この僧侶、女子高生っぽい女神の助手 仕事は異世界派遣業

網野ホウ

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第一章 一件目、異世界龍退治

俺となな 一旦教会に戻り次の予定へ

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 酒場を出た俺とななは、ぐりの背中に乗って現場に向かった。
 近づくにつれ、龍の大きさも姿も次第にはっきり見えてくる。

「湯川駅の建物と同じくらいの大きさか? 大きいだろうが、やっぱあの酒場の町からでも見えはしないな。それよりずっと遠いあの神殿の鳥居からも見えたお前の視力も大したもんだよなー」

 神様に上から目線の言い方も我ながらなんかおかしい話だが。
 時代外れの格好をした女子という見た目だからついそんなことも口に出てしまう。
 高所に慣れるわけがない。が、それを誤魔化すためじゃなく素直な感想が普通に出てくるのは、やはり人間離れした五感を持ってるからだな。

「それと……たしかに氷漬けされてるわね。氷漬けにしてる人達も視認できた。十人くらいはいるかしら?」

 酒場では、そんな術をかける者がいるかもしれないという予測しかできなかった証言を聞いた。
 その情報を確認出来たはいいが、誰かに喋っていい話じゃない。
 そいつらが何者かが分からず、その意図が不明のままでは、俺達がそいつらの仲間と思われかねない。

「お前の見える光景を記録しておけば何かの役には立つと思うんだがなぁ」

「カメラは? 折り紙で作れるよね?」

 スマホの機能にもついてたじゃないか。デジカメだってある。
 日常目にする機会が多いし、何よりぐりを作り出すのを思いついた俺としたことが、ななに先を越されるとは。

「お、おぉ。そう言えば作れたんだよな。風にもあおられないようだし作ってみるか」

 カメラで撮った写真が、この世界でどれだけ信ぴょう性を持たせられるかは疑問だが、まぁ何もないよりはましだ。
 それでもななは、ぐりの飛行速度を遅くするように言ってくる。

「何でまた?」

「下にいる人たちが見上げた時に、不審に思われるのはまずいわよ? 幸いぐりの体は白いから、周りの雲と似た感じで動いたら、いくらかは目を誤魔化せられるんじゃない?」

 隠密活動も楽じゃない。
 だがこんな経験は、おそらくななは数えきれないほどの場数を踏んできてるんだろう。
 ぐりの飛ぶ速さをななの指示通りにする。
 そして折り紙の奴さんからカメラに変形させて完成。ぐりの背中の上にポンと置くとそれは実体化する。

「プリントは出来ないけど撮影したのをそのまま見れるデジカメにした。……あぁ、確かに人らしき姿はあるな。七……八人くらいか?」

 龍からかなり離れながらも大体等間隔で、取り囲むような位置で彼らは佇んでいる。
 もっとも全員が同じ目的でそこにいるかどうかは分からない。

「うん、今のところ誰もこっちを見向きもしない。龍の姿も撮影できる?」

「おぅ。……これ……龍って……石の彫刻みたいにも見えなくはないな……」

 古代生物の恐竜の姿に似た物が山脈の中腹にいる。
 その龍は左半身を晒して、まるで眠っているような顔で凍っていた。

「でも、生き物というより南君の言う通り、石でできてるって感じよね」

 現場の全体を撮り、そこにいる人や龍もその一部を拡大させたり全体が入るまで縮小させたりして、何度もシャッターを切った。

「さて、スタート地点に戻りましょっか。どう処理すればいいか大体分かったし、あとはお願いを聞き届ける私達と、問題の元凶との関連を、お願いしてきた住民達に分かってもらう作戦考えなきゃ」

 やけにあっさりと用件が済んだな。
 まあすぐに返れるのは有り難い。
 って言うか、助かった!

 やっぱり高い所は苦手なんだよ!

 ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※

 そこからまた例の鳥居の所に戻ってきた。
 嫌な汗をかいている。
 おまけにまたも陸酔いというやつか、足元がふらついている。

 俺がななと出会った場所は、俺の近所の神社の社の中。
 この世界で、それに当てはまると思われる神殿が鳥居の奥にある。
 しかしななは「教会って呼んでたわね」と、前に来た時のことを思い出してた。

「まぁあの神社と同じでね、私の家と融合させとけば誰からも見られずに出入りできるよ」

 不審者の通報をされずに済むのはいいが、この後はどう動くのか。
 退治してくれって願い事が来てるんじゃなかったのか?

「しかしあんなでかいやつをどうしろと? つーか、あれ、ほんとに暴れてたのか? 龍の石像って言われりゃ、へーそうなのかって信じられるレベルだぞ」

 彫刻とはいったが、石を恐竜みたいな感じに積み上げて、細かい、例えば鱗だとか爪だとかを丁寧に削っていったような感じの像。
 背中に翼がついていたが、その翼を使って空を飛んだなんていう話はなかったな。

「私も普通の生き物だと思ってたからどう対処しようか考えてたんだけど、南君の言う通り石像よね。ならもう見当は出来てる。でも問題は解決した後にあるのよ。『心配しなくていいですよー』って言いふらしてそれを信じてもらえるかどうかなのよね」

 確かにそうだ。
 安心できる状態になっても、その世界に住む人たちが疑心暗鬼のままだったら事件解決したとは言い難い。
 ななが本物の神様だってことを分かってもらえるなら一番手っ取り早いんだろうが。

「……つまりこの世界でもななは女神様って拝まれてんだよな?」

「まあそうね」

「その女神像はないのか?」

 この世界のななの姿はどんなのかは分からない。
 まさかこの世界でも、そんな着物が……通用するわきゃないか。
 通用してたらあの酒場で、一言でも話題に上がってたはずだろ?

「時間も時間だしいっか。とりあえずうちを出て、この世界の教会の中に行ってみましょ」

 時間も時間って何の時間のことなのか。
 まぁいいや。
 ななの言う通りに従うしかないか。

 教会の中は、神社のような高床ではなく、地面は石畳。
 西洋の宗教の教会には行ったことはないが、多分それに似た構造だろう。

「へぇ。鎧をまとって兜をかぶって……さながら戦乙女って感じだな」

 ちょっとだけ心が揺らいだ。
 格好良さに勇ましさ、そして美しさが兼ね備えているようなその像。
 俺の隣で、俺の言葉を聞いてドヤ顔している人物、いや、女神様がそのモデルってわけだ。
 ってことはだ。

「ん? また折り紙? 今度は何折るの?」

「奴さん作って、それがこれと同じ鎧に変わってくれねぇかなってな」

「だめよ、それ。女神のコスプレしてる人としか見られないわよ」

 コスプレなんて言葉、どこで覚えたよ?

「だがあの酒場の用心棒二人の装備を見れば、今の格好よりは受け入れてもらえるとは思うぞ? 怪しまれるより、度が過ぎた悪ふざけならごめんなさいの一言で切り抜けられる分まだましだろ?」

 俺もななのことは言えないが、この世界じゃちょっと異端っぽい感じがしないでもない。

「まぁそれも一理あるけどさ……」

「……女神像そっくりじゃねぇか。こっちの方が眼福だな」

「そりゃそうでしょうよ。こっちが本物だもの」

 思った通り、作った折り紙から全身鎧が出来上がった。
 ななは気が乗らなそうに鎧一式を身につけたが、俺はつい本音を出しちまった。
 だが、ななの言う「時間も時間だし」って一言が気になった。

「いつまでもここに居続けたって意味ないでしょ? 聞き取りって訳にはいかないけど、噂話に聞き耳を立てるくらいなら許されるんじゃない? 予備知識がなきゃ噂話聞いても意味が分からないままだったしね。時間ってのは、あそこみたいに酒場で話を聞くことが出来る時間じゃないのかなってことよ」

 なるほどね。
 だが俺がこの格好のままだったら、せっかく見栄えのいいななの姿が意味をなさなくなる。
 この世界に住む者達から警戒されないための、ななに付けさせた鎧なんだからな。

「ひょっとしてさぁ……。こんな風に身に纏える物って、そういう道具ばかりとは限らないんじゃない?」

 なながいきなり訳の分からないことを言い出し、俺はそれを瞬時に理解できなかった。
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