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第一章 一件目、異世界龍退治
女神なな 俺の折り紙効果で自分の格好をする ついでに俺も
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折り方のバリエーションがたくさんある紙飛行機は実体化できないらしい。
そして今まで実体化させた折り紙と言えば、鶴からグリフォンが作り出され、手裏剣から刀のような刃物が出来た。カメラはデジカメに変化した。
そして今、奴さんから全身鎧が作り出され、それを今ななが身に着けている。
「今すぐ必要な物が折り紙で手に入れることが出来る。それだけで十分だろ? ほかに何かほかの目的を持たせられるって?」
「あったま固いわねー。南君が手慣れた折り紙だと……あぁ、パクパクがあったわね。あれって何て言うの?」
パクパク……あぁ、奴さんの途中で縦横に折り目をつけて、上下左右に開く大きな口のアレか。
パックマンとかパクパクとか、確かに教わった幼稚園の頃はいろんな名前で呼ばれてた。
「口の裏には指を四本入れて動かすアレだろう?」
「うん、まずアレを作ってよ」
そんなもん簡単だ。
……ほい。パクパクの完成だ。それでこの後何するんだ?
「これでモンスターを作る。でももうぐりちゃんがいるから、ぐりちゃんは一旦紙に戻さないとね」
うまい具合に制限があるものだ。
確かに好き放題折って、すべてモンスターにしたら魔獣使いとして有名になっちまう。
世界を混乱に陥れかねないってわけだ。
「悪いな、ぐり。紙に戻ってもらえるか?」
何となく心苦しい。
けどぐりは何の抵抗もなかった。
折り鶴に戻ったその後は、このパクパクをどんなモンスターにするというのか。
「口だけの魔物。いえ、口すらない魔物、スライムにしてもらおうかな。イメージ的にはそこそこ合うと思うんだけど?」
何を考えてるか知らんが、反抗することはないだろう。
地面に放り投げると、軽自動車よりも小さいか?それくらいのスライム一体に変化した。
水色の半透明で、ぷよぷよとしている。
「……お、なんかひんやりして気持ちいいな。名前は……ライムにしよう。スライムのライム。分かりやすい方がいいだろ」
「そのスライムを頭からかぶる。そして私のこれみたいに全身を覆う鎧に変化してもらうの。理論的には出来なくはないかもよ?」
は?!
実体化した姿は仮初ってやつ?!
その発想はなかった!
ななを見ると、またもドヤ顔。
どうも、童顔っぽさが残る女子のその表情は何となく馬鹿にされたように思えるんだが。
ともあれライムに願ってみると、ななの鎧に似た感じのデザインの鎧に変化した。
「お揃いって感じがしないでもないが……これじゃ女神のコスプレって言うコンセプトが薄くなっちまうな」
そんなことを口にしたが、冷静に考えてみると、俺、三十目前だぜ?
そんな男が見た目十代後半の女子にドヤ顔されて、しかも女神さんに指名されて手伝いさせられて、しかも異世界にいて、特別な力を持ってるなんて言われてその気になって、その力操って、モンスター使役して、鎧を身に着けて平然としてるなんて、中二病にもほどがあるだろ、これ。
つーか、納税者だぜ? この年でそんなこと言われたくはねーぞ?!
「よし、準備も整ったところで、出発するわよ!」
「どこへだよ?! 何しに行くんだよ?!」
あ?!
俺、何か変な事言ったか?!
何呆れてやがる!
「だから、ここから近い繁華街の酒場に行って情報収集って言ったでしょうが。一応そのデジカメも持って行ってね。その中身、信じてもらえるかどうかは別だし誰かに見せるかどうかも分からないけど念のためね」
あぁ、そうか。そうだったな。
そいじゃ参りますか? 女神様。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
あの丘を降りて最初に馬車を捕まえた場所で、再度馬車を捕まえる。
今度の目的地は近場の酒場ということで、馬車で行くには近すぎるとは言え、初めてここに来たっていう思い付きの理由を御者は信じてくれた。
おかげで手間取らずに到着出来た。
「相変わらず酒場の名前は読めねぇなぁ……」
「問題は中身よ。さ、入るわよ」
酒場に入ると、ドアに設置されたドアベルが鳴る。
中は、あの龍がいる一番近い酒場とは比べ物にならないくらい広い。
客席も七割方埋まっている。
入ると同時に注目を浴びはしなかったが、やはり女神像を模した鎧と顔と髪型で、二度見したり落ち着かない客が増えていく。
俺は口だけ露わにしたフルフェイスマスク付きだったから、俺の顔が注目を浴びるということはなかったはずだが、やはりななの鎧に似たデザインの物を身に着けているせいか、そっちの方を見られることはあった。
「カウンターに行きましょ。一番情報量が多いのは店の人だから」
なるほど。経験者は語る、だな。
いや、店の人間のことじゃなくてななのことだ。
「あー、お嬢さん。ここらの人じゃないね? ナナ神そっくりな格好して、畏れ多さはこれっぼっちも感じてなさそうだからな」
カウンターに座ると、ななが座る俺の反対側の隣にいる客が近寄って話しかけてきた。
すでに酔っぱらって出来上がってるっぽい。
純粋な親切心か下心のあるナンパかの区別はつきにくい。
「ええ。ここには初めて来ました。ナナ神とやらについては全く存じ上げません」
ななの言葉が聞こえた客達は笑い始めた。
笑いながら口々に言う中身を聞けば、ななの言葉の使い方が馬鹿丁寧だということらしい。
「あちこちへこの者と一緒に旅をしている者です。ですのでこのあたりの事情などは全く分からないものでして。邪龍の噂については僅かばかり聞きかじっただけではありますが」
「ならそっちの方には行かない方がいいな。ヤバい噂も聞こえてくるしよ」
マスターが声をかけてくる。
俺たち二人の近くにいる客はみんな常連客らしい。
余計なちょっかいを出させないために口を出してきたようだ。
「女神様がやってきたんなら何でもお見通しだったろうが、どうやらそうじゃないらしいな」
酒場のマスターは、いろんな冒険者や国の役人達から仕入れた、邪龍についての話を聞かせてくれた。
どうやらななの姿に見惚れたらしい周りの常連客も、マスターの話に混ざってきた。
どれもこれも、既に俺達が仕入れた情報や推理推察の結論と重なっていて、目新しい情報はほとんどなかった。
なぜかそれでも、ななは熱心に彼らの話に聞き入っている。
一体どういうつもりか。
まぁおかげで、俺はいろんな汗をかいて水分補給が必要と思ってたからソフトドリンクを注文してちびちびと飲んでたが、それを馬鹿にする酔っぱらいは一人もいなかった。
そして今まで実体化させた折り紙と言えば、鶴からグリフォンが作り出され、手裏剣から刀のような刃物が出来た。カメラはデジカメに変化した。
そして今、奴さんから全身鎧が作り出され、それを今ななが身に着けている。
「今すぐ必要な物が折り紙で手に入れることが出来る。それだけで十分だろ? ほかに何かほかの目的を持たせられるって?」
「あったま固いわねー。南君が手慣れた折り紙だと……あぁ、パクパクがあったわね。あれって何て言うの?」
パクパク……あぁ、奴さんの途中で縦横に折り目をつけて、上下左右に開く大きな口のアレか。
パックマンとかパクパクとか、確かに教わった幼稚園の頃はいろんな名前で呼ばれてた。
「口の裏には指を四本入れて動かすアレだろう?」
「うん、まずアレを作ってよ」
そんなもん簡単だ。
……ほい。パクパクの完成だ。それでこの後何するんだ?
「これでモンスターを作る。でももうぐりちゃんがいるから、ぐりちゃんは一旦紙に戻さないとね」
うまい具合に制限があるものだ。
確かに好き放題折って、すべてモンスターにしたら魔獣使いとして有名になっちまう。
世界を混乱に陥れかねないってわけだ。
「悪いな、ぐり。紙に戻ってもらえるか?」
何となく心苦しい。
けどぐりは何の抵抗もなかった。
折り鶴に戻ったその後は、このパクパクをどんなモンスターにするというのか。
「口だけの魔物。いえ、口すらない魔物、スライムにしてもらおうかな。イメージ的にはそこそこ合うと思うんだけど?」
何を考えてるか知らんが、反抗することはないだろう。
地面に放り投げると、軽自動車よりも小さいか?それくらいのスライム一体に変化した。
水色の半透明で、ぷよぷよとしている。
「……お、なんかひんやりして気持ちいいな。名前は……ライムにしよう。スライムのライム。分かりやすい方がいいだろ」
「そのスライムを頭からかぶる。そして私のこれみたいに全身を覆う鎧に変化してもらうの。理論的には出来なくはないかもよ?」
は?!
実体化した姿は仮初ってやつ?!
その発想はなかった!
ななを見ると、またもドヤ顔。
どうも、童顔っぽさが残る女子のその表情は何となく馬鹿にされたように思えるんだが。
ともあれライムに願ってみると、ななの鎧に似た感じのデザインの鎧に変化した。
「お揃いって感じがしないでもないが……これじゃ女神のコスプレって言うコンセプトが薄くなっちまうな」
そんなことを口にしたが、冷静に考えてみると、俺、三十目前だぜ?
そんな男が見た目十代後半の女子にドヤ顔されて、しかも女神さんに指名されて手伝いさせられて、しかも異世界にいて、特別な力を持ってるなんて言われてその気になって、その力操って、モンスター使役して、鎧を身に着けて平然としてるなんて、中二病にもほどがあるだろ、これ。
つーか、納税者だぜ? この年でそんなこと言われたくはねーぞ?!
「よし、準備も整ったところで、出発するわよ!」
「どこへだよ?! 何しに行くんだよ?!」
あ?!
俺、何か変な事言ったか?!
何呆れてやがる!
「だから、ここから近い繁華街の酒場に行って情報収集って言ったでしょうが。一応そのデジカメも持って行ってね。その中身、信じてもらえるかどうかは別だし誰かに見せるかどうかも分からないけど念のためね」
あぁ、そうか。そうだったな。
そいじゃ参りますか? 女神様。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
あの丘を降りて最初に馬車を捕まえた場所で、再度馬車を捕まえる。
今度の目的地は近場の酒場ということで、馬車で行くには近すぎるとは言え、初めてここに来たっていう思い付きの理由を御者は信じてくれた。
おかげで手間取らずに到着出来た。
「相変わらず酒場の名前は読めねぇなぁ……」
「問題は中身よ。さ、入るわよ」
酒場に入ると、ドアに設置されたドアベルが鳴る。
中は、あの龍がいる一番近い酒場とは比べ物にならないくらい広い。
客席も七割方埋まっている。
入ると同時に注目を浴びはしなかったが、やはり女神像を模した鎧と顔と髪型で、二度見したり落ち着かない客が増えていく。
俺は口だけ露わにしたフルフェイスマスク付きだったから、俺の顔が注目を浴びるということはなかったはずだが、やはりななの鎧に似たデザインの物を身に着けているせいか、そっちの方を見られることはあった。
「カウンターに行きましょ。一番情報量が多いのは店の人だから」
なるほど。経験者は語る、だな。
いや、店の人間のことじゃなくてななのことだ。
「あー、お嬢さん。ここらの人じゃないね? ナナ神そっくりな格好して、畏れ多さはこれっぼっちも感じてなさそうだからな」
カウンターに座ると、ななが座る俺の反対側の隣にいる客が近寄って話しかけてきた。
すでに酔っぱらって出来上がってるっぽい。
純粋な親切心か下心のあるナンパかの区別はつきにくい。
「ええ。ここには初めて来ました。ナナ神とやらについては全く存じ上げません」
ななの言葉が聞こえた客達は笑い始めた。
笑いながら口々に言う中身を聞けば、ななの言葉の使い方が馬鹿丁寧だということらしい。
「あちこちへこの者と一緒に旅をしている者です。ですのでこのあたりの事情などは全く分からないものでして。邪龍の噂については僅かばかり聞きかじっただけではありますが」
「ならそっちの方には行かない方がいいな。ヤバい噂も聞こえてくるしよ」
マスターが声をかけてくる。
俺たち二人の近くにいる客はみんな常連客らしい。
余計なちょっかいを出させないために口を出してきたようだ。
「女神様がやってきたんなら何でもお見通しだったろうが、どうやらそうじゃないらしいな」
酒場のマスターは、いろんな冒険者や国の役人達から仕入れた、邪龍についての話を聞かせてくれた。
どうやらななの姿に見惚れたらしい周りの常連客も、マスターの話に混ざってきた。
どれもこれも、既に俺達が仕入れた情報や推理推察の結論と重なっていて、目新しい情報はほとんどなかった。
なぜかそれでも、ななは熱心に彼らの話に聞き入っている。
一体どういうつもりか。
まぁおかげで、俺はいろんな汗をかいて水分補給が必要と思ってたからソフトドリンクを注文してちびちびと飲んでたが、それを馬鹿にする酔っぱらいは一人もいなかった。
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