ekleipsis

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一章

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騒がしかった周りが、張り詰めたように静かになった。
よく見れば俺たちが入っている円の他にも、結構な大きさの円が
床に何個かできていた。
その中にはさっきの水色の髪のイケメンが入っている円もあった。

「……ああそれと、この円の外側には結界が張られている。
 安心して良い。」

「……そりゃいーや。」

喋りながらもルミの周りに浮かんでいた光の塊が、どんどん数を増して
ものすごい数になっていた。

「行くぞ。」

場に似合わない少女の様な笑みを浮かべ、高く上げた右手を
俺の方へ振り下ろす。
その瞬間、光の塊たちはまるで銃弾の雨のように俺めがけて飛んできた。

おいおい、いきなり本気すぎだろ!
床に引かれた円はまあまあの広さがあるが、それでもこの光の塊全部を避けるには
狭すぎる。
魔力無しで戦う気だったが、さっそく力を使うことになった。

ああ言うだけあって結構強いな、ルミ。
くそお、俺もちょっと楽しくなってきてしまった。
つい笑みがこぼれてしまった口元を右手の平で覆い、頭の中で念じる。

『全てを飲み込め』

最初の位置から一歩も動いていない俺の足元から
黒い炎が燃え上がるように広がり、結界が張られている円の内側全てを
飲み込むように闇が広がる。
光の塊は全て消えた。見えるのは闇の中で光るルミの姿と俺だけだ。

「……こんなにも愉悦を覚えた事は、未だ嘗て無かった。」

「そりゃ良かったな。」

「ずっと待っていた。……君だったんだな。」

「……?」

さっきも言ってたような気がするけど、何を待ってたんだろうか。
まあそれは良いとして早々に終わらせないと。

「じゃ、今度は俺の番な。」

左手をルミの方へかざす。この魔法なら多分、最悪気を失わせるくらいで済む。

『エクレプセス』

瞬間、俺の背後からまた燃え上がるような闇。
それら全てが合わさり、巨大な黒い手のような形をとって
ルミへと覆い被さる。光は消えたように思えた。

「……ふふ、君も少しは本気を出してくれた様で、嬉しいぞ。」

ルミの声と共に、凄まじい光に照らされて黒い手は消滅した。
おお、やるな。ーーでも。

「……!」

光に消されたかに見えた黒い手は、地面からくすぶる炎のように
ルミの周りに広がり、また手の形をとる。
この技は消される程に強く、より濃く深い闇になって蘇るという
なんとも俺好みの術だ。
倒されても倒されても何度でも立ち上がる、まるでヒーローみたいで
かっこいいだろ?
まあ俺は闇属性だからヒーローってよりラスボスか?

不意を突かれたからか、一瞬の遅れを見せるルミ。
その隙に何本もの手になった闇達がルミの体に絡みつく。

「んっ……、ぁ、……」

苦しそうな声を上げるルミ。また顔赤くなってるけど、やっぱ人相手だと
威力が強すぎるみたいだな。
ちなみにこの術は相手を捕えてからもすごい。
そのまま相手の体力を吸収したり眠らせたり一種の幻覚を見せたりすることも
できちゃったりする、なんとも反則な術なのだ。
いやあー、習得に苦労したんだぜこれ。でもその分とっても使える魔法だ。

「ど?これは一撃入れたってことになるだろ?」

「は、まだ、まだだ……。」

「ふうん、まだ駄目?じゃあこっちのがいい?」

「ああっ……!」

ちょっと締め付けつつ、少しだけ体力吸収をしてみる。
なんかさっきから術かけられてるっつーのに、やけに気持ち良さそうな
顔と声出してるけどコイツ大丈夫か?
別の意味で心配になるぞ。

「っ、ん……、あ、ん……っ」

背中を反らせてビクビクしているルミ。おっと、これ以上やると流石にやばい。
体力吸収はやりすぎると生命力全てを吸い上げ、命を奪ってしまうのだ。
狩りの時はとっても便利だけどな。

「はい、おしまい。」

全ての魔法を解く。
闇がまた俺の元へ戻ってくるのを感じながら
明るくなった周囲を見回す。
……あ、あれ?なんか円の外側にいる奴らの様子が……。

顔を真っ赤にしてるやつに中腰のやつ、もぞもぞと居心地悪そうにしてるやつ
円の結界に耳を当てているやつなど様々だ。

「……どうしたんだ、アンタら。」

不思議に思って聞くと、一瞬の間を置いてまた雄叫びが上がった。
さっきまでとは違い「よくもルミエラ様を!」だの「変態!破廉恥!」だの
「目隠ししてふしだらなことを!」だの、なにやら聞き捨てならないセリフが
混じっている。
待ってくれ、なんか大分ひどい誤解が生まれてるみたいだぞ……。

「おい、俺は別に……。」

俺の声は雄叫びにかき消されて誰も聞いちゃいねえ。あーあ、今日は散々だな。
雄叫びが自然におさまるまで待つか、と静観を決め込もうとした時。

「……静かにしろ。」

決して大きな声ではないのによく響くルミの声。
その声でまた辺りは静寂に包まれた。
すっかり忘れていたルミの方を向けば、さっきまでとは打って変わって
きりっとした顔になっていた。

「ニュクス・コラセイ君。勝利条件である『私に攻撃を当てる』をクリアした為
 この学園への入学を認める。勿論罰則については不問だ。
 ーーようこそ、バトゥス学園へ。」

凛々しい笑顔で俺の方を見るルミ。
なんだか大きな誤解は解けないままだが、これで俺は学園へ入れるらしい。

「あ、ああ。よろしく。あと周りのやつらの誤解解いてくれ。」

「……私と君の神聖なる闘争を、汚れた目でしか見られぬ者など
 放っておけば良い。」

そう言って初めて見せたルミの冷たい目が、周囲をぐるりと見回す。
みんなビクリと体を強ばらせた。
でも原因作ったのアンタだぞ、とは言わないでおこう……。

「入学式は明日。引率のビエント先生から聞いていると思うが
 この学園は全寮制なので、必要な荷物は全て持ってくるように。
 制服や教科書等は今日支給されるので、帰る前に私と一緒に来てくれ。」

「……えっ!?ここって、全寮制なのか!?」

今日一番の驚きである。さっきまでの冷たい目から一変、
うるうるの目をこちらに向けながら色々説明していたルミには悪いが
全寮制の驚きで他のことが頭に入らなかった。

「そうだ。……ビエント先生から説明は無かったのか?」

「無かった……。」

目に見えてしょぼくれた俺に近寄り、いたわるような声を出すルミ。
そんなあ……聞いてないぞ全寮制なんて。
なんで俺がこんなに全寮制を嫌がってるかって、それは俺の属性と俺の性格に
関係がある。
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