この僧侶、女子高生っぽい女神の助手 仕事は異世界派遣業

網野ホウ

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第一章 一件目、異世界龍退治

幽霊二人 何とか現場聞き取り調査を終える

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 案内された酒場、確かに連日にぎわってる雰囲気は全く感じねぇ。
 いや、案内されるまでの道中、町中も人の気配がほとんどなかったな。
 寂れた町。まさしくそれだ。

「さて、ルイセイ町へようこそ。そしてロック亭へようこそ、ときたもんだ。おれはこの酒場と宿屋の主、ザイナーってんだ。この二人は常連客兼用心棒。ユーゴーとマッス」

「知らなかったとはいえ、さっきは悪いことしちまったな、すまん。ユーゴーだ」

「俺がマッスだ。よろしくな、幽霊サン」

 なるほどな。道理でこの眼鏡に顎髭のオッサンはそれなりの武装をしている二人に比べて軽装だと思った。
 それよりも軽々しい恰好の俺が言うのもなんだがな。

 それからはこの三人から聞ける話はすべて聞けた。

 始まりは一か月前。
 どこかからかやってきたというのではなく、そこで生まれ育ち大きくなったというのでもなく、突然その龍はあの山の麓に現れた。
 火のようなものを吐き出し、龍の目の前にある麓のラナミー村と龍の頭が向いている西方向の隣村のナイマー村は壊滅。ラナミー村の南の隣町、ニャワーの中心部も全壊。
 龍はずっとその場から一歩も動かないままだったが、何日か置いて火を吐くこと数度。麓沿いの森林は火事が起きる。
 二回目以降のその龍の暴虐では人名は失われることはなかったが、邪龍退治のために動いたこの国は、二次被害、三次被害を回避することを優先した軍の活動は、龍が引き起こした大規模な火災に手を付けることすらできず、その大火災にも燃えるに任せるしかなかった。
 結果としては、分厚い氷に覆われて動かないままでいるその龍は、当時はいつ動くか分からなかったため、近隣の町村の住民は龍から遠ざかるように避難する。
 このルイセイ町は現場から町村二つしか隔てていない。その数の上では少ないが、面積が広いため比較的距離がある位置。
 避難先や引っ越し先がない者達は、危険がいつやってくるかは分からなかったが、それでもこの街に留まらざるを得なかった。

「……で、いつの間にか何人かの魔術師らしい者が現れて、邪龍を氷漬けにしてたってわけだ」

「その姿は誰も見てねぇが、そうでもなきゃあんな巨体を氷漬けに出来ねぇよ」

 用心棒の二人がそんなことを言って、俺達の聞きたい話を締めた。
 巨体とは言うが、具体的な大きさははっきりとは分からないし、哺乳類っぽいのか爬虫類っぽいのかも分からない。
 そもそも距離感が違う。
 俺が済む湯川市から二つの町や村を越えると隣の市になる。
 車で三十分くらいで到着する距離だ。
 徒歩だけでどれくらいかかるだろうか。一日いっぱいかかるかもしれない。
 だがこの世界では馬車でその現場に向かうには、ここからは一日以上かかるらしい。

「貴重なお話し、有り難うございました。私達、もう少し調べてみます」

「ちょいと待った」

 酒場を出ようとする俺達に主のザイナーが呼び止めた。
 特に不審な点はないはずだ。
 敵意を持ってるつもりもないし、いきなり襲撃を受けるような荒々しい場所とも思えないんだが。

「ミナミとナナっつったか? 名前はそれしか知らねぇし、見たこともねぇ格好だ。おまけに幽霊と名乗ってる」

 おかしなことはないはずだ。
 何かぼろを出しちまったか?

「幽霊に知り合いはいねぇし、あんたら二人の顔も見たこたぁねぇ。これからあんたらがどこに行くのかは知らねぇが、結局のところあんたらは幽霊だ。金を持ってなきゃ飲み食いの必要もねぇ」

 それはここに入る前に伝えたことだ。それが?

「だからこの先あんたらにどんなことが起こっても、助けに行くにも行きようがねぇ。幽霊なんだから元々死んでるわけだしな。それと今はここにはほとんど客は来ねぇ。だからといって、わざわざ俺達が危険な場所に足を運ぶなんてことは絶対にねぇし、あんたらから助けを求められても助ける義理もねぇ」

「それはもちろん、あなたの言う通りね」

「助言だって同じこと。そっちに行くなともこっちへ行くべきとも言わねぇ。勝手にしな、なんてことすら言わねぇし、あんたらが去った後であんたらがここにいたかどうかも分からなくなることもあるだろうよ。あんたらはただ座ってただけだからな」

 俺達が聞いた話も考えてみりゃ、この三人でなくても知ってる内容だろう。
 つまり俺らがここにきてこの三人と話をした。面識は出来たがこの場限りのことで、誰かが俺らのことをここに聞きに来ても、そんなことは一切なかったと言い切ってくれるってこと。
 つまり互いに無関係でいましょうねってことだ。
 こっちも時期にこの世界から去る存在だし、そういう関係は有り難い。

「ま、ここに来たのは幽霊だしな。誰か来たかと聞かれた時にゃ、幽霊が来たなんて言えるわけもねぇし」

 それもそうだ。
 見送りのない酒場を出る。
 丁重な見送りをされるほどの大切な客でもない。
 こっちは行きずりの幽霊だ。好き勝手に消え去るさ。
 もっとも出入り口から立ち去るしか出来ないけどな。

「さて……ここからどうするよ? なな」

「もちろん北風山脈とやらに行くわよ。もっとも様子を見るだけで引き返すから。私だって危ないとこに好き好んで首突っ込むつもりはないし、見ることでしか分からないことを見ればそれでいいからね」

 こっちは女神様だろうに。
 ちょいとひねる程度で退治できるならさっさと済ませてこっちの世界に戻るのが一番手っ取り早い。
 まぁこっちはお手伝いの立場だし、しばらくはななの指示通りに動きますかねっと。

「さ、ぐりちゃん、あの山脈に向かって飛んでくれないかしら?」

 俺が背中に乗ったのを見て、ぐりの上からななが声をかけてる。
 人懐こい態度は相変わらずだがちと度が行き過ぎてる気がする。
 ななと遊びたがって、なかなか背中に乗せようとしなかったもんな。
 俺はすぐに背中に乗せてくれたが。
 ようやくななもぐりの背中に乗れたはいいが、その頼み事はスルー。

「あー、ぐりよ、あの山脈に向かって飛んでみてくんねぇか?」

 ぐりは一回頷いて、じゃれようとする態度を一転してゆっくり羽ばたき始めた。

「仲良くしてくれるのはうれしいんだけど、やっぱり言うこと全部聞くのは南君でないとダメかぁ」

 紙だろうが何だろうが、自分がいることの意味や意義を分かってもらえるとちょっとはうれしいもんだ。
 ただ、それに依存しないように注意はしとかないとな。
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