ekleipsis

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一章

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せっかくいい感じに騒いでてくれた他の奴らも
また一瞬にして静かになってしまった。
もう駄目か、弁償か?金無いって言ってるのに
これじゃSH制度使わなくてもジリ貧になっちまうじゃねーか。

もはや諦めの境地といった感じで遠くを見つめる俺の横で
おっさんが驚き通り越して泣きそうな顔になっている。
ああー……すまん、おっさん。こんな高そうなもんぶっ壊して。

「あの、……これ弁償?」

言ってから、しまった、先に謝るべきだったか。と、ちょっと後悔。
一番気がかりなことで頭がいっぱいでそれ以外がすっぽり抜けてしまっていた。

「………………。」

「あのー、ちょっと?」

おっさん、驚きすぎてもう声も出せないのか。ああもう駄目だこれ。
腎臓の一つや二つ売ることになるのか。嫌だ、嫌過ぎる。

「……君の属性は、闇なのか?」

今後の俺の体の行く末を思い、目を閉じ走馬灯が流れ出した頃
凛とした声が聞こえた。
声の主は先ほど赤面していた美人イケメンだ。

「ああ、そうだけど……。それよりこれ弁償?」

肯定した瞬間、イケメンの顔が……その、この表現は
間違っているのかもしれないが、初恋の彼を見つけた少女のように
頬を赤らめ、ふわあ……っと笑顔になった。

「ずっと……ずっと、待っていた……。この時を。」

頬をピンクにしてうるうるの目で俺を熱く見つめてくるイケメン。
さっきからこのイケメンはどうしちゃったんだ?
後ろで上がりまくっている歓声と雄叫びはもう気にしないことにした。
取り敢えず弁償なのかそうでないのかだけ誰でもいいから教えてくれ。

「勿論、君が弁償などする必要は無い。」

「……そうなのか?はぁ……良かったあ……。」

イケメンは急にキリッとした顔になり、弁償しなくていいと教えてくれた。
ああー!本当に良かった。俺の腎臓は体にくっついたままで良さそうだ。
ほっとして少し力を抜くと、イケメンが高いとこから俺の前に飛び降りてきて
優雅に着地した。

「では、第二の試験を開始しよう。俺と君で……。」

また目うるうるさせてるぞ。しかも俺と君って、なんか完全に違う世界に
入っちゃってるご様子だ。

「……あー、えっと、という訳なのでこれから第二試験を開始しまーす。
 試験内容は弱点属性の相手と楽しくバトル!でーす。
 自分の弱点属性の列に並んで下さいねえ。」

さっきまでこのイケメンがいたところに、なんだか慌てた様子だけど喋り方は
のんびりした水色の髪のイケメンが立っていた。
バトル?弱点属性?
属性が七つあるってことは知っていたが、弱点属性は知らないぞ。
そもそもバトルするのか。
……俺、あんまり人と戦うのは得意じゃないんだが。

「君の属性である『闇』の弱点属性は『光』……そう言われている。」

「ふうん。そうなのか。」

なるほど。でも、やっぱり戦うのはなあ……と、喋りだそうとした瞬間
俺とイケメンの周りを白い光が包み込んだ。
一瞬驚いたが、これはあれだ。てんい魔法だ。
使ったのは隣のイケメンだろう。でもなんで?
考えている暇もなく、さっきの場所から建物の中央に
いつの間にか出来ていた丸い線の中に移動していた。

「試験内容は先程説明があった様に、弱点属性との戦闘だ。
 君の相手は光属性である、この
 ルミエラ・アステロペ・スプレンドールが務めさせてもらう。」

恭しくお辞儀をしたイケメン。
名前が長すぎて覚えられなかった。ルミ…駄目だ。分からん。

「えっと、よろしく。俺はニュクス・コラセイ。ル…ルミ、エ…ル…」

「呼びやすい様に呼んでくれて構わない、ニュクス君。」

「じゃあルミで。」

早速お言葉に甘える。
ルミのとこしかちゃんと覚えてないからこれでいいよな。
と、ルミの方を見ると、これまた正しくはない表現だが
初恋の彼に初めて話し掛けられた少女のような顔をしている。
また頬をピンクにして目をうるうるさせながらふわあっ……と笑った。

「ああ……。それで良い。」

まだうるうるしてる目でこっちを見てくるルミと
後ろの雄叫びを流しつつ、口を開く。

「なあ、俺あんまり人と戦うのは得意じゃないんだが、
 どうしてもやらないとダメなのか?」

「……君は珍しいな。この学園の者は皆、実戦を好むのだが。」

「んんー、実戦は好きなんだけど、俺の力は危ないから
 あんまり人相手に使いたくねえんだ。」

狩りなんか毎日やってるくらいだ、多分ここにいる奴らに
負けず劣らず実戦は大好きだ。
ただそれは相手が人間となれば話は別。
俺の属性はとても危ないのだ。それこそ少し使い方を間違えれば
簡単に命を奪いかねないほどに。

何やらものすごい意気込みを見せているルミには悪いが
魔力は使わずにやるか。

「私の事ならば気にしなくて良い。存分に力を使ってくれ。」

「でもなあ……。」

未だ渋る俺に、ルミはちょっと考えるような顔をして一つ提案。

「……ならば、君のやる気を出す為にこうしようか。
 私に勝てば、君が気にしていた魔力検査具の破壊を不問にしよう。」

「えっ、でもさっき弁償しなくていいって……。」

「弁償はしなくて良い。だが、罰則はある。」

な……なにいーー!?そんなだまし討ちってあるか!?
こいつ、さっきまで真っ赤になってたくせに
案外食えないやつみたいだ……。

「君が負ければ罰則を受けてもらう。
 ……どうだろう。少しはやる気が出たかと思うんだが。」

そう言って、挑発的な表情で俺を見るルミ。
初めて見た時は、なんとなくその外見からあんまり表情変わったりしないのかなと
思ってたけど意外と表情豊かなんだな、こいつ。

「……分かった。魔力は使う。でもケガしても知らねーからな。」

「上等。」

満足って感じの顔をしたルミの雰囲気が一変する。
ルミの周りに、まるで真っ白な鳥の羽みたいな光の塊が浮かび始めた。

「君の勝利条件は、私に一撃でも攻撃を当てる事。
 敗北条件は君の魔力が尽きる事、だ。」

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