182 / 493
店の日常編
ファンクラブをつくるのはいいが俺を巻き込むな 問題を起こさなきゃ問題なしということで
しおりを挟む
ワッツはこんなことを言っていた。
テンちゃんの優しそうな目が好きだ。
気品を感じる毛並みが好きだ。
羽根の一枚一枚が生え揃っている翼が好きだ。
バランスのいい体格が好きだ。
まぁ……まずは外見から好みを決めるよな。
それは否定しない。
けど、相手が自分にどう思ってるのかを知るのが遅かった。
相手の名前を知るのが遅かった。
相手の素性を知るのが遅かった。
そして、なぜ俺と一緒に行動しているのかを知ろうとしなかった。
テンちゃんに対し、愛情ってのはあるだろう。
けど、恋愛だの結婚だのの意識は、多分テンちゃんにとっては足りなかった。
ワッツに好意を持たれていたことは、全く気付いてなかったし、知った後も『え? あ……そうなんだ……』の一言で終わってしまった。
ワッツの、テンちゃんに対する評価が、何となく美術品への物に似たような気がした。
美術品を手元に置いておきたい。
その思いが、敬愛よりもより身近なものに感じたから、だから着せ替え人形みたいな扱いをしているような気がしたんだろう。
「恋愛……かぁ。よく分かんないや」
彼が去った後のテンちゃんの最初の一言だった。
「無理して感じ取ろうとするもんでもねぇよ。自然と湧き上がる気持ちの一つなんじゃねぇの?」
「アラタの怒鳴り声みたいに?」
例えが悪すぎんぞ、マッキー。
でもまぁ……。
「お前が俺達に感じていることを、他の誰かに同じような思いを持てるようになったら……恋愛よりも大切な感情なんじゃないのかねぇ……。よく分からんっ」
「分かんねぇんかよっ!」
「分かるわけねぇよ。こっちゃそんな感情なんて簡単に踏みにじられた経験しかねぇんだからよっ! ……て、いつまでもくっちゃべってねぇで、とっとと晩飯食おうぜ。はい、いっただっきまーすっと」
「いっただっきまーす!」
声が揃った食前の挨拶を聞くと……うん、やっぱ安心感はあるな……。
「でもさ、アラタがあんな風にお話ししてくれるって、今までなかったよねぇ」
「そりゃそうよ。これからはぁ、家族だもんねっ」
ヨウミ、うぜぇ。
何だそのドヤ顔は。
「ヨウミだって当てはまるし、他のみんなも、今後どんな奴を相手にしなきゃならんか分からんぞ? 同じ事言うけど、人間関係の間に生まれる感情ならどんなことにだって当てはまる。誰かに頼らなきゃ切り抜けられない難局ならそいつに頼るしかないが、自力で何とかできるように成長することも必要だからな?」
「ミィ~」
流石にサミーの脱皮は自力でやってもらわにゃ困るけどな。
「ミューって子も、アラタの話は理解できたみたいで……」
「ほお」
結局あの子はどうなったんだ?
「なんか、ここに来る時は遠巻きにして見てる……って……」
「人気が変わらずに何より」
「何より、じゃないよっ! 同性とどうこうって趣味はないってのに……」
「別にいいじゃねぇか。この森の奥から、今もヨウミのことを……ってオチはないんだろう?」
「気味悪いこと言わないでよっ! 彼女達も仕事があるから、毎日ここに来ることはないって言ってたけど」
自分で言ってて気味が悪くなったが、まあそれならまずは一安心。
「キュウカノヒ、アソビアイテ シテクレルッテー」
まぁ……ライム相手に恋愛感情持つ奴もいないとは思うが。
マスコット的存在って感じだからな。
サミーと……不本意ながらンーゴもそうらしい。
確かに人それぞれだけどさ。
「あたしはごめんだな。どうせ物珍しさに寄ってきてるだろうしよ。このおにぎりよりもうまいモン食わせてくれるってんなら考えてもいいけどなっ。デザートとかって奴ぁ、確かに味はおにぎりよりもいいけどよお。つーことで、あたしの為にどんどん作れよなっ!」
別にコーティのために作ってんじゃねぇよ!
でも、こっちが迷惑と思わない限り、受け入れてくれる人が増えるってのは悪い気分じゃないな。
「でも……でーと? 行きたい場所ってあまりないよねぇ」
どこで覚えたのやら。
あ、ヨウミ達の話でも聞いたのか?
「テンチャンの行きたいとこって、例えばどんなとこ?」
「んーとねぇ……おいしい干し草食べてさせてくれるお店!」
「多分……ないと思いますよ?」
「ドーセンの店くらいだなあ。あとは牧場……あ……テンちゃんは放牧地に入っちゃダメだぞお」
誰もそのリクエストに応えられねぇよ。
つか、モーナーも、話題はそっち方面じゃねぇから!
ったく、しょーがねぇなぁ、こいつらは。
テンちゃんの優しそうな目が好きだ。
気品を感じる毛並みが好きだ。
羽根の一枚一枚が生え揃っている翼が好きだ。
バランスのいい体格が好きだ。
まぁ……まずは外見から好みを決めるよな。
それは否定しない。
けど、相手が自分にどう思ってるのかを知るのが遅かった。
相手の名前を知るのが遅かった。
相手の素性を知るのが遅かった。
そして、なぜ俺と一緒に行動しているのかを知ろうとしなかった。
テンちゃんに対し、愛情ってのはあるだろう。
けど、恋愛だの結婚だのの意識は、多分テンちゃんにとっては足りなかった。
ワッツに好意を持たれていたことは、全く気付いてなかったし、知った後も『え? あ……そうなんだ……』の一言で終わってしまった。
ワッツの、テンちゃんに対する評価が、何となく美術品への物に似たような気がした。
美術品を手元に置いておきたい。
その思いが、敬愛よりもより身近なものに感じたから、だから着せ替え人形みたいな扱いをしているような気がしたんだろう。
「恋愛……かぁ。よく分かんないや」
彼が去った後のテンちゃんの最初の一言だった。
「無理して感じ取ろうとするもんでもねぇよ。自然と湧き上がる気持ちの一つなんじゃねぇの?」
「アラタの怒鳴り声みたいに?」
例えが悪すぎんぞ、マッキー。
でもまぁ……。
「お前が俺達に感じていることを、他の誰かに同じような思いを持てるようになったら……恋愛よりも大切な感情なんじゃないのかねぇ……。よく分からんっ」
「分かんねぇんかよっ!」
「分かるわけねぇよ。こっちゃそんな感情なんて簡単に踏みにじられた経験しかねぇんだからよっ! ……て、いつまでもくっちゃべってねぇで、とっとと晩飯食おうぜ。はい、いっただっきまーすっと」
「いっただっきまーす!」
声が揃った食前の挨拶を聞くと……うん、やっぱ安心感はあるな……。
「でもさ、アラタがあんな風にお話ししてくれるって、今までなかったよねぇ」
「そりゃそうよ。これからはぁ、家族だもんねっ」
ヨウミ、うぜぇ。
何だそのドヤ顔は。
「ヨウミだって当てはまるし、他のみんなも、今後どんな奴を相手にしなきゃならんか分からんぞ? 同じ事言うけど、人間関係の間に生まれる感情ならどんなことにだって当てはまる。誰かに頼らなきゃ切り抜けられない難局ならそいつに頼るしかないが、自力で何とかできるように成長することも必要だからな?」
「ミィ~」
流石にサミーの脱皮は自力でやってもらわにゃ困るけどな。
「ミューって子も、アラタの話は理解できたみたいで……」
「ほお」
結局あの子はどうなったんだ?
「なんか、ここに来る時は遠巻きにして見てる……って……」
「人気が変わらずに何より」
「何より、じゃないよっ! 同性とどうこうって趣味はないってのに……」
「別にいいじゃねぇか。この森の奥から、今もヨウミのことを……ってオチはないんだろう?」
「気味悪いこと言わないでよっ! 彼女達も仕事があるから、毎日ここに来ることはないって言ってたけど」
自分で言ってて気味が悪くなったが、まあそれならまずは一安心。
「キュウカノヒ、アソビアイテ シテクレルッテー」
まぁ……ライム相手に恋愛感情持つ奴もいないとは思うが。
マスコット的存在って感じだからな。
サミーと……不本意ながらンーゴもそうらしい。
確かに人それぞれだけどさ。
「あたしはごめんだな。どうせ物珍しさに寄ってきてるだろうしよ。このおにぎりよりもうまいモン食わせてくれるってんなら考えてもいいけどなっ。デザートとかって奴ぁ、確かに味はおにぎりよりもいいけどよお。つーことで、あたしの為にどんどん作れよなっ!」
別にコーティのために作ってんじゃねぇよ!
でも、こっちが迷惑と思わない限り、受け入れてくれる人が増えるってのは悪い気分じゃないな。
「でも……でーと? 行きたい場所ってあまりないよねぇ」
どこで覚えたのやら。
あ、ヨウミ達の話でも聞いたのか?
「テンチャンの行きたいとこって、例えばどんなとこ?」
「んーとねぇ……おいしい干し草食べてさせてくれるお店!」
「多分……ないと思いますよ?」
「ドーセンの店くらいだなあ。あとは牧場……あ……テンちゃんは放牧地に入っちゃダメだぞお」
誰もそのリクエストに応えられねぇよ。
つか、モーナーも、話題はそっち方面じゃねぇから!
ったく、しょーがねぇなぁ、こいつらは。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる