勇者を否定されて追放されたため使いどころを失った、勇者の証しの無駄遣い

網野ホウ

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店の日常編

仲間達の新たな活動 5

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 次の日から、その新人冒険者達の集団戦闘の訓練が始まった。
 こっちからの参加者、総勢九名。
 けど、新人達は四人だから、いきなり四対九ってのはないよな。
 新人全員と二人から始めるようだ。
 その組み合わせも……まぁ計算すれば出てくるだろうが、幾通りもある。
 その打ち合わせとかも綿密にしてから始まった。
 が、俺とヨウミはその現場でのんびり見物としゃれこん……でいられない。
 店の方があるからな。

「何か……奥の方で戦闘でもやってんのか? ちと穏やかならざる音が聞こえてくるんだが」

 何の力も持ってなくても、それだけ激しい音が聞こえてくりゃ、そりゃ分かるか。

「うちの連中で手の空いた奴が、新人冒険者相手に集団戦の特訓だか何だかをやってる……」
「マジか!」
「そんなことしてんの?!」
「おい! 何でそれ、先に俺らに言わねぇ!」

 行列の客のほとんどが騒ぎ始めて俺に詰め寄ってきた。

「新人相手だと?! 俺達は相手してくんねぇのか?!」
「私達もやってみたいわよ!」
「おいアラタ! そんな訓練やってみてぇって、日ごろから話してたの聞こえてなかったのか?!」

 知るかよんなこと!

「明日! 明日の予約申し込む!」
「おい、汚ぇぞギルス! 俺だ! 俺が先だ!」
「じゃああたし達は明後日から!」
「お前らなぁ……ちったあ落ち着け」

 おにぎりを買う客の列が一気に崩れてんじゃねぇか。

「なぁ、アラタ。ちなみに料金はいくらだ? 一人につき一日一万円くらいか?」
「え? 料金?」

 ……考えてなかった。
 決めてなかった。

「あー……ヨウミ……」
「聞いてないよ? 聞こえてくるわけないでしょ、そんな話」

 だよな。

「アラタ……。それ、決めとかないとまずいんじゃねぇの?」
「そうよね。だって、そんな身の危険が及ぶかもしれない役割をただ働きってのは……ちょっとまずいわよ?」
「それに……そればかりじゃねぇぞ」

 詰め寄ってきた冒険者達全員、急に眉をひそめた。
 何かまずいことでもしたのか?
 悪気はまずないし、誰かの商売の邪魔をすることはしてない……と思うんだが?

「あのな、アラタ。自分の仲間に何かの仕事を命じて、その報酬がゼロっていう形態がさ」
「報酬は何もないって訳じゃねぇぞ?」

 おにぎりを報酬の条件にしてる奴には、一日も欠かしたことはない。
 金銭だってそうだ。
 何の不満も持ってなさそうだし、今回の新人の訓練に付き合う仕事にも、全員不満はなかった。
 それどころか、全員協力的だったぞ?

「集団戦の基立ちをするってんだろ? その分の報酬はどうなのかって話だよ」
「……特に話は詰めてないが……」
「……それって……」
「まずい……ような気がする」
「まずいよな」
「誰だよ、その話持ち込んだ奴ぁ」
「誰であれ、冒険者ならそれくらいの条件は考えてるとは思うんだがなぁ」

 何だよ、揃いも揃ってその深刻そうな表情。

「……なぁ、それのどこが問題だよ」
「……分かりやすく言えば、それって、無報酬で仕事させてるってことだぞ?」
「つまり……奴隷扱いと見なされてもおかしくないんじゃないの? って話よ?」
「あ……」

 それくらいのこと、あいつらにとっては朝飯前とかお茶の子さいさいとか思ってたが……。
 あいつらは……モノじゃねぇ。
 高い低いはともかく、人件費は出してもらわんと……。
 そうだよ。
 タダでそんな特訓をさせてもらえる、なんて話が広まったら……。
 こんな風に冒険者達が、さらに大勢押し寄せて、あいつら、使い潰されてしまいかねねぇよな。
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