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三波新、放浪編
昔語りはまだ続く 異世界で出会った人とは、何か会話が噛み合わなかった
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得体のしれない魔物。
石造りの部屋に迷路、そして建築物。
死体。
そして大剣を持った剣士。
このキーワードで何を連想する?
俺の脳内では、取り巻く環境がホラー映画からファンタジーものの映画かゲームに変わってしまった。
命の危険がすぐそばにあることには変わりはない。
けれども、安全な場所があることが分かっただけでも、気持ちにかなりの余裕が生まれる。
「あ、あぁ。お、俺は三波新。ミナミでもアラタでも、好きなように呼んでくれ。き、君は?」
「おれはカマロ・健司。大学の授業が終わってさ、図書館で勉強してたんだがうとうとしちまってな。気付いたら薄暗い部屋の中にいた」
俺と同じだ。
っていうか大学生?
まぁ見た目で俺より年下ってのは分かったけど……いや、ちょっと待て。
「大学生? 大学ってあったか?」
「は? いや、数えきれないくらいあるだろ。って、自己紹介よりも、まずこっから離れる方が先だ。あんたは何か武器持ってるのか?」
武器?
何の話だ?
「いや……手ぶらだが……」
「そっちにはなかったのか? 俺んとこにはテーブルに、こいつを使って、知恵と勇気で地上に行けとか何とかって文が刻まれててな」
そう言えばそんな文章があった。
けれど、テーブルの上には何もなかった。
俺が寝てる間に何者かが侵入してきて持っていった?
ってことは、地下の迷宮は一つに続いている?
「ゲームとかでよく見かけるゴブリンみたいな、そんな連中をこいつでバッタバッタと薙ぎ払い」
なんか気持ちよく語り始めたぞ?
っていうか、ゴブリン?
俺もゲームは好きだが、あんなもん、想像の中の世界……とは言い切れないか。
そんな物とは出会っちゃいないが、出てきてもおかしくはない雰囲気だった。
「調子こいてたら、ここに出てくることを忘れちまっててな」
こいつがゲームの中に登場したら、間違いなく狂戦士になるだろうな。。
よく見たら、来ている服に変な模様がついてると思ったら、その返り血とかなんじゃないか?
「けどここ、どこなんだろうな。アラステイト……じゃないよな」
はい?
「……何それ」
「は? 日本の首都知らないの? アラステイト」
「……何を言ってる? 東京都だろ」
「はい? ……荒れるって字にさんずいに州、ミカドって字に都で荒洲帝都。日本帝国の首都だよ」
「待て待て。日本民国だろ。何だよ帝都って」
「いや待て。民国って何だよ。トウキョウ……いや、だからここで言い争いをしてる場合じゃない。えーと……とりあえずあそこに行ってみようか」
奇妙なことを言い出した。
が、会話は成立している以上意思疎通は可能だ。
それに、こいつが指差した神殿っぽいところには人の気配がある。
かなり多い。
「けど迂闊に動くと、地下にいる変な連中に気付かれるかもしれんが」
「あ、アラタは手ぶらだったっけ。心配するな。言い争いをするのは地名だけのようだから、それ以外は守ってやるぜ」
「あー、あと細かいことなんだが」
「ん?」
「おれ、二十七で社会人……職場首になったけどな。一応年上だから……」
「お、おぉ……、悪ィ……。目上の人との会話慣れてねぇんだ。なるべく気を付けるわ、アラタ、さん」
目上の人と会話する機会がないのか?
ま、まぁそんなやつもいるだろうな。
それより、天からの救いだ。
とりあえず神殿までは安全をキープできた。
──────
「カマロ・ケンジ……あぁ、旗手の人ね。そう言えばあの時も大きな剣持ってたよね。大剣の旗手だったのか。ただの武器かと思ってた」
話の途中でヨウミが割り込む。
思い当たる節が出てくれば、話のすり合わせも必要だろうしな。
「何それ」
「え? 知らないの? 他にも双剣の旗手とか鎧の旗手とか、旗手の人達が持つ特有の装備品とかでそう呼ばれるんだよ」
旗手って呼び方は聞かされてた。
だが何とかの旗手って呼ばれ方をするのは初めて聞いた。
「あれ? でも、と言うことは……アラタも旗手なわけ?」
「俺は凡愚な一般人。そう呼ばれたって何度も説明しなかったっけ?」
「え? あれって説明だったの?!」
「何だと思ったんだよ」
「ただの自虐だと思ってた」
……それでもいいけどさ。
何の取り柄もなかったしな。
「あ、いや、ごめんごめん。その、悪口とかじゃないよ? でもおかしいよ。異世界から召喚された人はみんな旗手になる資格があるって言ってたよ? あ、でも最初は勇者って呼んでたけど、魔物に立ち向かう勇気がない人もいたって言ってたから、本質は変わらないのかな?」
それだと俺がまるで勇気のない人……。
いや、まぁそっちの方が当たってるか。
ビビリだったしな。
「あれ? でもそうなると、あの大剣の人とアラタの二人だけ? あの時カマロって人は他の人達と一緒に来てたよね」
「あぁ。神殿に辿り着いて中に入ったんだが」
とにかく、今いる場所が日本のどこかが分からない。
俺の近所に、ただっ拾い草原の中に神殿がある場所なんてなかったからな。
それにカマロの言ってた帝国とか帝都ってのも気になるし、日本民国なんて国の名前は聞いたことがないと言ってたことも気になった。
とにかくここの人に聞けば、俺の家に戻れる。
と思ってたんだが。
それはともかく。
昔語りの続きに戻る。
─────
その建物は全体的に白い。
観光地か何かか。
歴史的建造物か。
そんなことを呆然と考えてたが、扉が開く音で我に返った。
カマロが扉を開けていた。
「お、おい、勝手に開けて……」
「入るしかないでしょ? ごめんくーださーい」
ついさっきまで命の危険に晒されてた立場の人間が、なんとも軽い挨拶ができるもんだ。
もっとも本人にそんな自覚がなければ、そんな気軽な気持ちにもなるか。
中は、大人数を収容できる礼拝堂といった感じ。
奥の正面に祭壇らしい物があった。
その祭壇の奥に、何やらきらびやかな衣装をまとった男性が一人立っている。
祭壇の手前には、白い衣装を着た人が……二十人くらいいたか。
そして逆に目立つ、まちまちの服装をしているのが六人。
何となく、その六人も俺達と同じ、この世界に迷い込んだ者達って気はした。
石造りの部屋に迷路、そして建築物。
死体。
そして大剣を持った剣士。
このキーワードで何を連想する?
俺の脳内では、取り巻く環境がホラー映画からファンタジーものの映画かゲームに変わってしまった。
命の危険がすぐそばにあることには変わりはない。
けれども、安全な場所があることが分かっただけでも、気持ちにかなりの余裕が生まれる。
「あ、あぁ。お、俺は三波新。ミナミでもアラタでも、好きなように呼んでくれ。き、君は?」
「おれはカマロ・健司。大学の授業が終わってさ、図書館で勉強してたんだがうとうとしちまってな。気付いたら薄暗い部屋の中にいた」
俺と同じだ。
っていうか大学生?
まぁ見た目で俺より年下ってのは分かったけど……いや、ちょっと待て。
「大学生? 大学ってあったか?」
「は? いや、数えきれないくらいあるだろ。って、自己紹介よりも、まずこっから離れる方が先だ。あんたは何か武器持ってるのか?」
武器?
何の話だ?
「いや……手ぶらだが……」
「そっちにはなかったのか? 俺んとこにはテーブルに、こいつを使って、知恵と勇気で地上に行けとか何とかって文が刻まれててな」
そう言えばそんな文章があった。
けれど、テーブルの上には何もなかった。
俺が寝てる間に何者かが侵入してきて持っていった?
ってことは、地下の迷宮は一つに続いている?
「ゲームとかでよく見かけるゴブリンみたいな、そんな連中をこいつでバッタバッタと薙ぎ払い」
なんか気持ちよく語り始めたぞ?
っていうか、ゴブリン?
俺もゲームは好きだが、あんなもん、想像の中の世界……とは言い切れないか。
そんな物とは出会っちゃいないが、出てきてもおかしくはない雰囲気だった。
「調子こいてたら、ここに出てくることを忘れちまっててな」
こいつがゲームの中に登場したら、間違いなく狂戦士になるだろうな。。
よく見たら、来ている服に変な模様がついてると思ったら、その返り血とかなんじゃないか?
「けどここ、どこなんだろうな。アラステイト……じゃないよな」
はい?
「……何それ」
「は? 日本の首都知らないの? アラステイト」
「……何を言ってる? 東京都だろ」
「はい? ……荒れるって字にさんずいに州、ミカドって字に都で荒洲帝都。日本帝国の首都だよ」
「待て待て。日本民国だろ。何だよ帝都って」
「いや待て。民国って何だよ。トウキョウ……いや、だからここで言い争いをしてる場合じゃない。えーと……とりあえずあそこに行ってみようか」
奇妙なことを言い出した。
が、会話は成立している以上意思疎通は可能だ。
それに、こいつが指差した神殿っぽいところには人の気配がある。
かなり多い。
「けど迂闊に動くと、地下にいる変な連中に気付かれるかもしれんが」
「あ、アラタは手ぶらだったっけ。心配するな。言い争いをするのは地名だけのようだから、それ以外は守ってやるぜ」
「あー、あと細かいことなんだが」
「ん?」
「おれ、二十七で社会人……職場首になったけどな。一応年上だから……」
「お、おぉ……、悪ィ……。目上の人との会話慣れてねぇんだ。なるべく気を付けるわ、アラタ、さん」
目上の人と会話する機会がないのか?
ま、まぁそんなやつもいるだろうな。
それより、天からの救いだ。
とりあえず神殿までは安全をキープできた。
──────
「カマロ・ケンジ……あぁ、旗手の人ね。そう言えばあの時も大きな剣持ってたよね。大剣の旗手だったのか。ただの武器かと思ってた」
話の途中でヨウミが割り込む。
思い当たる節が出てくれば、話のすり合わせも必要だろうしな。
「何それ」
「え? 知らないの? 他にも双剣の旗手とか鎧の旗手とか、旗手の人達が持つ特有の装備品とかでそう呼ばれるんだよ」
旗手って呼び方は聞かされてた。
だが何とかの旗手って呼ばれ方をするのは初めて聞いた。
「あれ? でも、と言うことは……アラタも旗手なわけ?」
「俺は凡愚な一般人。そう呼ばれたって何度も説明しなかったっけ?」
「え? あれって説明だったの?!」
「何だと思ったんだよ」
「ただの自虐だと思ってた」
……それでもいいけどさ。
何の取り柄もなかったしな。
「あ、いや、ごめんごめん。その、悪口とかじゃないよ? でもおかしいよ。異世界から召喚された人はみんな旗手になる資格があるって言ってたよ? あ、でも最初は勇者って呼んでたけど、魔物に立ち向かう勇気がない人もいたって言ってたから、本質は変わらないのかな?」
それだと俺がまるで勇気のない人……。
いや、まぁそっちの方が当たってるか。
ビビリだったしな。
「あれ? でもそうなると、あの大剣の人とアラタの二人だけ? あの時カマロって人は他の人達と一緒に来てたよね」
「あぁ。神殿に辿り着いて中に入ったんだが」
とにかく、今いる場所が日本のどこかが分からない。
俺の近所に、ただっ拾い草原の中に神殿がある場所なんてなかったからな。
それにカマロの言ってた帝国とか帝都ってのも気になるし、日本民国なんて国の名前は聞いたことがないと言ってたことも気になった。
とにかくここの人に聞けば、俺の家に戻れる。
と思ってたんだが。
それはともかく。
昔語りの続きに戻る。
─────
その建物は全体的に白い。
観光地か何かか。
歴史的建造物か。
そんなことを呆然と考えてたが、扉が開く音で我に返った。
カマロが扉を開けていた。
「お、おい、勝手に開けて……」
「入るしかないでしょ? ごめんくーださーい」
ついさっきまで命の危険に晒されてた立場の人間が、なんとも軽い挨拶ができるもんだ。
もっとも本人にそんな自覚がなければ、そんな気軽な気持ちにもなるか。
中は、大人数を収容できる礼拝堂といった感じ。
奥の正面に祭壇らしい物があった。
その祭壇の奥に、何やらきらびやかな衣装をまとった男性が一人立っている。
祭壇の手前には、白い衣装を着た人が……二十人くらいいたか。
そして逆に目立つ、まちまちの服装をしているのが六人。
何となく、その六人も俺達と同じ、この世界に迷い込んだ者達って気はした。
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