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三波新、定住編
おにぎりの店へは何をしに? その2
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行商時代からの常連の一組だったゲンオウとメーナムが来たのは数日前。
おにぎりと飲み物のセットを買って、モーナーが掘り続けているダンジョンに潜っていった。
戻ってくるなりまた俺の店に顔を出した。
別にダンジョンの門番でも受付でもない。
一々戻ってきましたっていう報告なんか必要ないんだが。
それだけでもうっとおしいってのに、ほくほく顔したまま不満をたらたら言い出す始末。
「何で魔物が一つも出てこねぇんだよ!」
知らねぇよ。
突然湧いて出てくることもあるっての。
魔力の流れの仕組みをミアーノから聞いたが、別にそれを言う必要もないだろ。
いきなり湧いて出てくるほどの魔力はそこになかったってことなんだろ?
「珍しい鉱物がそこかしこにあったから、結構懐があったかくなるかも」
ほくほく顔の理由はそれか。
まぁ収入が目当てってのも仕事をする理由の一つだ。
けどな。
懐があったかくなるものがあったかい? みたいなことを言わせたいつもりか?
下らねぇ。
「ダンジョンの浅い階層にもたくさんあったけど、あれって初級者用でしょ? 仕事してるモーナーと会えたから、そこから拾ってきちゃった」
最深部まで潜ったってことか。
はなから魔物がいないと分かりゃ辿り着くまでそんなに……。
そんなに?
そんなに時間はかからない?
いや、かかるだろ。
地下四十階だぜ?
降りるのは楽にしても、上るのは大変だ。
ましてや帰るために上るんだから。
どんな建物があるかってば、パッと思い浮かばないが、有名な建物の一つに、東京の池袋にあるよな?
あれ、六十階だよな?
しかもダンジョンの階層一つ一つは、モーナーが楽に入れる高さがある。
その分深く掘られていくから……。
いや、変なところでこいつらの体力に感心してしまった。
そのあと、記憶に残ってないくらいの他愛のない雑談をして、宿屋に向かってから村を出るって言ってたな。
宿屋に一旦戻ったってのは覚えてる。
と言うのも……。
※※※※※ ※※※※※
「かわいいねー」
「猫だよね? ミャーミャー言うし」
「でもカニっぽいよ? 沢蟹みたいにハサミ持ってるもん」
初めて見る子供が店に来た。
冒険者じゃない。
間違いなく年齢は一桁。
同じ顔をしている。双子だな、こりゃ。
ドーセンとこであの二人が、サミーの話をしたのを立ち聞きしてたらしい。
家族連れで外食でもしてたんだな。
俺がこの村に来た時には初級冒険者達しか食いに来てなかった食堂が、今では外食してもらえるほどの評判になったらしい。
米の選別だけでそんなに変わるもんかね? と思ってたんだが……。
「冒険者達がこうも来ないとなると、俺も商売あがったりでな。商売替えしようにも、客が来てくれんことには始まらん」
ということで、メニューを増やしたらしい。
元々冒険者だったドーセンは、現役時代の野営のときに仕事のついでに狩猟で得た獣の肉をオリジナルで調理したところ評判が高かったんだと。
戦闘能力はそれなりに高かったらしいが、そっちの腕前は自覚してなかったようだがそれよりも高かったとか何とか。
それがネックになったらしい。
戦闘能力は当てにならん、という風評被害を受けてやむなく引退。
まあ経緯はもっと複雑だったらしいが。
現役の経験から、宿屋を営業しようと思い立ったらしいが、その風評被害が意外としぶとい。
なら噂がほとんどやってこない生まれ故郷でやってみようってことらしいんだな。
けど「ここは食堂じゃねぇ!」なんて文句を言ってきたこともあったが……。
でもドーセンのそんな過去話を思い返せば、冒険者達の舌をうならせる腕前であって、家族連れの客に受けるかどうかは別ってことだったんだな。
支払いは即現金だからいいじゃねぇかとは思うんだが、そこら辺はいろいろ思うところもあるんだろうな。
話が逸れたか。
まぁそれでサミーの話を聞いて、学校が休みの今日、遊びに来てみたらしい。
村の端、しかも魔物の行動範囲に近い所に、村人が好んで来るはずもない。
来なきゃ噂も生まれない。
珍しい可愛い魔物がいる、とでも聞いたんだろう。
「サミーちゃんって言うの?」
「おじちゃん、お外で一緒に遊んでもいい?」
子育てってもんでもないが、まぁ似たようなものだ。
生まれてから一ヶ月。
生まれてばかりの頃は俺にべったりで離れられずにいたが、同じ毛深い者同士ということで、いつも毛づくろいしていたテンちゃんに懐くようになった。
一緒にいる時間が、俺の次に長いはずのヨウミにはなかなか懐かなかったのは、やはりスキンシップの時間がほとんどなかったからか。
見たことがない種族ということで、体を撫でるのが精一杯な感があった。
それに比べてマッキーとクリマーは抱っこしたり抱きしめたりするほどの溺愛ぶり。
この二人にはサミーはまんざらでもなかったが、体中に絡みついてくるライムには辟易してた感じだった。
うっとうしくてしょうがなかったんだろう。
見ていた俺ですらうんざりするくらい。
そんなこんなで他人にも慣れてきたのか、接する時間が飯時しかないミアーノとンーゴにも関心を持つようになった。
二人もサミーからの接触に構い、それなりに仲良くなっている。
けれど、結局は誰もが身内。
村人とまだ接触してない俺が言うのも何だが、部外者との交流も必要なかも分からん、と思ったりもする。
「外ってどこよ?」
「田んぼのはじっこ」
村人どころか、俺ですら危険な場所に行かれても困る。
が、流石にそれは疑いすぎだった。
だが問題が起きた。
問題は、その場所じゃなかった。
おにぎりと飲み物のセットを買って、モーナーが掘り続けているダンジョンに潜っていった。
戻ってくるなりまた俺の店に顔を出した。
別にダンジョンの門番でも受付でもない。
一々戻ってきましたっていう報告なんか必要ないんだが。
それだけでもうっとおしいってのに、ほくほく顔したまま不満をたらたら言い出す始末。
「何で魔物が一つも出てこねぇんだよ!」
知らねぇよ。
突然湧いて出てくることもあるっての。
魔力の流れの仕組みをミアーノから聞いたが、別にそれを言う必要もないだろ。
いきなり湧いて出てくるほどの魔力はそこになかったってことなんだろ?
「珍しい鉱物がそこかしこにあったから、結構懐があったかくなるかも」
ほくほく顔の理由はそれか。
まぁ収入が目当てってのも仕事をする理由の一つだ。
けどな。
懐があったかくなるものがあったかい? みたいなことを言わせたいつもりか?
下らねぇ。
「ダンジョンの浅い階層にもたくさんあったけど、あれって初級者用でしょ? 仕事してるモーナーと会えたから、そこから拾ってきちゃった」
最深部まで潜ったってことか。
はなから魔物がいないと分かりゃ辿り着くまでそんなに……。
そんなに?
そんなに時間はかからない?
いや、かかるだろ。
地下四十階だぜ?
降りるのは楽にしても、上るのは大変だ。
ましてや帰るために上るんだから。
どんな建物があるかってば、パッと思い浮かばないが、有名な建物の一つに、東京の池袋にあるよな?
あれ、六十階だよな?
しかもダンジョンの階層一つ一つは、モーナーが楽に入れる高さがある。
その分深く掘られていくから……。
いや、変なところでこいつらの体力に感心してしまった。
そのあと、記憶に残ってないくらいの他愛のない雑談をして、宿屋に向かってから村を出るって言ってたな。
宿屋に一旦戻ったってのは覚えてる。
と言うのも……。
※※※※※ ※※※※※
「かわいいねー」
「猫だよね? ミャーミャー言うし」
「でもカニっぽいよ? 沢蟹みたいにハサミ持ってるもん」
初めて見る子供が店に来た。
冒険者じゃない。
間違いなく年齢は一桁。
同じ顔をしている。双子だな、こりゃ。
ドーセンとこであの二人が、サミーの話をしたのを立ち聞きしてたらしい。
家族連れで外食でもしてたんだな。
俺がこの村に来た時には初級冒険者達しか食いに来てなかった食堂が、今では外食してもらえるほどの評判になったらしい。
米の選別だけでそんなに変わるもんかね? と思ってたんだが……。
「冒険者達がこうも来ないとなると、俺も商売あがったりでな。商売替えしようにも、客が来てくれんことには始まらん」
ということで、メニューを増やしたらしい。
元々冒険者だったドーセンは、現役時代の野営のときに仕事のついでに狩猟で得た獣の肉をオリジナルで調理したところ評判が高かったんだと。
戦闘能力はそれなりに高かったらしいが、そっちの腕前は自覚してなかったようだがそれよりも高かったとか何とか。
それがネックになったらしい。
戦闘能力は当てにならん、という風評被害を受けてやむなく引退。
まあ経緯はもっと複雑だったらしいが。
現役の経験から、宿屋を営業しようと思い立ったらしいが、その風評被害が意外としぶとい。
なら噂がほとんどやってこない生まれ故郷でやってみようってことらしいんだな。
けど「ここは食堂じゃねぇ!」なんて文句を言ってきたこともあったが……。
でもドーセンのそんな過去話を思い返せば、冒険者達の舌をうならせる腕前であって、家族連れの客に受けるかどうかは別ってことだったんだな。
支払いは即現金だからいいじゃねぇかとは思うんだが、そこら辺はいろいろ思うところもあるんだろうな。
話が逸れたか。
まぁそれでサミーの話を聞いて、学校が休みの今日、遊びに来てみたらしい。
村の端、しかも魔物の行動範囲に近い所に、村人が好んで来るはずもない。
来なきゃ噂も生まれない。
珍しい可愛い魔物がいる、とでも聞いたんだろう。
「サミーちゃんって言うの?」
「おじちゃん、お外で一緒に遊んでもいい?」
子育てってもんでもないが、まぁ似たようなものだ。
生まれてから一ヶ月。
生まれてばかりの頃は俺にべったりで離れられずにいたが、同じ毛深い者同士ということで、いつも毛づくろいしていたテンちゃんに懐くようになった。
一緒にいる時間が、俺の次に長いはずのヨウミにはなかなか懐かなかったのは、やはりスキンシップの時間がほとんどなかったからか。
見たことがない種族ということで、体を撫でるのが精一杯な感があった。
それに比べてマッキーとクリマーは抱っこしたり抱きしめたりするほどの溺愛ぶり。
この二人にはサミーはまんざらでもなかったが、体中に絡みついてくるライムには辟易してた感じだった。
うっとうしくてしょうがなかったんだろう。
見ていた俺ですらうんざりするくらい。
そんなこんなで他人にも慣れてきたのか、接する時間が飯時しかないミアーノとンーゴにも関心を持つようになった。
二人もサミーからの接触に構い、それなりに仲良くなっている。
けれど、結局は誰もが身内。
村人とまだ接触してない俺が言うのも何だが、部外者との交流も必要なかも分からん、と思ったりもする。
「外ってどこよ?」
「田んぼのはじっこ」
村人どころか、俺ですら危険な場所に行かれても困る。
が、流石にそれは疑いすぎだった。
だが問題が起きた。
問題は、その場所じゃなかった。
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