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第02話 おわかれだね(後編)
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アルバムの中には「彼がピアスホール開けてくれた記念」のような他愛もない出来事がたくさん詰めこまれていて、その一つ一つがワタシにとってはまばゆい煌きをはなつ宝石のようなもので、さしづめこのアルバムは煌めく思い出が詰まった宝石箱だ。
その宝石箱も、二人で暮らし始めて二年が過ぎたあたりで輝きの質が変わってしまう。
ワタシが、入院したからだ。
最初は、筋肉痛だと思っていた。運動をした後、膝のあたりに違和感を覚える程度だった。違和感が痛みに変わりやがて腫れをともなうようになると、さすがにおかしいと思い整形外科で診察を受けた。レントゲンやMRIをとって、そのまま入院することになった。
検査から開放されたあと、彼のスマートフォンに電話して、仕事が終わったら着替えや身の回りの物を持ってきてくれるように頼んだのだけれど、一時間もしないうちにすっ飛んできた……しかも何ももたずに。居ても立ってもいられなくなり、会社を早退してそのまま病院にきたのだそうだ。着替えは実家の母が持ってきてくれた。病室ではじめて顔を合わせた二人。彼はずっと緊張していたけど、母は彼のことを気に入ったみたいで、記念に二人の写真を撮った。
次の日の夕方には、父もお見舞いに来てくれて彼と顔を合わせることになったのだけれど、彼が挨拶しても父は「どうも」と一度だけ頭を下げたきりで会話は続かず、もちろん記念写真を撮るような雰囲気にはならなかった。いまでは病院がえりに、彼と父母の三人で食事に行く程度には仲よくなったけど、最初は本当にぎこちなかった。母がうまくとりなしてくれたみたいだ。
それから毎日、彼は会社が終わるとすぐに病院に来て面会終了までの数時間を一緒に過ごしてくれた。いままではワタシが記念写真を撮りたがり彼がつきあってくれたのだけれど、このころから彼が一緒に写真を撮りたがるようになった。
「今日、調子よさそうだね。記念写真とらない?」
「昨日とったばかりじゃん」
「良いじゃん、何回とったって」
ベッドに座り、左手でワタシの肩を抱き、右手を伸ばしてスマホで自撮り。
「自撮り棒とか買ってくるかな」
「えー、要らないでしょ、あれ」
「そぉ? 意外と便利かもよ」
病院で撮った写真は、彼がプリントして病室まで持ってきてくれた。アルバムも、二人の部屋から持ってきてくれた。時間だけはあるものだから、暇に任せてアルバム作りに熱が入った。正直に言えば、そのころはあまり写真に写りたくなかった。お化粧だってしてないし、髪だってボサボサだし、顔色も悪いし、なんだかやつれてるし……でも、そんな尾羽うち枯らした姿も、後になって見れば煌めく宝石のように見えるのかもしれない……そう思って磨かれていない原石をせっせと宝石箱に詰めていた。
「早く良くなって帰っておいでよ。あの部屋、独りじゃ寂しいよ」
「帰れるのかな。ちゃんと治ると思う?」
「いまじゃ不治の病って訳でもないんだろ?」
「そうなんだけど……。正直に言うと、手術も怖いのよね」
「大丈夫だって。きっと成功するから。早く良くなって、一緒に帰ろうよ」
そう、現代の医学を持ってすれば、決して不治の病ではない。ただし、転移していなければ、という条件つきではあるのだけれど。ワタシは手術を受け、ひざの骨を人工の関節に置き換えた。一時的とはいえ立てなくなるという事が、こんなに辛い事だとは思わなかった。いや、辛いだろうと予想も覚悟もしていた。でも、頭の中で考えることと実際に経験することの間には、やはり大きな隔たりがある。何をするにも他人の介助が必要というのは、予想以上につらい経験だった。早くリハビリを終えて、自分で動けるようになりたい……二度目のプロポーズは、そんなあせりの中で行われた。ワタシのあせりはきっと彼にも伝わっていて、もしかするとワタシを元気づけるために、プロポーズしてくれたのかもしれない。ベッドサイドのパイプ椅子に座った彼は、ワタシの手をとっていつか見たダイヤの指輪を握らせてくれた。
「プロポーズ、今度こそ受けてくれるよね」
「結婚はしたいわ。ずっと一緒に暮らしたい」
「じゃ、OKだよね」
「……ごめん。返事は退院するまで、待ってくれない?」
「どうして? 結婚したいなら、いまOKしても同じじゃない?」
「同じじゃない。同じじゃないのよ……」
気づかない間に、涙が枕をぬらしていた。涙が流れていると気づいた瞬間、嗚咽があふれた。彼はハンカチで涙を拭きながら、ワタシが落ち着くまで待ってくれた。
「やっぱり、必要とされるのって良いね。こんなワタシでも、必要としてくれる人がいるってだけで、嬉しくて泣けてくるよ。でもね、今のワタシじゃ、与えてもらってばかりじゃない? あなたがたくさん気を使ってくれてるのがわかるし、病気に負けないように元気づけてくれたりさ……。だけどね、巧く言えないんだけどさ……何て言うか、与えてもらった分はちゃんとお返ししたいの。お返しできる自分でいたいの。結婚するのなら、なおさら対等な関係でいたいの。あなたはきっと俺もたくさん貰ってるよって言うんだろうし、貰いたいなんて思ってないって言うかもしれないけど、それじゃワタシが納得できないの。あなたからもらってる優しさとか愛情とか、同じだけワタシからもお返しができるって自信がいまは持てないの……。自信がもてるようになるまで、返事はまってくれないかな……」
巧くまとまらないワタシの話を、彼は静かにうなづきながら聴いてくれた。そして大きく息を吸い込むと、視線を天井に移し目を閉じながらゆっくりと吐きだした。
「あー、また断られちゃったな」
重く沈んだ雰囲気をくつがえすように、彼が明るい声をあげる。
「ちがうもん! 断ってないし! 保留だし!」
「それじゃ、二度目の保留記念ってことで、記念撮影しときますか」
「やだよ、すごく泣いたから、まぶたが腫れてるでしょ。こんな顔で写りたくないよ」
「なに言ってんの。一回目の時、俺が嫌だって言ってるのに記念撮影したでしょ?」
また一台、部屋の外を車がとおりすぎた。窓越しに聞こえる車の音は、どこか遠くの出来事のようで現実感がない。そして再び静寂が戻り、あなたの呼吸の音だけが部屋に残る。呼吸の音はいつしかリズムが崩れ、やがて激しく乱れ、嗚咽へと変わっていった。
アルバムは二度目のプロポーズ保留記念のページが開かれていて、あなたの涙がページをぬらしている。写真の中では、まぶたを腫らしたワタシと、どこか吹っ切れた表情のあなたが、病院のベッドで頬を寄せあって笑っている。実はこの時、何となくではあるのだけれど、ワタシは死へと向かっているんだろうなと感じていた。体調も思わしくなかったし、手術以降、彼や父や母、そして看護師さん達の接し方にも違和感をおぼえていた。
二回目のプロポーズから先のページに写真はない。これ以降、ワタシは写真に写ることをこばんだ。死にむかっておとろえていく姿なんて残したくなかった。そんな姿でワタシの事を思い出してほしくはなかった。あなたや父や母の、やる瀬のない表情も持ちこみたくなかった。アルバムは二人の部屋へ持ち帰ってもらった。ワタシは宝石をつめることをやめ、宝石を集めることすらやめてしまった。
そんなワタシを、あなたは変わらずに支えつづけてくれた。肺の転移で呼吸が苦しいときは、優しく背中をさすってくれた。モルヒネが効かなくなって激痛に泣くワタシを、必死で抱きとめてくれた。体調の良い日には、他愛もない会話で気分をなごませてくれた。もしかしたら、逃げ出したかったんじゃないかと思う。日に日に死へと近づいていく恋人の姿なんて、見ていられなかったんじゃないかと思う。もしも逆の立場だったら、ワタシは最後まであなたを支えることができただろうか。泣き叫んであなたを困らせたんじゃないだろうか……。
意外なほど素直に、死を受けいれることができた。でも死ぬことは怖かったし、なぜワタシが死ななければならないのかと怒りすらおぼえたけれど、納得せざるを得なかったというのが本当のところ。
あなたはどうだったのだろう。ワタシが死んでしまうことを、素直に納得できたのだろうか。いや、納得なんてできる訳ないよね。そんな理不尽、受けいれられる訳がないよね。それでもあなたは、泣き叫んでワタシを困らせたりはしなかった。受け入れがたきを受け入れて、ずっとワタシをはげましてくれた。そんな優しさに触れ続けていたから、ワタシも死という現実を受けいれることができたんだと思う。
今日、ついに最後の息をはき温もりを失っていくワタシのほほにふれ、あなたはなにも言わずにその場を立ち去ったよね。そして二人の部屋にかえり、何度もアルバムを見かえしては涙をながしている。
ありがとう、ワタシのために泣いてくれて。
ありがとう、ワタシのことを愛してくれて。
好きになったのがあなたで良かったと思う。好きになってくれたのがあなたで、本当に良かったと思う。
この先もずっと、一緒に暮らしていきたいと思っていたのよ。あなたとなら、人生シェアできると思ってた。でもプロポーズを受ける事はできなかったし、今日こうしてお別れのときをむかえている。本当に残念……。
「これからまた、独り暮らしだね」
アルバムを見つめながら泣きくずれるあなたの背中に、そっと体をかさねる。
今だけは、ワタシのために泣いてほしい。涙が枯れるまで、ワタシのことだけを想って泣いてほしい。
そして悲しみが癒えたなら、ワタシにとらわれずに生きてほしい。この先もしも素敵な人があらわれたのなら、その人と一緒に人生を歩んでほしい。ワタシの事は忘れてもいいから、あなたの幸せを見つけてほしい。
でも時々で良いから、ワタシと過ごした日々も思いだしてほしい……。
「ごめんね。一緒に生きられなくて……」
ダイヤの指輪を受けとることはできなかったけど、あなたからもらったたくさんの宝石を胸に旅だちます。
いままで本当にありがとう。
(了)
その宝石箱も、二人で暮らし始めて二年が過ぎたあたりで輝きの質が変わってしまう。
ワタシが、入院したからだ。
最初は、筋肉痛だと思っていた。運動をした後、膝のあたりに違和感を覚える程度だった。違和感が痛みに変わりやがて腫れをともなうようになると、さすがにおかしいと思い整形外科で診察を受けた。レントゲンやMRIをとって、そのまま入院することになった。
検査から開放されたあと、彼のスマートフォンに電話して、仕事が終わったら着替えや身の回りの物を持ってきてくれるように頼んだのだけれど、一時間もしないうちにすっ飛んできた……しかも何ももたずに。居ても立ってもいられなくなり、会社を早退してそのまま病院にきたのだそうだ。着替えは実家の母が持ってきてくれた。病室ではじめて顔を合わせた二人。彼はずっと緊張していたけど、母は彼のことを気に入ったみたいで、記念に二人の写真を撮った。
次の日の夕方には、父もお見舞いに来てくれて彼と顔を合わせることになったのだけれど、彼が挨拶しても父は「どうも」と一度だけ頭を下げたきりで会話は続かず、もちろん記念写真を撮るような雰囲気にはならなかった。いまでは病院がえりに、彼と父母の三人で食事に行く程度には仲よくなったけど、最初は本当にぎこちなかった。母がうまくとりなしてくれたみたいだ。
それから毎日、彼は会社が終わるとすぐに病院に来て面会終了までの数時間を一緒に過ごしてくれた。いままではワタシが記念写真を撮りたがり彼がつきあってくれたのだけれど、このころから彼が一緒に写真を撮りたがるようになった。
「今日、調子よさそうだね。記念写真とらない?」
「昨日とったばかりじゃん」
「良いじゃん、何回とったって」
ベッドに座り、左手でワタシの肩を抱き、右手を伸ばしてスマホで自撮り。
「自撮り棒とか買ってくるかな」
「えー、要らないでしょ、あれ」
「そぉ? 意外と便利かもよ」
病院で撮った写真は、彼がプリントして病室まで持ってきてくれた。アルバムも、二人の部屋から持ってきてくれた。時間だけはあるものだから、暇に任せてアルバム作りに熱が入った。正直に言えば、そのころはあまり写真に写りたくなかった。お化粧だってしてないし、髪だってボサボサだし、顔色も悪いし、なんだかやつれてるし……でも、そんな尾羽うち枯らした姿も、後になって見れば煌めく宝石のように見えるのかもしれない……そう思って磨かれていない原石をせっせと宝石箱に詰めていた。
「早く良くなって帰っておいでよ。あの部屋、独りじゃ寂しいよ」
「帰れるのかな。ちゃんと治ると思う?」
「いまじゃ不治の病って訳でもないんだろ?」
「そうなんだけど……。正直に言うと、手術も怖いのよね」
「大丈夫だって。きっと成功するから。早く良くなって、一緒に帰ろうよ」
そう、現代の医学を持ってすれば、決して不治の病ではない。ただし、転移していなければ、という条件つきではあるのだけれど。ワタシは手術を受け、ひざの骨を人工の関節に置き換えた。一時的とはいえ立てなくなるという事が、こんなに辛い事だとは思わなかった。いや、辛いだろうと予想も覚悟もしていた。でも、頭の中で考えることと実際に経験することの間には、やはり大きな隔たりがある。何をするにも他人の介助が必要というのは、予想以上につらい経験だった。早くリハビリを終えて、自分で動けるようになりたい……二度目のプロポーズは、そんなあせりの中で行われた。ワタシのあせりはきっと彼にも伝わっていて、もしかするとワタシを元気づけるために、プロポーズしてくれたのかもしれない。ベッドサイドのパイプ椅子に座った彼は、ワタシの手をとっていつか見たダイヤの指輪を握らせてくれた。
「プロポーズ、今度こそ受けてくれるよね」
「結婚はしたいわ。ずっと一緒に暮らしたい」
「じゃ、OKだよね」
「……ごめん。返事は退院するまで、待ってくれない?」
「どうして? 結婚したいなら、いまOKしても同じじゃない?」
「同じじゃない。同じじゃないのよ……」
気づかない間に、涙が枕をぬらしていた。涙が流れていると気づいた瞬間、嗚咽があふれた。彼はハンカチで涙を拭きながら、ワタシが落ち着くまで待ってくれた。
「やっぱり、必要とされるのって良いね。こんなワタシでも、必要としてくれる人がいるってだけで、嬉しくて泣けてくるよ。でもね、今のワタシじゃ、与えてもらってばかりじゃない? あなたがたくさん気を使ってくれてるのがわかるし、病気に負けないように元気づけてくれたりさ……。だけどね、巧く言えないんだけどさ……何て言うか、与えてもらった分はちゃんとお返ししたいの。お返しできる自分でいたいの。結婚するのなら、なおさら対等な関係でいたいの。あなたはきっと俺もたくさん貰ってるよって言うんだろうし、貰いたいなんて思ってないって言うかもしれないけど、それじゃワタシが納得できないの。あなたからもらってる優しさとか愛情とか、同じだけワタシからもお返しができるって自信がいまは持てないの……。自信がもてるようになるまで、返事はまってくれないかな……」
巧くまとまらないワタシの話を、彼は静かにうなづきながら聴いてくれた。そして大きく息を吸い込むと、視線を天井に移し目を閉じながらゆっくりと吐きだした。
「あー、また断られちゃったな」
重く沈んだ雰囲気をくつがえすように、彼が明るい声をあげる。
「ちがうもん! 断ってないし! 保留だし!」
「それじゃ、二度目の保留記念ってことで、記念撮影しときますか」
「やだよ、すごく泣いたから、まぶたが腫れてるでしょ。こんな顔で写りたくないよ」
「なに言ってんの。一回目の時、俺が嫌だって言ってるのに記念撮影したでしょ?」
また一台、部屋の外を車がとおりすぎた。窓越しに聞こえる車の音は、どこか遠くの出来事のようで現実感がない。そして再び静寂が戻り、あなたの呼吸の音だけが部屋に残る。呼吸の音はいつしかリズムが崩れ、やがて激しく乱れ、嗚咽へと変わっていった。
アルバムは二度目のプロポーズ保留記念のページが開かれていて、あなたの涙がページをぬらしている。写真の中では、まぶたを腫らしたワタシと、どこか吹っ切れた表情のあなたが、病院のベッドで頬を寄せあって笑っている。実はこの時、何となくではあるのだけれど、ワタシは死へと向かっているんだろうなと感じていた。体調も思わしくなかったし、手術以降、彼や父や母、そして看護師さん達の接し方にも違和感をおぼえていた。
二回目のプロポーズから先のページに写真はない。これ以降、ワタシは写真に写ることをこばんだ。死にむかっておとろえていく姿なんて残したくなかった。そんな姿でワタシの事を思い出してほしくはなかった。あなたや父や母の、やる瀬のない表情も持ちこみたくなかった。アルバムは二人の部屋へ持ち帰ってもらった。ワタシは宝石をつめることをやめ、宝石を集めることすらやめてしまった。
そんなワタシを、あなたは変わらずに支えつづけてくれた。肺の転移で呼吸が苦しいときは、優しく背中をさすってくれた。モルヒネが効かなくなって激痛に泣くワタシを、必死で抱きとめてくれた。体調の良い日には、他愛もない会話で気分をなごませてくれた。もしかしたら、逃げ出したかったんじゃないかと思う。日に日に死へと近づいていく恋人の姿なんて、見ていられなかったんじゃないかと思う。もしも逆の立場だったら、ワタシは最後まであなたを支えることができただろうか。泣き叫んであなたを困らせたんじゃないだろうか……。
意外なほど素直に、死を受けいれることができた。でも死ぬことは怖かったし、なぜワタシが死ななければならないのかと怒りすらおぼえたけれど、納得せざるを得なかったというのが本当のところ。
あなたはどうだったのだろう。ワタシが死んでしまうことを、素直に納得できたのだろうか。いや、納得なんてできる訳ないよね。そんな理不尽、受けいれられる訳がないよね。それでもあなたは、泣き叫んでワタシを困らせたりはしなかった。受け入れがたきを受け入れて、ずっとワタシをはげましてくれた。そんな優しさに触れ続けていたから、ワタシも死という現実を受けいれることができたんだと思う。
今日、ついに最後の息をはき温もりを失っていくワタシのほほにふれ、あなたはなにも言わずにその場を立ち去ったよね。そして二人の部屋にかえり、何度もアルバムを見かえしては涙をながしている。
ありがとう、ワタシのために泣いてくれて。
ありがとう、ワタシのことを愛してくれて。
好きになったのがあなたで良かったと思う。好きになってくれたのがあなたで、本当に良かったと思う。
この先もずっと、一緒に暮らしていきたいと思っていたのよ。あなたとなら、人生シェアできると思ってた。でもプロポーズを受ける事はできなかったし、今日こうしてお別れのときをむかえている。本当に残念……。
「これからまた、独り暮らしだね」
アルバムを見つめながら泣きくずれるあなたの背中に、そっと体をかさねる。
今だけは、ワタシのために泣いてほしい。涙が枯れるまで、ワタシのことだけを想って泣いてほしい。
そして悲しみが癒えたなら、ワタシにとらわれずに生きてほしい。この先もしも素敵な人があらわれたのなら、その人と一緒に人生を歩んでほしい。ワタシの事は忘れてもいいから、あなたの幸せを見つけてほしい。
でも時々で良いから、ワタシと過ごした日々も思いだしてほしい……。
「ごめんね。一緒に生きられなくて……」
ダイヤの指輪を受けとることはできなかったけど、あなたからもらったたくさんの宝石を胸に旅だちます。
いままで本当にありがとう。
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