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米からの騒動編
仕事なら、米の選別以外はしたくねぇんだが その7
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今更なんだがこの母子、ボロボロの服もなんだが、薄汚い。
先に清潔にさせるべきだったんだろうが、子供の方は足元もおぼつかなかったから、先におにぎりを食わせた。
だがそれは失敗だったかもしれない。
本人は気にしてなかったようだが、耳元でうんこうんこと発言を連発されながら食うおにぎりの味は……。
先に綺麗にさせてやったら、イールが帰った後だったかもしれなかったか。
とりあえず、おにぎりを食ってある程度落ち着いたようだった。
食いもん食って、何の苦しい表情も感情もなきゃ、まずは一安心だな。
さて……。
「……二人とも、風呂に入ってみるか? 温泉を作ったのは俺らだが、基本無料にしてる。タオルとかの貸し出しはない。利用者はみんな自前で用意するんだが……」
当然この母子はそんなものどころか、何も持ってない。
温泉に料金を取る制度を設けてたら、金を持ってない奴に教えてやる義理もねぇ。
けど無料だから、誰だって普通に入れる。
それを知ってるか知らないかの違いだけだ。
だからそれくらいなら教えてやってもいいんだが、タオルまで貸してやるっつー義理はない。
人情にほだされて何かをしてやるってのは、俺の主義には……。
「私も温泉には関心あるけど、温泉よりもこっちの方が好きだから、何の用いもしてないのよね」
イールはおにぎり目当てでここに来るんだもんな。
「あたしの貸してあげよっか」
「あ?」
ヨウミが突然口を挟む。
口を挟むどころか、俺を押しのけて母親に近づいた。
俺を何だと思ってやがる。
「お風呂に浸かって温まったら、気分も良くなるよ? ね、アラタ」
「何だよ」
「『あたしが』貸すんだからいいよね?」
「こいつに貸すなら俺にも貸せ、って言う図々しい奴が出てきても知らんぞ?」
「あー、だいじょぶ。あたしにはハリセンがあるもん」
何の効果もねぇただの折り紙だぞ、あれ。
厚紙だから、普通の紙よりは効果はあるかも分からんが……。
「……ま、いいんじゃねぇか? けど一緒に入るのはなしだぞ?」
「えー?」
「当たり前だ。仕事があるだろうが。タオルだけ貸してやれ。風呂には俺が付き添う」
「……ちょっとアラタ、まさか混浴とかするんじゃないでしょうね」
なんだそのジト目は。
明らかに軽蔑する目だよな、それ。
「んなわきゃねぇだろ。そのガキは母親と一緒に入るかどうかは分からんが……一緒に入ったらどうだ? 俺は当然男湯だがな。それに、俺はこの後は何の仕事もねぇから、何しても誰からも文句は言われる筋合いはねぇぞ?」
「そんな……お風呂の面倒まで」
「風呂の面倒なんか、手伝いにやらせてるし。もっともあんたらの面倒を見るのはそこまでだ。そっから先は自力で何とかしなや。ま、タオルさえ自分で用意できるなら、温泉に入りに来るのは誰からも止められるこたぁねえから安心しな。ただで入れる温泉目当てに来る奴もいるぐれぇだしな」
気弱になってるせいか、すぐに遠慮しやがる。
押し問答したって埒が明かねぇし、テメェの住まいを決めるぐれぇの経済力を持つ前に、まずはその気分を体の汚れごと落としちまえっての。
※※※※※ ※※※※※
というわけで、温泉のフィールドに二人を連れて、軽く温泉の説明をしてやった。
ガキは母親と一緒に入ってる。
年端もいかねぇ子供が母親と一緒に銭湯に入る時は、年齢次第では子供は女湯に入れるって話は聞いたことがあるからな。
ここでもそんな風にはしているが。
で、俺は一足先に風呂から上がって屋外で待ってるとこだ。
風呂上がりにくつろぐスペースはない。
利用者は仕事が終わった冒険者がほとんどで、そんな奴らがくつろぐ場所ってば、ここよりもドーセンの酒場がいいんだそうだ。
けど、風呂上がりの水分補給は用意した方がいいのかねぇ。
牛乳を飲む奴が結構多いっぽいが、飲み物の種類のこだわりってあまりねぇからなぁ……。
温泉のお湯は飲めなくはないから、水道っぽいのを用意はしてるんだが。
「よお大将、こんな時間に温泉かい? なんか大事業主って感じだなあ」
「ちょっとゲンオウ、何か嫌味にしか聞こえないんだけど?」
「あ? そうか? 心底そう思ってんだがな。そう聞こえたら謝る。すまんな」
不意に声をかけてきたのは……なんか温泉も行き慣れちまった風なゲンオウとメーナムだ。
まぁしょっちゅうこっちに顔を出すんだから、ここに来ても何の不思議もないが。
「別に気にしちゃいねぇよ。二人も入りに来たのか? ごゆっくり、な」
「おぉ。あ、そうだ、アラタ。ちょっと提案があるんだけどよ」
提案?
一体何の……。
「あ、アラタさん。お風呂の案内、ありがとうございました。おかげで私も息子も気持ちがすっかり落ち着きました」
「そりゃ何より。……その服も、かなりきれいに洗えたようで何よりだ」
お湯は常に湧き出ている。
体を洗うところから離れてるなら、一応洗濯もしてもいいことにはしてる。
風呂場に汚れがこびりつく前に、湯船からあふれる湯が洗い流してくれるからな。
それでも衛生面で不安に感じる人もいたら困るから、手伝いに来た連中に時々洗わせてはいるが。
「ん? 連れか? んじゃ次の機会にするかな?」
「手っ取り早く済ませられるんなら別に今でも構わねぇよ。何だよ」
「んじゃ手っ取り早く話す。温泉に入る時さぁ、タオルの貸し出しとかしてほしいんだよな」
「は?」
藪から棒に、また面倒なことを……。
聞かなきゃよかった。
先に清潔にさせるべきだったんだろうが、子供の方は足元もおぼつかなかったから、先におにぎりを食わせた。
だがそれは失敗だったかもしれない。
本人は気にしてなかったようだが、耳元でうんこうんこと発言を連発されながら食うおにぎりの味は……。
先に綺麗にさせてやったら、イールが帰った後だったかもしれなかったか。
とりあえず、おにぎりを食ってある程度落ち着いたようだった。
食いもん食って、何の苦しい表情も感情もなきゃ、まずは一安心だな。
さて……。
「……二人とも、風呂に入ってみるか? 温泉を作ったのは俺らだが、基本無料にしてる。タオルとかの貸し出しはない。利用者はみんな自前で用意するんだが……」
当然この母子はそんなものどころか、何も持ってない。
温泉に料金を取る制度を設けてたら、金を持ってない奴に教えてやる義理もねぇ。
けど無料だから、誰だって普通に入れる。
それを知ってるか知らないかの違いだけだ。
だからそれくらいなら教えてやってもいいんだが、タオルまで貸してやるっつー義理はない。
人情にほだされて何かをしてやるってのは、俺の主義には……。
「私も温泉には関心あるけど、温泉よりもこっちの方が好きだから、何の用いもしてないのよね」
イールはおにぎり目当てでここに来るんだもんな。
「あたしの貸してあげよっか」
「あ?」
ヨウミが突然口を挟む。
口を挟むどころか、俺を押しのけて母親に近づいた。
俺を何だと思ってやがる。
「お風呂に浸かって温まったら、気分も良くなるよ? ね、アラタ」
「何だよ」
「『あたしが』貸すんだからいいよね?」
「こいつに貸すなら俺にも貸せ、って言う図々しい奴が出てきても知らんぞ?」
「あー、だいじょぶ。あたしにはハリセンがあるもん」
何の効果もねぇただの折り紙だぞ、あれ。
厚紙だから、普通の紙よりは効果はあるかも分からんが……。
「……ま、いいんじゃねぇか? けど一緒に入るのはなしだぞ?」
「えー?」
「当たり前だ。仕事があるだろうが。タオルだけ貸してやれ。風呂には俺が付き添う」
「……ちょっとアラタ、まさか混浴とかするんじゃないでしょうね」
なんだそのジト目は。
明らかに軽蔑する目だよな、それ。
「んなわきゃねぇだろ。そのガキは母親と一緒に入るかどうかは分からんが……一緒に入ったらどうだ? 俺は当然男湯だがな。それに、俺はこの後は何の仕事もねぇから、何しても誰からも文句は言われる筋合いはねぇぞ?」
「そんな……お風呂の面倒まで」
「風呂の面倒なんか、手伝いにやらせてるし。もっともあんたらの面倒を見るのはそこまでだ。そっから先は自力で何とかしなや。ま、タオルさえ自分で用意できるなら、温泉に入りに来るのは誰からも止められるこたぁねえから安心しな。ただで入れる温泉目当てに来る奴もいるぐれぇだしな」
気弱になってるせいか、すぐに遠慮しやがる。
押し問答したって埒が明かねぇし、テメェの住まいを決めるぐれぇの経済力を持つ前に、まずはその気分を体の汚れごと落としちまえっての。
※※※※※ ※※※※※
というわけで、温泉のフィールドに二人を連れて、軽く温泉の説明をしてやった。
ガキは母親と一緒に入ってる。
年端もいかねぇ子供が母親と一緒に銭湯に入る時は、年齢次第では子供は女湯に入れるって話は聞いたことがあるからな。
ここでもそんな風にはしているが。
で、俺は一足先に風呂から上がって屋外で待ってるとこだ。
風呂上がりにくつろぐスペースはない。
利用者は仕事が終わった冒険者がほとんどで、そんな奴らがくつろぐ場所ってば、ここよりもドーセンの酒場がいいんだそうだ。
けど、風呂上がりの水分補給は用意した方がいいのかねぇ。
牛乳を飲む奴が結構多いっぽいが、飲み物の種類のこだわりってあまりねぇからなぁ……。
温泉のお湯は飲めなくはないから、水道っぽいのを用意はしてるんだが。
「よお大将、こんな時間に温泉かい? なんか大事業主って感じだなあ」
「ちょっとゲンオウ、何か嫌味にしか聞こえないんだけど?」
「あ? そうか? 心底そう思ってんだがな。そう聞こえたら謝る。すまんな」
不意に声をかけてきたのは……なんか温泉も行き慣れちまった風なゲンオウとメーナムだ。
まぁしょっちゅうこっちに顔を出すんだから、ここに来ても何の不思議もないが。
「別に気にしちゃいねぇよ。二人も入りに来たのか? ごゆっくり、な」
「おぉ。あ、そうだ、アラタ。ちょっと提案があるんだけどよ」
提案?
一体何の……。
「あ、アラタさん。お風呂の案内、ありがとうございました。おかげで私も息子も気持ちがすっかり落ち着きました」
「そりゃ何より。……その服も、かなりきれいに洗えたようで何よりだ」
お湯は常に湧き出ている。
体を洗うところから離れてるなら、一応洗濯もしてもいいことにはしてる。
風呂場に汚れがこびりつく前に、湯船からあふれる湯が洗い流してくれるからな。
それでも衛生面で不安に感じる人もいたら困るから、手伝いに来た連中に時々洗わせてはいるが。
「ん? 連れか? んじゃ次の機会にするかな?」
「手っ取り早く済ませられるんなら別に今でも構わねぇよ。何だよ」
「んじゃ手っ取り早く話す。温泉に入る時さぁ、タオルの貸し出しとかしてほしいんだよな」
「は?」
藪から棒に、また面倒なことを……。
聞かなきゃよかった。
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