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第01話 おわかれだね(前編)
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パンプスをぬぎながら、玄関の明かりをつける。LEDのオレンジがかった光が足元をてらす。ワタシの靴の他に乱雑に脱ぎ散らされた大きな革靴……なんだ、先に帰っていたのか。彼よりも先に帰って出迎えてあげたかったのだけれど、すっかり遅くなってしまった。
玄関からドアを隔てて、十二畳のダイニングキッチンがある。そしてダイニングの奥には、洋室と和室が一部屋づつ。2DKのこの部屋は、二人で暮らすはちょうど良い広さだ。
「ただいま。ごめんね、遅くなって……」
ダイニングに入り声をかけてみたけれど返事がなかった。それどころか、部屋の明かりすらついていない。
「いるんでしょ?」
ダイニングから和室をのぞきこむと、背を向け畳に座る彼の姿が在った。窓から差しこむ街灯のあかりが、頼りなく彼をてらしている。
「いるなら返事してよ」
背中ごしに声をかけたのだけれど、やはり返事はなかった。仕方ないか……いまは言葉すら交わしたくないのだろう。
ワタシは今夜、この部屋をでる。彼との三年間の生活に終止符をうって、この部屋をでる。別れの日になってもまだ、彼は納得することができないのだ。いや、頭のなかではきっと納得しているはずだ。だけど理屈で理解できても、気持ちでは割り切れないのだろう。
アジアンテイストに飾られた和室。もともと彼が独りで暮らししていた部屋に、ワタシが転がり込んだのだ。和室が気に入らないと言っていたから、ワタシがコーディネイトした。タペストリーやクッションのファブリック使いを、彼はとても気に入ってくれた。カーテンを麻のロールスクリーンに代えた事も、お気に召したようだ。二人で選んだベトナム製のローチェストやソファ……今となっては、何もかもがなつかしい。
「まだ納得できないかな?」
彼の隣に腰をおろし、そっと訊いてみる。でも相変わらず、彼は視線を落としたままで、ワタシの言葉に応えようとはしない。
「……だよね。受け入れるのには、やっぱり時間かかるよね」
彼の視線の先に目をやると、そこにはワタシが作ったアルバムがあった。ページを増やせるタイプのアルバム。頻繁に写真を追加するものだから、かなりの厚さになってしまった。しかも、三冊組だ。
二人の写真をプリントしてアルバムにまとめはじめたころ、彼は「いまどきアルバムだなんて、古風で良いね」と言って褒めてくれた。スマートフォンで撮りためるだけじゃ、なんだか味気ない。デジタルな写真は場所もとらないし整理も共有も楽だけど、思い出をためておくには味気がなさすぎる。
彼が開いているページをのぞきこむ。写真の中には、笑顔を作るワタシと、何とも納得しきれない表情の彼が頬をよせて写っている。
「その写真、最初にプロポーズしてくれた時の……」
二人で暮らし始めて一年がたったころ、彼は結婚を申し込んでくれた。記念日でもないのに外食に誘われたから、何事なのかと思っていたらプロポーズだった。フレンチのコースに高そうなワイン、そして給料三ヶ月分の指輪。意外と彼は、一般的な価値観や慣習に沿いたがる。乾杯のあとに差しだされたダイヤモンドの指輪。ティファニー爪で掲げられた透明感に満ちた煌きが、いまでも強く印象に残っている。
あのころのワタシは結婚なんて考えてもみなかったし、そりゃ二人で暮らしてる延長線上にはそういう事もあるだろうとは思っていたけど、あまりにも早くその日がきたものがからあわてふためいてしまった。
「あの時のワタシ、すっごくあわててたよね」
彼は写真を見ながら少し頬をゆるませると、大きくため息をついた。そしてしばらくの沈黙の後、消えそうな声でつぶやいた。
「プロポーズなんて……しない方が良かったのかな」
「そんな事ないよ! 突然でおどろいたけど、すごく嬉しかったもん。すごく元気になったもん。プロポーズされるのって、人から必要とされるのって、とっても嬉しいことだって思ったもん。でも、素直に受けられなかったのは、本当に悪かったと思ってるよ。あの頃のワタシは、まだ結婚なんてイメージできなかったし、まだまだ仕事だって頑張りたかったし、始まったばかりの二人の生活を変わらずに続けたかったんだよ。結婚する事で、二人の関係が変わってしまうようで怖かったんだよ……って、これ、何度も説明したよね」
彼の顔をのぞきこむ。少し困ったような笑顔……写真と同じ表情で笑っていた。プロポーズを断りこそしなかったけれど、答は保留にしてしまった。まだいまの生活を続けたいと懇願し、指輪も結婚する時まで彼にあずかってもらう事にした。
でも、プロポーズしてくれたことは、本当に嬉しかったのだ。喜びの気持ちを残しておきたくて、部屋に帰ってから二人で写真を撮った。彼は「プロポーズ断られた記念なんて嫌だよ」と逃げ回ったけど、「断ってないし! 保留だし!」と強引に二人で写真を撮った。何度撮り直しても彼の表情にはやる瀬なさがにじみ出てしまったけど、これはこれで二人の気持ちを巧く写しとっているのではないかと思いアルバムにおさめた。
「ほんと、ごめんね。いつも振りまわししてばかりだよね。でも、自分の価値観だけで突っ走っちゃうと、空まわりになっちゃうじゃない? 相手の立場で考えることも必要だよね……あ、いや、これ何度も言ったし、それにお互いさまだよね。……あー、今さらするような話でもないか……ごめん」
物事を斜めからみるワタシに対して、正面からみる彼。多数派であることを嫌うワタシに対して、多数派であることに安堵をおぼえる彼。考え方の方向は似ているけど、価値観が違う二人。でも、違うからこそワタシは彼にひかれたんだと思うし、きっと彼もそうだったのだろうと思う。
時折、車がとおる音が聞こえる。それ以外は、彼の呼吸の音しか聞こえない。静寂につつまれた二人の部屋。駅からは少し距離があるけど、この静寂がえられるのであれば苦にはならない。
彼は本を読むのが好きで、部屋を選ぶときも騒々しい環境をさけたと言っていた。ゆっくりと読書に没頭できる部屋が良かったのだそうだ。手頃なワンルームは騒々しい駅の周辺に集中しているし、静かな郊外の部屋は家族向けの間取りが多い。独りなのに2DKの部屋を選んだのは、そういった理由なのだそうだ。
この部屋で二人して、たくさんの本を読んだ。この部屋で二人して、たくさんの映画をみた。二人そろって物語が大好きで、時間があれば本や映画の中を旅していた。ワタシが作ったアルバムも、二人の物語を紡いでいるといいな……そう思いながら作ったのだけれど、巧くできていただろうか。
目の前でおもむろにページをめくる彼の目には、二人のアルバムはどう映っているのだろう。彼は今、ワタシがピアスホールを開けた日の写真を見つめている。真珠のピアスにあこがれて、ピアスホールをあけようとピアッサーを買ってきた。なんとか自分であけようと試みたのだけれど、怖くてどうしてもあけることができなかった。血で汚しちゃダメよねとシャツを脱いでみたり、すぐに消毒できるようオキシドールと脱脂綿を用意してみたり、何度も仕切り直しながら鏡に向かったのだけれどやっぱり開けることができなかった。勢いをつけるため冷蔵庫から缶ビールを持ってきて、一気にあおっているところに彼が帰ってきた。
下着姿で缶ビールを一気飲みするワタシをみて彼は呆気にとられていたけれど、しどろもどろに事情を説明すると大体の事情は察してくれた。そして冷凍庫から氷を持ってきてワタシの耳たぶを冷やし、ピアッサーをかまえたかと思うとあっという間に両耳にピアスを通してしまった。
「安定するまで、毎日ちゃんと消毒して、ピアスを回すんだよ」
オキシドールを脱脂綿に含ませながら、そう教えてくれた。
「すごいね! ぜんぜん痛くなかったよ。なんだか手なれてない?」
「学生のころ、五個開けてるから」
そうだった。彼のふさがりかけたピアスホール、何度も見て知っていたはずなのに。左の耳たぶに三個、右の耳たぶに二個の孔があいている。社会人になってから、ピアスを通していないのだそうだ。
「五個も開けてるもんだから、友達によく頼まれてあけてた」
「そっかー。最初から、相談すればよかったね」
「まったくだよ。耳に孔あけるのに、ビールあおる奴があるかよ」
「だよね。お馬鹿だったね、ワタシ」
通したばかりのピアスの周りを消毒してもらうと、少しづつ耳たぶに痛みを感じてきた。緊張がとけたのか、氷で麻痺した痛みが戻ってきたのか、はたまた酔いが回って血流がはげしくなったのか……。
「おー、なんか痛くなってきた! ジンジンしてきた!」
「無理せず休んでな」
「そうだ、記念写真撮ってよ!」
「何の記念なんだか……」
「ピアスホール開けてくれた記念だよ! ほら、早く早く!」
(つづく)
玄関からドアを隔てて、十二畳のダイニングキッチンがある。そしてダイニングの奥には、洋室と和室が一部屋づつ。2DKのこの部屋は、二人で暮らすはちょうど良い広さだ。
「ただいま。ごめんね、遅くなって……」
ダイニングに入り声をかけてみたけれど返事がなかった。それどころか、部屋の明かりすらついていない。
「いるんでしょ?」
ダイニングから和室をのぞきこむと、背を向け畳に座る彼の姿が在った。窓から差しこむ街灯のあかりが、頼りなく彼をてらしている。
「いるなら返事してよ」
背中ごしに声をかけたのだけれど、やはり返事はなかった。仕方ないか……いまは言葉すら交わしたくないのだろう。
ワタシは今夜、この部屋をでる。彼との三年間の生活に終止符をうって、この部屋をでる。別れの日になってもまだ、彼は納得することができないのだ。いや、頭のなかではきっと納得しているはずだ。だけど理屈で理解できても、気持ちでは割り切れないのだろう。
アジアンテイストに飾られた和室。もともと彼が独りで暮らししていた部屋に、ワタシが転がり込んだのだ。和室が気に入らないと言っていたから、ワタシがコーディネイトした。タペストリーやクッションのファブリック使いを、彼はとても気に入ってくれた。カーテンを麻のロールスクリーンに代えた事も、お気に召したようだ。二人で選んだベトナム製のローチェストやソファ……今となっては、何もかもがなつかしい。
「まだ納得できないかな?」
彼の隣に腰をおろし、そっと訊いてみる。でも相変わらず、彼は視線を落としたままで、ワタシの言葉に応えようとはしない。
「……だよね。受け入れるのには、やっぱり時間かかるよね」
彼の視線の先に目をやると、そこにはワタシが作ったアルバムがあった。ページを増やせるタイプのアルバム。頻繁に写真を追加するものだから、かなりの厚さになってしまった。しかも、三冊組だ。
二人の写真をプリントしてアルバムにまとめはじめたころ、彼は「いまどきアルバムだなんて、古風で良いね」と言って褒めてくれた。スマートフォンで撮りためるだけじゃ、なんだか味気ない。デジタルな写真は場所もとらないし整理も共有も楽だけど、思い出をためておくには味気がなさすぎる。
彼が開いているページをのぞきこむ。写真の中には、笑顔を作るワタシと、何とも納得しきれない表情の彼が頬をよせて写っている。
「その写真、最初にプロポーズしてくれた時の……」
二人で暮らし始めて一年がたったころ、彼は結婚を申し込んでくれた。記念日でもないのに外食に誘われたから、何事なのかと思っていたらプロポーズだった。フレンチのコースに高そうなワイン、そして給料三ヶ月分の指輪。意外と彼は、一般的な価値観や慣習に沿いたがる。乾杯のあとに差しだされたダイヤモンドの指輪。ティファニー爪で掲げられた透明感に満ちた煌きが、いまでも強く印象に残っている。
あのころのワタシは結婚なんて考えてもみなかったし、そりゃ二人で暮らしてる延長線上にはそういう事もあるだろうとは思っていたけど、あまりにも早くその日がきたものがからあわてふためいてしまった。
「あの時のワタシ、すっごくあわててたよね」
彼は写真を見ながら少し頬をゆるませると、大きくため息をついた。そしてしばらくの沈黙の後、消えそうな声でつぶやいた。
「プロポーズなんて……しない方が良かったのかな」
「そんな事ないよ! 突然でおどろいたけど、すごく嬉しかったもん。すごく元気になったもん。プロポーズされるのって、人から必要とされるのって、とっても嬉しいことだって思ったもん。でも、素直に受けられなかったのは、本当に悪かったと思ってるよ。あの頃のワタシは、まだ結婚なんてイメージできなかったし、まだまだ仕事だって頑張りたかったし、始まったばかりの二人の生活を変わらずに続けたかったんだよ。結婚する事で、二人の関係が変わってしまうようで怖かったんだよ……って、これ、何度も説明したよね」
彼の顔をのぞきこむ。少し困ったような笑顔……写真と同じ表情で笑っていた。プロポーズを断りこそしなかったけれど、答は保留にしてしまった。まだいまの生活を続けたいと懇願し、指輪も結婚する時まで彼にあずかってもらう事にした。
でも、プロポーズしてくれたことは、本当に嬉しかったのだ。喜びの気持ちを残しておきたくて、部屋に帰ってから二人で写真を撮った。彼は「プロポーズ断られた記念なんて嫌だよ」と逃げ回ったけど、「断ってないし! 保留だし!」と強引に二人で写真を撮った。何度撮り直しても彼の表情にはやる瀬なさがにじみ出てしまったけど、これはこれで二人の気持ちを巧く写しとっているのではないかと思いアルバムにおさめた。
「ほんと、ごめんね。いつも振りまわししてばかりだよね。でも、自分の価値観だけで突っ走っちゃうと、空まわりになっちゃうじゃない? 相手の立場で考えることも必要だよね……あ、いや、これ何度も言ったし、それにお互いさまだよね。……あー、今さらするような話でもないか……ごめん」
物事を斜めからみるワタシに対して、正面からみる彼。多数派であることを嫌うワタシに対して、多数派であることに安堵をおぼえる彼。考え方の方向は似ているけど、価値観が違う二人。でも、違うからこそワタシは彼にひかれたんだと思うし、きっと彼もそうだったのだろうと思う。
時折、車がとおる音が聞こえる。それ以外は、彼の呼吸の音しか聞こえない。静寂につつまれた二人の部屋。駅からは少し距離があるけど、この静寂がえられるのであれば苦にはならない。
彼は本を読むのが好きで、部屋を選ぶときも騒々しい環境をさけたと言っていた。ゆっくりと読書に没頭できる部屋が良かったのだそうだ。手頃なワンルームは騒々しい駅の周辺に集中しているし、静かな郊外の部屋は家族向けの間取りが多い。独りなのに2DKの部屋を選んだのは、そういった理由なのだそうだ。
この部屋で二人して、たくさんの本を読んだ。この部屋で二人して、たくさんの映画をみた。二人そろって物語が大好きで、時間があれば本や映画の中を旅していた。ワタシが作ったアルバムも、二人の物語を紡いでいるといいな……そう思いながら作ったのだけれど、巧くできていただろうか。
目の前でおもむろにページをめくる彼の目には、二人のアルバムはどう映っているのだろう。彼は今、ワタシがピアスホールを開けた日の写真を見つめている。真珠のピアスにあこがれて、ピアスホールをあけようとピアッサーを買ってきた。なんとか自分であけようと試みたのだけれど、怖くてどうしてもあけることができなかった。血で汚しちゃダメよねとシャツを脱いでみたり、すぐに消毒できるようオキシドールと脱脂綿を用意してみたり、何度も仕切り直しながら鏡に向かったのだけれどやっぱり開けることができなかった。勢いをつけるため冷蔵庫から缶ビールを持ってきて、一気にあおっているところに彼が帰ってきた。
下着姿で缶ビールを一気飲みするワタシをみて彼は呆気にとられていたけれど、しどろもどろに事情を説明すると大体の事情は察してくれた。そして冷凍庫から氷を持ってきてワタシの耳たぶを冷やし、ピアッサーをかまえたかと思うとあっという間に両耳にピアスを通してしまった。
「安定するまで、毎日ちゃんと消毒して、ピアスを回すんだよ」
オキシドールを脱脂綿に含ませながら、そう教えてくれた。
「すごいね! ぜんぜん痛くなかったよ。なんだか手なれてない?」
「学生のころ、五個開けてるから」
そうだった。彼のふさがりかけたピアスホール、何度も見て知っていたはずなのに。左の耳たぶに三個、右の耳たぶに二個の孔があいている。社会人になってから、ピアスを通していないのだそうだ。
「五個も開けてるもんだから、友達によく頼まれてあけてた」
「そっかー。最初から、相談すればよかったね」
「まったくだよ。耳に孔あけるのに、ビールあおる奴があるかよ」
「だよね。お馬鹿だったね、ワタシ」
通したばかりのピアスの周りを消毒してもらうと、少しづつ耳たぶに痛みを感じてきた。緊張がとけたのか、氷で麻痺した痛みが戻ってきたのか、はたまた酔いが回って血流がはげしくなったのか……。
「おー、なんか痛くなってきた! ジンジンしてきた!」
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