこうとしたフェリコットを振り払った。
バランスを崩して倒れ込むフェリコットを一瞬見たものの、眉間に皺を寄せてそのまま立ち去ってしまい、後に残ったのはぐちゃぐちゃに崩れたお弁当と、倒れた際に足を酷くひねって、痛みに苦しむフェリコットだけだった。
ひねった足は、思いのほか酷く、フェリコットはしばらくまともに歩くことができなかったが、持ち前のプライドでそれを隠して日々を過ごした。
何故隠したのかと言われれば、もしもこのことが露見すれば、トラヴィスが罰されると恐れたが故だ。自分がみっともなく縋りついた結果、トラヴィスが罰されるのは居た堪れない。
親兄弟はもちろん、侍女にもバレないように耐え続けた。
だから悪化してしまったのだろう。
フェリコットの足首は腫れが引いても痛みを伴い続け、酷く歪んで歩くのもやっとの状態になってしまった。
決定的にトラヴィスに拒絶されたが、フェリコットは諦めなかった。
トラヴィスの隣に立つために、誰よりも努力したのはフェリコットなのだ。
婚約さえ解消されない限り、トラヴィスの隣に立つのは自分だからと言い聞かせながら、フェリコットは日々を過ごした。
リエラヴィアとトラヴィスが2人で会ってると知っても、胸に燻ぶる嫉妬をどうにか隠して、トラヴィスに望まれた通り無闇に近づかないようにしながら、それでも会う機会のたびに「大好きです」と伝えていた。
そうして、フェリコットが17に、トラヴィスが19になった卒院式の日。
卒院式の夜会で、
お互いの色を身につけながら、最初のダンスを踊るトラヴィスとリエラヴィアを見て、フェリコットは絶望した。
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