この星でいきぬく!

來帝

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被験体-②-

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ザッ・ザツザー・・・ノイズが走る。

《本当にこれで撮れてるのかなぁ・・・?》
カメラ越しに映る誰かの映像・・・

「宇宙航行日誌(S.J-????.??)。やぁ、僕(わたし)!ちゃんと撮れているといいんだけど・・・。今録画しているこの時計(デバイス)は宇宙移民船団から市民へ配布された物で、えーっと。確か市民には常に自分の記録(ログ)をとるように義務付けられてるんだっけ?ねえ、ユキ君合ってるかい?」

「ええ、あってるわよ。移民義務第3項に書かれてたじゃない。全くしっかりしてよね?もう・・・」

ユキと言う名の彼女(ひと)と会話している《僕・私》だが全く記憶にない。この記録(きおく)は何なのだろうか。それに、あの時計(デバイス)は一体---ブツンと音を立てて消えていく記憶(ゆめ)消去25%完了。

「記録開始。宇宙航行日誌(S.J-0104.41)。実験型移民船に乗船するカードがアンケートに答えただけであたった!友人であるユキ君も当たったようだ。この実験型移民船はこの後に本船を離れて人間が棲める星を探す為に出る。すなわち!未知の領域へ行くことができるんだよ!!凄いよね!!おっと・・・言い忘れるところだった僕は支援(サポート)クルーとして、ユキ君は医療(メディカル)クルーとして乗船することになると思う。記録終了。」

実験型移民船・・・支援(サポート)クルー・・・〇〇君医療(メディカル)クルー・・・誰だ、誰かの名前を忘れている。誰なんだ。思い出せない---記憶消去40%完了。

       △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

「この被験体の記憶消去にどれだけ時間がかかっているんだ。もっと早くできないのか?プロジェクトが動いているのは君も知っているだろう」

「はい・・・。それは承知していますが、投薬量も消去スピードもこれ以上は上げれません。もし、あげてしまうと脳にどのような影響が出てしまうかがわかりませんし、下手すると死亡してしまいます。もう少しだけ時間をいただけませんか?」

黒服の男とメディカルクルーの女とが言い争っている中、黒服の男はこう言い放つ。

「時間も予算の内だということを忘れるな!被験体100体の内まだ終わっていないのがこの被験体No.36番だけなんだぞ。投薬している薬も無料(タダ)ではないんだ。No.36だけが終わっていないのは何故なのかすぐに原因を究明して報告しろ。いいな!」

「はい・・・。了解しました。すぐに原因究明にとりかかります。」
不服そうに女は返事をする。彼女もまたプロジェクトに関わり拒否をすれば簡単に消される存在だったのだ。
(なぜ、あの時にあの人を止める事が出来なかったのか、この実験はもうあの時から始まっていたというのに・・・)
女は時計(デバイス)をさすりながらただただ泣いていた。己の弱さとこの宇宙船に選らばれた時に辞退するようあの人へ言うことができなかった後悔と一緒に。

そして、女には投薬されている薬の中身については一切知らされてはいなかった。上からは記憶消去に使う薬とだけ。

この時被験体No.36の記憶消去率は55%に達していた。投薬されている中身がどれだけ恐ろしい物なのかも被験体にはしるよしもない。
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