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店の日常編
王族の欲 王子の告白 その2
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確かに高い魔力を身に付けたら……。
開発の難易度が高い物を生み出すよりも、討伐が難しい魔物群に効果的な魔術を開発してぶちかます方が話は早い。
わざわざ面倒な魔術を生み出して他の世界から得体のしれない者達を呼び出して魔物どもを倒す、そんな面倒な手順を踏む必要はねぇんだよなぁ。
……とは思うが、考えてみりゃ今までの生活は、そんなことを考える余裕もなかったし、その必要もなかったからな。
言われてみれば、シアンが思うように変だと思う。
だが言われなければ、今ではそれとは無縁……と言えば無縁だ。
降りかかってくる火の粉は、好き好んで俺のところには来やしない。
こないだのことはたまたまだ。
だが召喚されて間もなくは、考えたことはある。
自分の国、自分の世界のことを、なんでよその世界の人に頼って解決しようとするのか? と。
言わば内政干渉ってやつだよな。
けど当人たちがそれを了承してるんだから、それについては誰も問題にはしねぇ。
問題にならなきゃ、考える必要もなし、だ。
「その現象は昔からこの世界のあちこちで発生していたものだ。なぜ、いつから、そう言ったことが一切不明。自然現象の一つとして認識するしかない」
俺らの世界での自然現象は、人間の命を狙うようなものは存在しない。
気の毒と言えば気の毒だが、今の俺は他人事じゃあない。
「現象のことはさておいて、その現象から発生する魔物は、この世界に生息している魔物と違って」
何度も聞いたわ。
聞き飽きたわ。
「格段に強い、だろ? だからよその世界から人材を召喚して旗手として討伐してもらうっていうことだったよな。旗手という名称も、かつて勇者と呼ばれる立場の人達に、その呼び名から変更されたもの。そう聞いた記憶があるな」
シアンは黙って頷いた。
が、言うことを分かってくれてるうれしさとか、さらに話を進められる前向きな態度とか、そんな様子はまったくない。
と言うか……、沈痛な面持ちというか何と言うか。
何かあったんか?
「その研究記録の古い文献があってな」
「古い文献……って……なんか、歴史書みたいな感じね」
「……まぁ、そんなものだ」
仲間達がやいのやいのと合の手を入れる。
シアンの物言いだと、確かにマッキーの言う通り、なんかこう……古い歴史を持つ国、みたいなイメージが湧くな。
こいつが国王になったら何代目になるんだろうな。
国の歴史も百年や二百年どころじゃないかもな。
だがシアンはそんな話の脱線に混ざる気は全くなさそうだ。
「……おい、馬鹿王子。お前はここに何しに来たんだ?」
俺の問いかけに、一瞬みんな静まり返った。
まるで真っ白な時間が流れてるような。
「え?」
最初に我に返ったのは、やはり問いかけた相手。
まぁそうでなきゃ、本当に馬鹿王子だよな。
「え? じゃねぇよ。お前はわざわざ店の中に入って来てまで何かしたかったんだろうが。何をするためにこの部屋で座ってんだ?」
「ちょ、ちょっと、アラタ」
「そんなきつい言い方しなくたっていいじゃん。あたし達が中に招き入れたんだし」
ヨウミもテンちゃんも黙ってろ。
こいつの感情が色々入り混じりすぎてんだ。
俺らだって暇じゃねぇ、って何度言や分かるんだ。
「話を……と言うか……。報告だな……」
話をしに来たんじゃなかったのか?
まぁ報告もお話しの種類の一つと言えば、別に気にすることもねぇけどよ。
それに、何の報告をしにきたのか、までは知らん。
ならば。
「だったらまずその報告を先にしろ。なぜその話が出てきたかとか、そんなもんはいらん。端的に話せ。それに伴う感情を背負ったり吐き出したりするのは後回しだ」
「そ……そうか……」
それと、だ。
「お前らも、こいつの話の句切れで一々茶々入れんな。驚きのリアクションとかも、誰が上手いことを言えって言いたくなるようなことも言うな。まず一通り耳を傾けろ」
みんなが奇妙な顔をして俺を見る。
話しにくそうな感じ……までは分からんか。
だが、そんな思いを持ったまま話を続けられたら、いつになったら話が終わるのか分からねぇしな。
「……私がアラタに報告しなきゃならないことは、私も初耳だった事項だ。それを踏まえて話を続ける」
「おう」
「旗手の前身だった勇者だが……元々はこの世界から選別されてた」
全員が驚いた。
俺はそこまで驚きはしない。
自分の世界のことは自分達で世話をする。
それは、誰から見ても納得できる道理のはず、と思ってたからな。
だがこいつらの反応が……。
「いいから。お前らいいから静かにして話聞いてろよ」
「でも」
「いいからっ!」
ヨウミを無理やり押し黙らせた。
シアンを見ると、少しほっとした顔をしている。
だろうな。
こいつ、その報告を、おそらく呵責を感じながらしようとしていた。
だからなかなか本題に入れずにいる。
そして、こっちで誰かが反応するたびごとに謝る気でいた。
一体どんな話を持ってきた?
「この世界の人間は、元々魔力は持ってない。だがごく稀に魔力を持って生まれる者達がいた。その者達は総じて、体力をはじめとする身体能力も、一般人と比べて秀でていた」
「この世界の人間から、別の世界の人間達にシフトチェンジしたわけだ。どうせ、自分の世界の……我が国の民を無駄に傷つけたくないから、なんて理由だろ?」
じれってぇ。
アシストしてやりゃ話しやすくなるか?
だが、俺の予想は外れてた。
「いや違う。それが……その理由こそが、アラタに伝えなきゃならん話だと思ってな」
アシストの仕方、しくじった。
なおさらじれったくされた。
「……この話は、報告、と言うより……告白だな。アラタ。君はまず話をするように言ったな? だが、これは……常に私からの謝罪が伴っていることを分かっててくれ」
回りくどい。
実際こいつの親父が幽閉されているところを見ちゃいねぇが、嘘偽りがないことは分かってる。
その謝罪は、間違いなくこいつの本音だ。
「お前の気持ちは分かってるから、とにかく話進めろよ」
「……そうだったな。では改めて……。歴代の王は……その性根は腐っていた」
「は?」
一々茶々を入れるな、と仲間達に忠告した俺が、真っ先に変な声を出しちまった。
何で歴代の王の性根の話が出てくるってんだ?
つか、そんなことが話題に上がるなんて、思ってもみなかった。
開発の難易度が高い物を生み出すよりも、討伐が難しい魔物群に効果的な魔術を開発してぶちかます方が話は早い。
わざわざ面倒な魔術を生み出して他の世界から得体のしれない者達を呼び出して魔物どもを倒す、そんな面倒な手順を踏む必要はねぇんだよなぁ。
……とは思うが、考えてみりゃ今までの生活は、そんなことを考える余裕もなかったし、その必要もなかったからな。
言われてみれば、シアンが思うように変だと思う。
だが言われなければ、今ではそれとは無縁……と言えば無縁だ。
降りかかってくる火の粉は、好き好んで俺のところには来やしない。
こないだのことはたまたまだ。
だが召喚されて間もなくは、考えたことはある。
自分の国、自分の世界のことを、なんでよその世界の人に頼って解決しようとするのか? と。
言わば内政干渉ってやつだよな。
けど当人たちがそれを了承してるんだから、それについては誰も問題にはしねぇ。
問題にならなきゃ、考える必要もなし、だ。
「その現象は昔からこの世界のあちこちで発生していたものだ。なぜ、いつから、そう言ったことが一切不明。自然現象の一つとして認識するしかない」
俺らの世界での自然現象は、人間の命を狙うようなものは存在しない。
気の毒と言えば気の毒だが、今の俺は他人事じゃあない。
「現象のことはさておいて、その現象から発生する魔物は、この世界に生息している魔物と違って」
何度も聞いたわ。
聞き飽きたわ。
「格段に強い、だろ? だからよその世界から人材を召喚して旗手として討伐してもらうっていうことだったよな。旗手という名称も、かつて勇者と呼ばれる立場の人達に、その呼び名から変更されたもの。そう聞いた記憶があるな」
シアンは黙って頷いた。
が、言うことを分かってくれてるうれしさとか、さらに話を進められる前向きな態度とか、そんな様子はまったくない。
と言うか……、沈痛な面持ちというか何と言うか。
何かあったんか?
「その研究記録の古い文献があってな」
「古い文献……って……なんか、歴史書みたいな感じね」
「……まぁ、そんなものだ」
仲間達がやいのやいのと合の手を入れる。
シアンの物言いだと、確かにマッキーの言う通り、なんかこう……古い歴史を持つ国、みたいなイメージが湧くな。
こいつが国王になったら何代目になるんだろうな。
国の歴史も百年や二百年どころじゃないかもな。
だがシアンはそんな話の脱線に混ざる気は全くなさそうだ。
「……おい、馬鹿王子。お前はここに何しに来たんだ?」
俺の問いかけに、一瞬みんな静まり返った。
まるで真っ白な時間が流れてるような。
「え?」
最初に我に返ったのは、やはり問いかけた相手。
まぁそうでなきゃ、本当に馬鹿王子だよな。
「え? じゃねぇよ。お前はわざわざ店の中に入って来てまで何かしたかったんだろうが。何をするためにこの部屋で座ってんだ?」
「ちょ、ちょっと、アラタ」
「そんなきつい言い方しなくたっていいじゃん。あたし達が中に招き入れたんだし」
ヨウミもテンちゃんも黙ってろ。
こいつの感情が色々入り混じりすぎてんだ。
俺らだって暇じゃねぇ、って何度言や分かるんだ。
「話を……と言うか……。報告だな……」
話をしに来たんじゃなかったのか?
まぁ報告もお話しの種類の一つと言えば、別に気にすることもねぇけどよ。
それに、何の報告をしにきたのか、までは知らん。
ならば。
「だったらまずその報告を先にしろ。なぜその話が出てきたかとか、そんなもんはいらん。端的に話せ。それに伴う感情を背負ったり吐き出したりするのは後回しだ」
「そ……そうか……」
それと、だ。
「お前らも、こいつの話の句切れで一々茶々入れんな。驚きのリアクションとかも、誰が上手いことを言えって言いたくなるようなことも言うな。まず一通り耳を傾けろ」
みんなが奇妙な顔をして俺を見る。
話しにくそうな感じ……までは分からんか。
だが、そんな思いを持ったまま話を続けられたら、いつになったら話が終わるのか分からねぇしな。
「……私がアラタに報告しなきゃならないことは、私も初耳だった事項だ。それを踏まえて話を続ける」
「おう」
「旗手の前身だった勇者だが……元々はこの世界から選別されてた」
全員が驚いた。
俺はそこまで驚きはしない。
自分の世界のことは自分達で世話をする。
それは、誰から見ても納得できる道理のはず、と思ってたからな。
だがこいつらの反応が……。
「いいから。お前らいいから静かにして話聞いてろよ」
「でも」
「いいからっ!」
ヨウミを無理やり押し黙らせた。
シアンを見ると、少しほっとした顔をしている。
だろうな。
こいつ、その報告を、おそらく呵責を感じながらしようとしていた。
だからなかなか本題に入れずにいる。
そして、こっちで誰かが反応するたびごとに謝る気でいた。
一体どんな話を持ってきた?
「この世界の人間は、元々魔力は持ってない。だがごく稀に魔力を持って生まれる者達がいた。その者達は総じて、体力をはじめとする身体能力も、一般人と比べて秀でていた」
「この世界の人間から、別の世界の人間達にシフトチェンジしたわけだ。どうせ、自分の世界の……我が国の民を無駄に傷つけたくないから、なんて理由だろ?」
じれってぇ。
アシストしてやりゃ話しやすくなるか?
だが、俺の予想は外れてた。
「いや違う。それが……その理由こそが、アラタに伝えなきゃならん話だと思ってな」
アシストの仕方、しくじった。
なおさらじれったくされた。
「……この話は、報告、と言うより……告白だな。アラタ。君はまず話をするように言ったな? だが、これは……常に私からの謝罪が伴っていることを分かっててくれ」
回りくどい。
実際こいつの親父が幽閉されているところを見ちゃいねぇが、嘘偽りがないことは分かってる。
その謝罪は、間違いなくこいつの本音だ。
「お前の気持ちは分かってるから、とにかく話進めろよ」
「……そうだったな。では改めて……。歴代の王は……その性根は腐っていた」
「は?」
一々茶々を入れるな、と仲間達に忠告した俺が、真っ先に変な声を出しちまった。
何で歴代の王の性根の話が出てくるってんだ?
つか、そんなことが話題に上がるなんて、思ってもみなかった。
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