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一章
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その後、詳しくは城へ到着してから説明すると言われ
まだひくひくとしゃくりあげる男達がSPのように俺を囲み
森の出口まで案内してくれた。
道中、俺がつい殴り飛ばしてしまったらしい黒い動物の話をすると
しゃくり上げながらも驚いた顔をした中年が心配いらないと言った。
何が心配いらないのか全然分からない。
森を出ると地面にアニメやゲームでよく見るような魔法陣が描かれていた。
あ、これは絶対この上に乗ってどこかに移動するパターンだ。
「さあ、陛下。この陣の中央へ…。」
ほら当たった。言われた通り魔法陣の中心に立つと、周りをまた男達が
SPのように固めてきた。すごくむさ苦しい。
「これから陛下がお住まいになる城へ移動します。
到着しましたら、まずはお召し物をお着替えになった方が宜しいかと。」
中年に言われて気付いたが、よく見れば俺の一張羅は土と霜でドロドロだった。
森の中で二度寝したから当然か。
「ええ。そうします。」
「分かりました。…始めろ。」
中年の合図で足元の魔法陣が光り出した。全身が光に包まれると、なんだか
覚えのある浮遊感。ああそうだ、エレベーターだ。
眩しくて閉じていた目を開けると、そこにはいかにもここに
魔王住んでます、といった感じのおどろおどろしい城があった。
月明かりも無く松明の明かりだけでは暗くてよく見えないが
かなり大きい城だろう。
「こちらが陛下の居城、ケリドウェン城です。さあ、こちらへ。」
案内されるまま城に入り、やけに暗い廊下を歩く。
この城、電気通ってないんだろうか。
暗すぎて俺の周りのSPの足を何回か踏みながら階段を登り
五メートルはありそうな大きな扉の前に到着した。
扉には悪そうな顔をしたドラゴンの頭の飾りがついている。悪趣味だ。
「こちらが陛下の寝室です。湯殿は御部屋に入り、左手奥になります。
私はこちらでお待ちしておりますので、ご準備出来ましたら
お声掛け下さい。」
「はい。ありがとうございます。」
中年に礼を言って扉を開ける。
と、今までの暗さが嘘のような明るさに思わず目を細める。
明かりに段々目が慣れてきたので辺りを見回すと、まとめサイトで見た
海外の高級ホテルの様な内装。床には毛足の長い絨毯に高そうな家具。
ベッドには天蓋まで付いていた。
あまりの豪華さになんだか笑えてきた。薄笑いを浮かべていると
この豪華な部屋の中で自分の格好のみすぼらしさがなんだか恥ずかしくなり
早々に浴室へ向かう。
浴室も広くて、銭湯の風呂くらいの大きさだった。
湯加減も丁度良くて、これだけの広さの風呂を独り占めできるなんて
死んでよかったかもしれない、なんて考えて湯船に浸かりながら
俺はまた少し笑った。
中年をあまり待たせるのも忍びないので早めに上がり、脱衣所に
用意されていた服を着る。
用意されていたのは中世ヨーロッパの貴族が着てそうな
やたらとふりふりがついた真っ黒な服。特に襟と袖と胸元には
盛大にふりふりがくっつけられていて、ちょっと成人男性として
これを着るのは恥ずかしい。
他に服も無いので渋々着てみると、やけにピッタリした作りになっていて
体のラインが丸わかりだ。週一くらいでジムに通っていたので
見られて困るほどだらしない体をしているという訳じゃないが
恥ずかしいことには変わりない。
ちなみになぜか下着はなかったのでノーパンでピチピチのズボンを
履いている。これが一番恥ずかしい。大分尻に食い込んでいる気がする。
暫く尻の違和感と戦っていたが、もうどうにもならないので諦めて
スーツのポケットに入れっぱなしになっていた指輪を
懐の内ポケットにしまった。せっかく買ったのに、きっとこれから先
誰にも渡すことはないだろう指輪。
いっそ捨ててしまおうかと思ったが、なぜかできなかった。
情けない。未練たらしい。なんて馬鹿なんだ。
指輪を見つめていると良くない感情に引っ張られそうで
俺は頭を軽く振り、ドアを開けて中年に声をかけた。
「あの…準備できました。」
「…………!!陛下……!ああ…なんと麗しい…!!」
ふりふりピチピチの俺を見て中年が跪いた。恥ずかしいからやめてほしい。
中年の他にも俺を待っていた男達がいたらしく、そいつらまで
跪いて俺を褒めている。やめてほしい。
まだひくひくとしゃくりあげる男達がSPのように俺を囲み
森の出口まで案内してくれた。
道中、俺がつい殴り飛ばしてしまったらしい黒い動物の話をすると
しゃくり上げながらも驚いた顔をした中年が心配いらないと言った。
何が心配いらないのか全然分からない。
森を出ると地面にアニメやゲームでよく見るような魔法陣が描かれていた。
あ、これは絶対この上に乗ってどこかに移動するパターンだ。
「さあ、陛下。この陣の中央へ…。」
ほら当たった。言われた通り魔法陣の中心に立つと、周りをまた男達が
SPのように固めてきた。すごくむさ苦しい。
「これから陛下がお住まいになる城へ移動します。
到着しましたら、まずはお召し物をお着替えになった方が宜しいかと。」
中年に言われて気付いたが、よく見れば俺の一張羅は土と霜でドロドロだった。
森の中で二度寝したから当然か。
「ええ。そうします。」
「分かりました。…始めろ。」
中年の合図で足元の魔法陣が光り出した。全身が光に包まれると、なんだか
覚えのある浮遊感。ああそうだ、エレベーターだ。
眩しくて閉じていた目を開けると、そこにはいかにもここに
魔王住んでます、といった感じのおどろおどろしい城があった。
月明かりも無く松明の明かりだけでは暗くてよく見えないが
かなり大きい城だろう。
「こちらが陛下の居城、ケリドウェン城です。さあ、こちらへ。」
案内されるまま城に入り、やけに暗い廊下を歩く。
この城、電気通ってないんだろうか。
暗すぎて俺の周りのSPの足を何回か踏みながら階段を登り
五メートルはありそうな大きな扉の前に到着した。
扉には悪そうな顔をしたドラゴンの頭の飾りがついている。悪趣味だ。
「こちらが陛下の寝室です。湯殿は御部屋に入り、左手奥になります。
私はこちらでお待ちしておりますので、ご準備出来ましたら
お声掛け下さい。」
「はい。ありがとうございます。」
中年に礼を言って扉を開ける。
と、今までの暗さが嘘のような明るさに思わず目を細める。
明かりに段々目が慣れてきたので辺りを見回すと、まとめサイトで見た
海外の高級ホテルの様な内装。床には毛足の長い絨毯に高そうな家具。
ベッドには天蓋まで付いていた。
あまりの豪華さになんだか笑えてきた。薄笑いを浮かべていると
この豪華な部屋の中で自分の格好のみすぼらしさがなんだか恥ずかしくなり
早々に浴室へ向かう。
浴室も広くて、銭湯の風呂くらいの大きさだった。
湯加減も丁度良くて、これだけの広さの風呂を独り占めできるなんて
死んでよかったかもしれない、なんて考えて湯船に浸かりながら
俺はまた少し笑った。
中年をあまり待たせるのも忍びないので早めに上がり、脱衣所に
用意されていた服を着る。
用意されていたのは中世ヨーロッパの貴族が着てそうな
やたらとふりふりがついた真っ黒な服。特に襟と袖と胸元には
盛大にふりふりがくっつけられていて、ちょっと成人男性として
これを着るのは恥ずかしい。
他に服も無いので渋々着てみると、やけにピッタリした作りになっていて
体のラインが丸わかりだ。週一くらいでジムに通っていたので
見られて困るほどだらしない体をしているという訳じゃないが
恥ずかしいことには変わりない。
ちなみになぜか下着はなかったのでノーパンでピチピチのズボンを
履いている。これが一番恥ずかしい。大分尻に食い込んでいる気がする。
暫く尻の違和感と戦っていたが、もうどうにもならないので諦めて
スーツのポケットに入れっぱなしになっていた指輪を
懐の内ポケットにしまった。せっかく買ったのに、きっとこれから先
誰にも渡すことはないだろう指輪。
いっそ捨ててしまおうかと思ったが、なぜかできなかった。
情けない。未練たらしい。なんて馬鹿なんだ。
指輪を見つめていると良くない感情に引っ張られそうで
俺は頭を軽く振り、ドアを開けて中年に声をかけた。
「あの…準備できました。」
「…………!!陛下……!ああ…なんと麗しい…!!」
ふりふりピチピチの俺を見て中年が跪いた。恥ずかしいからやめてほしい。
中年の他にも俺を待っていた男達がいたらしく、そいつらまで
跪いて俺を褒めている。やめてほしい。
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