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へっぽこ魔術師の女の子編
魔力の低さ 技術の高さ へっぽこ魔術師が一人立ち
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あの日以来、この店でラッカルの姿は見なくなった。
魔力が低くても、安定した魔術師としての実力は信頼を生んだ、とか何とか。
シアンの親衛隊はあの時以来休暇日を利用して、ダンジョン探索を自主練と称し続いていたんだが、時々そのサポート役として依頼を受けるようになった。
で、結果「便利屋」の二つ名をもらったとか。
二つ名はいいけど、便利屋呼ばわりってどうよ?
まぁ、加入してもらうことでかなり助かるってことなんだろうが、あまりいいイメージはねぇよなぁ。
「にしても、よくもまぁそんな発想が生まれたもんよね」
晩飯時、みんなが揃ったところでヨウミが話しかけてくる。
そのきっかけとなった張本人だ。
が、本人にはその自覚がないのは、そりゃ当たり前か。
「え? あたし? え? 何で?」
「ドーセンが用事あるっつって呼びに来たろ? 忘れたか?」
「あ、うん、それは覚えてるよ? それが」
「あんとき、氷の葉っぱでコケただろ」
「あ、うん。何で氷がこの季節に? しかもそこだけ? って思ってたけど……。え? まさかあの時?」
氷の状態が一日維持できるって話を、あの葉っぱを凍らせたときに聞いた。
それを踏んだヨウミが足を滑らせて尻もちをついた。
それを見て、何か閃きそうだったのは、意識下でその一連を結び付けてたらしいな。
「で、ドーセンとこでシアン達がいてよぉ」
「え? シアンがいたの?」
「親衛隊も一緒にな」
そうだ。
ドーセンとこに行ったことも、シアン達がそこにいたことも伝えてなかったっけ。
「何よそれっ。水臭いわね」
「アラタにい、連絡してもお、来るなとか言われると思ったんじゃないかあ?」
モーナーも辛らつになってきてねぇか?
まぁそれはともかくだ。
「シアンと親衛隊の連中との会話も耳に入ってきてな」
アークスの拳の風圧を感じて、あいつの格好を見た時に、さらに何か閃きそうな感じが強くなった。
物理攻撃の素振りで風圧を感じたことと風魔法を連想したことで、きちんと攻撃の姿勢を確認する必要があることは感じた。
「それで魔法攻撃とか見たかったわけね?」
「あぁ。モーナーを見て分かったが、必死に攻撃しようとすればするほど、踏ん張る力も必要になるって分かってな」
「でもそれは地面と接触してる場合に限るわよね? あたしみたいに宙に浮いてたのも見たでしょ? それはどうなのよ」
「あぁ。そればかりじゃねえよ。マッキーの弓攻撃だって、極端に踏ん張る様子は見られなかった」
「あたしのも見てそう思ったの? でもよくコーティの攻撃は凌げたわよね」
「あぁ。それは結局な……」
結局、攻撃のために力が入る。
これはどんな種類の攻撃でも必要だ。
地面と接触している者は、どんな者でも足場が必要になる。
極端に足に力が入っていれば、その力の入る方向をずらすだけでいい。
それでコケてくれて、その方向も狂う。
あと、思いがけない方向から力が加われば、それがそんなに大した力量でなくてもその反動に体が従ってしまう時がある。
テンちゃんのケツにぶつかった時の反動も、ラッカルへの提案に加えられた要素だった。
ほかには、マッキーのように踏ん張る力が見られなければ、両足の足場全体のバランスを崩すだけでいい。
けど、コーティのように空中にいた場合はどうするか。
これには頭を悩ませた。
「けど、力がどこかに入るってことは、その力を放出するってことだ。その放出する方向さえずらせば、こちらに被害はないし向こうにとっては想定外。そこに隙が生まれる、と思いついてな」
「なるほどねぇ。それで、あたし達の動きを事細かく伝えて……ってわけね?」
「んなめんどくせぇことするわきゃねぇだろうが」
「え?」
みんな同時に驚きの声を上げるっての、見てて面白れぇんだが、そのタイミング、示し合わせてんのか?
「んなわきゃねぇだろうが。そんなことまで世話してたらよ、自立した後も面倒みてやんなきゃなんねぇだろうが」
その気になったら、そんなこともあいつに伝えられなくはねぇよ?
けど、一人立ちした後にそんな場面に出くわすその相手は、みんなの誰かに当てはまるはずがねぇ。
それに、必ず一対一の場面になる、だなんて言いきれねぇし、むしろそんな場面は珍しいんじゃねぇの?
一体多数になることだってあるだろうよ。
そうなったらこうしましょう、こうなったらこのようにしましょう、なんて一々指示とか出してられるかっての。
自分で工夫して切り抜けなきゃなんねぇだろ?
一人で切り抜ける、ちょうどいい予行練習になるだろうしよ。
「大体俺は、あいつの保護者じゃねぇよ。そこまで面倒見る義務はねぇ」
「アラタッテ、メンドウミガイインダカワルインダカ、ワカンナイヨネ」
「ま、アラタらしいのは変わんねぇから、安心ちゃあ安心だぃなぁ」
だからお前ら、褒めてんのか弄ってんのか判断に苦しむ反応止めろや。
「で、ラッカルちゃん、今頃何してんのかなぁ」
「手紙はしょっちゅう来てますよね。アラタさんばかりじゃなく、みんなに」
「メイス君にも届いてるってさ。メイス君言ってた」
最初の相談相手だったからな。
几帳面な奴だ。
ちなみに俺への手紙には、おかげで故郷に度々仕送りができるようになってうれしい、みたいなことが書かれてた。
思い返してみれば、ラッカルとは二、三日くらいの世話だったが、十日分くらいの疲れが溜まってる感じだ。
それからようやく解放されると思ってたんだが……。
「でもさ、この後も掲示板の世話になる新人達の監視はずっと続くからね?」
……ほんと、どうしてこんな苦労しなきゃなんねぇんだろう……。
今まで苦労した分、休ませてくれたっていいじゃねぇか。
物欲も金欲もねぇんだしよぉ……。
魔力が低くても、安定した魔術師としての実力は信頼を生んだ、とか何とか。
シアンの親衛隊はあの時以来休暇日を利用して、ダンジョン探索を自主練と称し続いていたんだが、時々そのサポート役として依頼を受けるようになった。
で、結果「便利屋」の二つ名をもらったとか。
二つ名はいいけど、便利屋呼ばわりってどうよ?
まぁ、加入してもらうことでかなり助かるってことなんだろうが、あまりいいイメージはねぇよなぁ。
「にしても、よくもまぁそんな発想が生まれたもんよね」
晩飯時、みんなが揃ったところでヨウミが話しかけてくる。
そのきっかけとなった張本人だ。
が、本人にはその自覚がないのは、そりゃ当たり前か。
「え? あたし? え? 何で?」
「ドーセンが用事あるっつって呼びに来たろ? 忘れたか?」
「あ、うん、それは覚えてるよ? それが」
「あんとき、氷の葉っぱでコケただろ」
「あ、うん。何で氷がこの季節に? しかもそこだけ? って思ってたけど……。え? まさかあの時?」
氷の状態が一日維持できるって話を、あの葉っぱを凍らせたときに聞いた。
それを踏んだヨウミが足を滑らせて尻もちをついた。
それを見て、何か閃きそうだったのは、意識下でその一連を結び付けてたらしいな。
「で、ドーセンとこでシアン達がいてよぉ」
「え? シアンがいたの?」
「親衛隊も一緒にな」
そうだ。
ドーセンとこに行ったことも、シアン達がそこにいたことも伝えてなかったっけ。
「何よそれっ。水臭いわね」
「アラタにい、連絡してもお、来るなとか言われると思ったんじゃないかあ?」
モーナーも辛らつになってきてねぇか?
まぁそれはともかくだ。
「シアンと親衛隊の連中との会話も耳に入ってきてな」
アークスの拳の風圧を感じて、あいつの格好を見た時に、さらに何か閃きそうな感じが強くなった。
物理攻撃の素振りで風圧を感じたことと風魔法を連想したことで、きちんと攻撃の姿勢を確認する必要があることは感じた。
「それで魔法攻撃とか見たかったわけね?」
「あぁ。モーナーを見て分かったが、必死に攻撃しようとすればするほど、踏ん張る力も必要になるって分かってな」
「でもそれは地面と接触してる場合に限るわよね? あたしみたいに宙に浮いてたのも見たでしょ? それはどうなのよ」
「あぁ。そればかりじゃねえよ。マッキーの弓攻撃だって、極端に踏ん張る様子は見られなかった」
「あたしのも見てそう思ったの? でもよくコーティの攻撃は凌げたわよね」
「あぁ。それは結局な……」
結局、攻撃のために力が入る。
これはどんな種類の攻撃でも必要だ。
地面と接触している者は、どんな者でも足場が必要になる。
極端に足に力が入っていれば、その力の入る方向をずらすだけでいい。
それでコケてくれて、その方向も狂う。
あと、思いがけない方向から力が加われば、それがそんなに大した力量でなくてもその反動に体が従ってしまう時がある。
テンちゃんのケツにぶつかった時の反動も、ラッカルへの提案に加えられた要素だった。
ほかには、マッキーのように踏ん張る力が見られなければ、両足の足場全体のバランスを崩すだけでいい。
けど、コーティのように空中にいた場合はどうするか。
これには頭を悩ませた。
「けど、力がどこかに入るってことは、その力を放出するってことだ。その放出する方向さえずらせば、こちらに被害はないし向こうにとっては想定外。そこに隙が生まれる、と思いついてな」
「なるほどねぇ。それで、あたし達の動きを事細かく伝えて……ってわけね?」
「んなめんどくせぇことするわきゃねぇだろうが」
「え?」
みんな同時に驚きの声を上げるっての、見てて面白れぇんだが、そのタイミング、示し合わせてんのか?
「んなわきゃねぇだろうが。そんなことまで世話してたらよ、自立した後も面倒みてやんなきゃなんねぇだろうが」
その気になったら、そんなこともあいつに伝えられなくはねぇよ?
けど、一人立ちした後にそんな場面に出くわすその相手は、みんなの誰かに当てはまるはずがねぇ。
それに、必ず一対一の場面になる、だなんて言いきれねぇし、むしろそんな場面は珍しいんじゃねぇの?
一体多数になることだってあるだろうよ。
そうなったらこうしましょう、こうなったらこのようにしましょう、なんて一々指示とか出してられるかっての。
自分で工夫して切り抜けなきゃなんねぇだろ?
一人で切り抜ける、ちょうどいい予行練習になるだろうしよ。
「大体俺は、あいつの保護者じゃねぇよ。そこまで面倒見る義務はねぇ」
「アラタッテ、メンドウミガイインダカワルインダカ、ワカンナイヨネ」
「ま、アラタらしいのは変わんねぇから、安心ちゃあ安心だぃなぁ」
だからお前ら、褒めてんのか弄ってんのか判断に苦しむ反応止めろや。
「で、ラッカルちゃん、今頃何してんのかなぁ」
「手紙はしょっちゅう来てますよね。アラタさんばかりじゃなく、みんなに」
「メイス君にも届いてるってさ。メイス君言ってた」
最初の相談相手だったからな。
几帳面な奴だ。
ちなみに俺への手紙には、おかげで故郷に度々仕送りができるようになってうれしい、みたいなことが書かれてた。
思い返してみれば、ラッカルとは二、三日くらいの世話だったが、十日分くらいの疲れが溜まってる感じだ。
それからようやく解放されると思ってたんだが……。
「でもさ、この後も掲示板の世話になる新人達の監視はずっと続くからね?」
……ほんと、どうしてこんな苦労しなきゃなんねぇんだろう……。
今まで苦労した分、休ませてくれたっていいじゃねぇか。
物欲も金欲もねぇんだしよぉ……。
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