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店の日常編
ファンクラブをつくるのはいいが俺を巻き込むな その5
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テンちゃんがいないので、袋は三つ。
もちろん洗米済みの米が目いっぱい押し込まれている。
そして戻ってくるなり、ヨウミからライムと一緒に怒られた。
店番レギュラーのクリマーからも呆れられた。
すぐに洞窟の中に米袋を運び込んだのが間違いだった。
「ゼェ……ゼェ……。ア゛ラ゜ダアァァ! あんたぁ……何逃げてんのよお!」
俺の後ろは壁。
前は般若のような顔のヨウミ。
逃げられねぇよ。
怖ぇよ。
何だよその地の底から出るような声はっ!
「しょうがないだろ。魔物が襲ってくる修羅場なら身を盾にしてても何とかできるかもしれんが……それって、お前とそいつの間での問題だろ?」
「あぁ? 逆ギレか? 逆ギレなのか?! 助けを求めるあたしの伸ばした手を振り切って逃げてさあっ!」
「いや、キレてないだろ。キレてるのはお前だけだからっ。大体、助けを求める先が違ぇだろ。何でもかんでも俺に縋るなよ」
その激怒っぷりに、ヨウミを追っかけてたミューとやらも腰が引けてる。
洞窟の入り口に近いってのに、他の客も助けに来ない。
ヨウミの周りに、なんらかの力場が生じてるように見える。
そのエリアに俺だけが引きずり込まれ、脱出不可能の感たっぷりだ。
俺の方こそ誰か助けろよ!
「しょーがないですよ。水の中で溺れてたら、掴んだって意味がない藁にだって縋りたいんですから」
いきなり藁呼ばわり……って、まぁ俺にもその自覚はあるよ。
けど、どんな藁か分かるまい?
「藁だと分かるんなら、他の奴に助け求めろよ! こっちは前の世界でも恋愛経験ないし、いいように使い走りさせられてばっかだったし、誰かから好かれたこともないし、こっちに呼び出されても爪はじきにされるし、それだけじゃなく手配書まで出されるほどの嫌われようだし……」
「……えっと……なんか、ごめん」
「好かれる方法も知らないし、嫌われる方法も知らんぞ? 相手が勝手に好き嫌いして、それを押し付けてくるんだから。そんなん、俺に助け求めたって俺が分かるかよ。相手に嫌われるようなことすりゃそれで解決だろうが」
「う……うん……えーと……ごめん」
……唯一の慰めは、無邪気に俺に纏わりつくサミーの存在だけだよ……。
ありがとな……。
「……だいたいこういうことは、本人同士の気持ちの確認でしか解決できねぇだろうに。断ってもそれでもいい寄ってくる相手は、恋愛対象として見ていないってことは言えるしな」
「え? どうして?」
「相手のことを思いやるって気持ちがなきゃ、対等な人間関係になれないだろ。自分のことを嫌う相手を思いやる方法は二つだけ。一つは自分の身を引くこと。もう一つは、相手が助かる思いをするような行動を起こすこと。もちろん相手に知られることなく、相手が迷惑に感じるようなことがないようにな」
……なんか、俺がやってほしいことを要求してるような気分になってきた。
「……どうして、相手に知られないようにしなきゃいけないんですかぁ?」
……ここはおにぎりの店で、恋愛相談所でもないんだが?
料金取るぞ?
「その行為そのものの価値を、相手が見誤るかもしれないからな。同じことをしたけど、あいつのは評価され、俺のは気にもかけてくれなかった、ってな……」
あれ?
なんか胸が苦しくなってきた。
もう過ぎたことなんだけどな。
もう終わったことなんだけどな。
「ほら、お前らもとっとと仕事に行け。そのために来たんだろ?」
「いえっ! ヨウミさんに会いにモゴッ!」
「あ、はいっ! 行ってきますっ! ほら、みんな、行くぞ!」
女の子が口を塞がられてそのまま引っ張って行かれた。
しかも村の出入り口に向かって。
……一体何でこんなことになったんだろうな?
……なんか、軽い地響きが聞こえてきた。
今度は地震か何かの天変地異か?
ってあるわけがない。
それくらい、普通にしてて感知できないでどうする。
って、誰か……いや、何人かがこっちに来るが……。
窮地に陥ってパニクっているってわけでもない。
「ターッ! ミナミアラターッ!」
また俺かよ。
フィールドの方から聞き覚えのある声が飛んできた。
確かワッツとか言ってたよな。
テンちゃんを口説こうとしてた人馬族の男だ。
後ろから追いかけてくる奴らもいる。
多分そいつの仲間だろう。
姿が見えた。
次第に近づいてくる。
けれどもその速度は緩まない。
「そんなに慌てなくても逃げや……おい。おいっ!」
突進してきた。
俺を目掛けて。
車の衝突とほぼ変わらねぇんじゃねぇのか? これ。
ぶつかった拍子にどこぞの世界に転移なんて、それこそシャレになんねぇよ!
「あぶねっ!」
ツッコんでくるから避けるのは当然。
でもその避けた先に向きを変えてくるから、間違いなく俺を狙って来てる。
いや、ほんと、シャレにならねぇ。
ぶつかる寸前で、ライムとクリマーが俺を引っ張ってくれたおかげで何とかよけられたけどさ。
これがわざとなら悪質この上ない。
「お……、死んじまうようなこと止めろや。け……保安官に連行してもらってもおかしくないだろ、これ」
「ミナミアラタァ! お前に決闘を申し付ける!」
はい、二日連続二度目の宣告受けました。
なんなんだこれ。
何の厄日だよ。
ヨウミのことは、確かに俺にも悪いところはあったけど、俺が元凶じゃないだろ。
何でこんなにいろいろと巻き込まれてんだよ!
もちろん洗米済みの米が目いっぱい押し込まれている。
そして戻ってくるなり、ヨウミからライムと一緒に怒られた。
店番レギュラーのクリマーからも呆れられた。
すぐに洞窟の中に米袋を運び込んだのが間違いだった。
「ゼェ……ゼェ……。ア゛ラ゜ダアァァ! あんたぁ……何逃げてんのよお!」
俺の後ろは壁。
前は般若のような顔のヨウミ。
逃げられねぇよ。
怖ぇよ。
何だよその地の底から出るような声はっ!
「しょうがないだろ。魔物が襲ってくる修羅場なら身を盾にしてても何とかできるかもしれんが……それって、お前とそいつの間での問題だろ?」
「あぁ? 逆ギレか? 逆ギレなのか?! 助けを求めるあたしの伸ばした手を振り切って逃げてさあっ!」
「いや、キレてないだろ。キレてるのはお前だけだからっ。大体、助けを求める先が違ぇだろ。何でもかんでも俺に縋るなよ」
その激怒っぷりに、ヨウミを追っかけてたミューとやらも腰が引けてる。
洞窟の入り口に近いってのに、他の客も助けに来ない。
ヨウミの周りに、なんらかの力場が生じてるように見える。
そのエリアに俺だけが引きずり込まれ、脱出不可能の感たっぷりだ。
俺の方こそ誰か助けろよ!
「しょーがないですよ。水の中で溺れてたら、掴んだって意味がない藁にだって縋りたいんですから」
いきなり藁呼ばわり……って、まぁ俺にもその自覚はあるよ。
けど、どんな藁か分かるまい?
「藁だと分かるんなら、他の奴に助け求めろよ! こっちは前の世界でも恋愛経験ないし、いいように使い走りさせられてばっかだったし、誰かから好かれたこともないし、こっちに呼び出されても爪はじきにされるし、それだけじゃなく手配書まで出されるほどの嫌われようだし……」
「……えっと……なんか、ごめん」
「好かれる方法も知らないし、嫌われる方法も知らんぞ? 相手が勝手に好き嫌いして、それを押し付けてくるんだから。そんなん、俺に助け求めたって俺が分かるかよ。相手に嫌われるようなことすりゃそれで解決だろうが」
「う……うん……えーと……ごめん」
……唯一の慰めは、無邪気に俺に纏わりつくサミーの存在だけだよ……。
ありがとな……。
「……だいたいこういうことは、本人同士の気持ちの確認でしか解決できねぇだろうに。断ってもそれでもいい寄ってくる相手は、恋愛対象として見ていないってことは言えるしな」
「え? どうして?」
「相手のことを思いやるって気持ちがなきゃ、対等な人間関係になれないだろ。自分のことを嫌う相手を思いやる方法は二つだけ。一つは自分の身を引くこと。もう一つは、相手が助かる思いをするような行動を起こすこと。もちろん相手に知られることなく、相手が迷惑に感じるようなことがないようにな」
……なんか、俺がやってほしいことを要求してるような気分になってきた。
「……どうして、相手に知られないようにしなきゃいけないんですかぁ?」
……ここはおにぎりの店で、恋愛相談所でもないんだが?
料金取るぞ?
「その行為そのものの価値を、相手が見誤るかもしれないからな。同じことをしたけど、あいつのは評価され、俺のは気にもかけてくれなかった、ってな……」
あれ?
なんか胸が苦しくなってきた。
もう過ぎたことなんだけどな。
もう終わったことなんだけどな。
「ほら、お前らもとっとと仕事に行け。そのために来たんだろ?」
「いえっ! ヨウミさんに会いにモゴッ!」
「あ、はいっ! 行ってきますっ! ほら、みんな、行くぞ!」
女の子が口を塞がられてそのまま引っ張って行かれた。
しかも村の出入り口に向かって。
……一体何でこんなことになったんだろうな?
……なんか、軽い地響きが聞こえてきた。
今度は地震か何かの天変地異か?
ってあるわけがない。
それくらい、普通にしてて感知できないでどうする。
って、誰か……いや、何人かがこっちに来るが……。
窮地に陥ってパニクっているってわけでもない。
「ターッ! ミナミアラターッ!」
また俺かよ。
フィールドの方から聞き覚えのある声が飛んできた。
確かワッツとか言ってたよな。
テンちゃんを口説こうとしてた人馬族の男だ。
後ろから追いかけてくる奴らもいる。
多分そいつの仲間だろう。
姿が見えた。
次第に近づいてくる。
けれどもその速度は緩まない。
「そんなに慌てなくても逃げや……おい。おいっ!」
突進してきた。
俺を目掛けて。
車の衝突とほぼ変わらねぇんじゃねぇのか? これ。
ぶつかった拍子にどこぞの世界に転移なんて、それこそシャレになんねぇよ!
「あぶねっ!」
ツッコんでくるから避けるのは当然。
でもその避けた先に向きを変えてくるから、間違いなく俺を狙って来てる。
いや、ほんと、シャレにならねぇ。
ぶつかる寸前で、ライムとクリマーが俺を引っ張ってくれたおかげで何とかよけられたけどさ。
これがわざとなら悪質この上ない。
「お……、死んじまうようなこと止めろや。け……保安官に連行してもらってもおかしくないだろ、これ」
「ミナミアラタァ! お前に決闘を申し付ける!」
はい、二日連続二度目の宣告受けました。
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何の厄日だよ。
ヨウミのことは、確かに俺にも悪いところはあったけど、俺が元凶じゃないだろ。
何でこんなにいろいろと巻き込まれてんだよ!
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