この星でいきぬく!

來帝

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被験体-③-

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「記憶消去システムに異常はなし、投薬による拒否反応もなし、被験体の脳へ対するストレスも正常範囲内。システムオールグリーンっと。なぜ、No.36だけこんなにも時間がかかるのかがわからないわー」
時計(デバイス)をした女は各項目とシステムを睨めっこしながら眼鏡をかけなおす。

「ひょっとして、この被験体の脳に何かしらの異常があるのではないでしょうか?そうでないと現在あるデータとの整合性が合いません・・・」
同僚の医療(メディカル)クルーがそう呟くとその時-
システム画面に「System error code:F-338」と表示された。

「主任エラーコードはF-338と表示されています!どうしますか!?」
クルーの一人がモニターに気づき主任に報告すると医療クルー全員がざわつき始めたのだ。

「何!!F-338で間違いないのか!!システムを緊急シャットダウン後再起動させシステムスキャンをかけなおしつつ攻性防壁(ファイヤーウォール)の再点検をするんだ!!」
主任と呼ばれた男は各クルーへ的確に指示を出し現場の混乱を鎮めた。主任は冷静沈着なタイプであるがこの瞬間だけは冷や汗をかいてしまったのだ。

【システムエラーコード:F-338】とは外部からのハッキングが行われ基幹システムからメモリ内に至るすべてのデータが破壊(デリート)されそうになった時の非常事態エラーコードなのである。
この時、被験体No.36の記憶消去率は78%に到達しようとしていた。


ザッ、ザッ、ザッザー・・・・
砂嵐(スノーノイズ)が吹き荒れる何かを拒むかのごとく、何人たりとも侵(おか)されまいと足掻く屈強な魂の鼓動のごとく強く決して折れまいとせんと----。

「記録開始。宇宙航行日誌(S.J-0105.38)実験型移民船に乗船してから約2年が経とうとしている。仕事も順調に進んでいるとは言い難いが解析班(アナライズチーム)よりかはまだましだと思う(苦笑。
何でも、未知の領域の一部でいくら観測しても解析できない空間があって躍起になっているらしい。徹夜が続いて倒れる者も出ていると聞く・・・。僕が支援(サポート)クルーでなければ今頃は解析班に回されこき使われているだろうに。そうそう、ユキ君だが医療(メディカル)クルーで出世したと聞いた。
新たに発足される新プロジェクトのメンバーに選ばれたみたいだが、どうも嬉しくなさそうな感じなのだ。今度食事に誘うついでに聞いてみるとしよう。記録終了。」

観測・・・新プロジェクト・・・〇〇君・・・。 記憶消去率91%完了。

フワフワとした何とも言い難い感覚で自分が自分でなくなっていくみだ。とても悲しい、とても嬉しい、とても恐しい、腹の底から怒りがわいてくる。感情がごちゃ混ぜになって消えてゆき真っ白な・・・純白といえばいいのか全てが白へと還る。何も「ない」真っ白な空間へ。

わからない、『僕・私』は誰だ。

『僕・私』の存在は何なのだ。

『・・・・。』

全ては無へと還った。
『記憶消去率100%完了。第二シークエンスへと移行します。』無機物なシステムモニターにはそう表示された。

「ようやく完了したのかね。それで、ここまで作業に時間がかかった理由は何だったのかね?」
黒服は主任と時計(デバイス)をした女へ問いかける。

「はっ。はい、それが-その-・・・原因は依然として不明でして。同時刻にシステムへのハッキングにあい記録(ログ)の一部が消えてしまい。何度もログの解析を試みてもデータの復元ができないのです。」
主任は青ざめた顔で黒服へ報告する。

「ハッキングの件は既に報告を受けている。システムのファイヤーウォールも更に強化した。問題はそこではないのだよ。主任。被験体No.36の記憶消去(デリート)作業が大幅に遅れ尚且つ投薬を予定当初の約16倍にまであげなければいけなかった件についての個人的意見を聞いているのだ。君はどう思うかね?ユキ君」

黒服は時計をした女---ユキへ問いかけた。
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