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番外編 この世界で唯一前世の記憶を持つダークエルフ編
村を出てから その2
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目が覚めた。
自分が気を失った時、どういう状況かは覚えている。
そして、今のあたしの状況も分かる。
ここは馬車の客車の中。
長椅子の上で仰向けになっている。
車内灯は点いている。
ということは、少なくとも車両は無事ってことね。
窓から見える外は暗い。
丸一日寝ていたことでなければ、二時間くらいで目が覚めたことになるんだけど、そんな短時間で目が覚めたことあったかな……?
それはそうと、何か、御者以外の人がいるんだけど。
「お? 目が覚めたな」
「良かった。これで一安心ね」
「具合はどう?」
「いきなり起きない方がいいぞ?」
見知らぬ人間の男女が二人ずつの四人がそこにいた。
「あの……えっと……」
現状は把握できたけど、あたしと一緒に馬車にいる理由が分からない。
……この馬車は、あたしが村から乗って来た馬車だと断定はできないけど……。
でも御者は変わってないし……。
「無理に起きない方がいいと思うよ? あ、俺はサルト」
いつまでも横になってるわけにはいかない。
起き上がろうとすると、サルトと名乗った男があたしを支えてくれた。
「レナードだ。あの飛竜をよく倒したもんだ」
サルトと名乗った男よりも、体格は随分と大きい。
鎧も相当頑丈そうだ。
続いて名乗ったのは女性二人。
「あたしはショーン。魔法使いよ」
「あたしはチャール。弓使い。よろしくね。……って行きずりの人によろしくってのもなんだかおかしいような?」
「マッキーさん。この四人の冒険者さん達がここに駆け付けてくれたんですよ。そして、マッキーさんを車内に運んでもらったんです」
ここに来てくれた?
ということは、村から出る時に乗っていた馬車ってことよね?
それと、御者の話の途中で、外から馬の蹄が地面を蹴る音が聞こえた。
つまり……御者も無事。
車両も無事。
馬も無事。
最低限の役目は果たせた、ってことよね。
「そ、そう……。あ、ありがと。あたしはマッキー。ご覧の通りダークエルフの……」
あたしも自己紹介しないと失礼よね。
と思ったから名乗ったんだけど、大柄の男がそれを遮ってきた。
「あ、いや、あんたのことを聞くより、体調を聞きたいんだがな」
気を失ったあたしを車内に運び込んでくれただけじゃなく、気まで遣わせちゃった。
「あ、うん。だるい感じもないし……大丈夫」
「そりゃよかった。回復の術もほとんど効かなかったからな」
え?
この疲労、術も薬も効かないんじゃなかったかな?
てことは、自然回復?
「薬と、薬の代用品で何とか回復できた感じね」
「代用品……?」
薬草か何かかな?
「俺達は、つーか、俺達も、か。あんたが落とした飛竜を討伐するために動いてたんだよ。他にも、何人もの冒険者が活動してたな。もちろん俺らの知らない所でも動いてただろうよ」
「光の矢が飛竜の頭頭に刺さって、そのまま落ちてったのを見たのよ。多分みんな見てたんじゃないかな? 見てなかったとしても、落ちた衝動が大きかったからね。気付かない人はいなかったと思うよ?」
「誰かの攻撃ってのは分かったから、誰が落としたかってんで、光の矢が放たれた場所の当たりを探してたんだよ。手配中の飛竜だから、誰かが討った魔物を他の誰かの手柄にするわけにもいかなかったからね」
「そしたらここで馬車が一台停まってたから、話を聞こうとしたら、大当たりってわけね」
なるほど。
でも冒険者って……あれ?
前世じゃ何度も聞いたことあるけど、現世では初めて聞いたような気がする。
まぁいいけど。
でも、光の矢はあたしが撃ったってのはどうやって知ったんだろ?
「御者から話は聞いたよ。撃ったら気を失うとか何とかって話してたらしいね。君を車内に運ぶのに苦労してたから手伝いがてら、本人からも話を聞いとこうと思ってね」
話……?
……村のエルフ達に知られて、それに縛られちゃいけない、ということで長老達はあたしを、父さんと一緒に見送ってくれた。
けど、この人間達に知られたら、今度はこの人間達に縛られる。
村のエルフ達と違って、前世の記憶も参考にすれば彼らはおそらく、生活基盤はどこにでも作ることができる。
ということは、逃げようにも、どこまでも追いかけて来る。
ここは何とか誤魔化そう。
今なら、ただの通りすがりの旅人で何とか抜け出せるはず。
「あ、えっと……たまたま偶然だと思います。角度とか距離とか……。それに、手配中とか何とかっての、よく分からないので……手柄なら、出払っている皆さんのものにしたらいいんじゃないでしょうか? それに、あたし、急いで大きな町の方に向かわなきゃいけないので……介抱していただいてありがとうございました。あ、あの、御者さん、急いで出発していただけます?」
四人を客車から押し出したかったけど、流石にそれは礼儀を欠いた行為。
なら、あたしが先に客車から降りる方が、丁寧な対応に見えるかな。
四人を見送るかたちにもなるし、道路の様子も確認したかったし。
「道端の木々は、全部森側に倒れたのね……」
あたしだけ先に下りて外の様子を見た。
「こっちに向かって倒れた木もありましたが、お客さんが食い止めてくれて、有り難かったです」
独り言のつもりだったけど、あたしの後に降りてきた御者さんにしっかり聞かれてた。
御者に聞かれるのはいいけどあの四人に聞かれたら、更に余計な詮索されちゃうよねぇ。
……光の弓矢を使う条件は、傍に助けてくれる人がいるだけじゃなく、面識がなくてその特別な力をそばに侍らせたがる者がいないってことも加えないといけないってことか。
「ちょっと、マッキーさん!」
「いきなり動いて大丈夫かよ?」
四人があたしを追いかけるように降りてきた。
あたしの心配をしてくれるのは有り難いけどよく知らない人達だし、あたしが求めてる相手でもなさそうだし……。
「えっと、皆さんも、あの飛竜をどうこうしてる人達と一緒にいないといけないんでしょ?」
「いけなくはないが……」
「えっと……確かに手柄は欲しいけど、横取りしてまで欲しいとは思わないのよね」
この人達……善人、なのかなぁ。
とりあえず、しばらくは単独で行動する方がいいよね。
「あ、えっと、でも……あたしはほら、襲われたらたまったもんじゃないから、威嚇してどっかに行ってもらおうと思ってただけだったから……。それに今って、寝てる時間帯だし、御者さんも夜勤の状態だから、早く到着して御者さんを休ませたいし。手柄とか何とか、ほんとによく分からないので……」
と、とりあえず何も知らない田舎者みたいな素振りをしてれば、愛想もつかしてくれるだろう。
と思ったけど……。
「そこまで言うなら……。このまま功の譲り合いしても話は進まないし、何より彼女の言う通り、御者の負担も大きくなるだろうから……」
「じゃあ現場にいるみんなで山分けってことにするか」
「そうね……。飛竜を血抜きして保存を長くしても……」
「運搬はできそうにないもんね。じゃあ飛竜の死体もこっちで引き受けていいのかしら?」
どうやら彼らとはここでお別れできそうだ。
「あ、はい。そちらにお任せします。……えっと、介抱してくれてありがとうございました。あ、もしあたしの手柄と思われるなら、その介抱のお礼として受け取っていただけたら、と」
「あ、あぁ……まぁ、そう言ってくれれば、こちらも受け取る名分もできる、な」
「じゃあそういうことで」
四人に深く頭を下げ、客車に乗り込んだ。
窓を開けて、再度お辞儀をする。
これで怪し気に感じられることもないだろう。
御者も四人に礼を言いながら、馬車は再び大きな町に向かって動き出した。
「お世話になりましたー」
窓から首を出して大きな声で礼を言う。
そこまでする必要はないだろうけど、大きな手柄をいとも簡単に譲ることに不審な思いを持たれたら、それも払しょくしておきたい。
「……でもあたしのこと、ダークエルフだからどうのってのは……一言も言ってなかったわよね……」
人を見る目、ないのかなぁ……。
自分が気を失った時、どういう状況かは覚えている。
そして、今のあたしの状況も分かる。
ここは馬車の客車の中。
長椅子の上で仰向けになっている。
車内灯は点いている。
ということは、少なくとも車両は無事ってことね。
窓から見える外は暗い。
丸一日寝ていたことでなければ、二時間くらいで目が覚めたことになるんだけど、そんな短時間で目が覚めたことあったかな……?
それはそうと、何か、御者以外の人がいるんだけど。
「お? 目が覚めたな」
「良かった。これで一安心ね」
「具合はどう?」
「いきなり起きない方がいいぞ?」
見知らぬ人間の男女が二人ずつの四人がそこにいた。
「あの……えっと……」
現状は把握できたけど、あたしと一緒に馬車にいる理由が分からない。
……この馬車は、あたしが村から乗って来た馬車だと断定はできないけど……。
でも御者は変わってないし……。
「無理に起きない方がいいと思うよ? あ、俺はサルト」
いつまでも横になってるわけにはいかない。
起き上がろうとすると、サルトと名乗った男があたしを支えてくれた。
「レナードだ。あの飛竜をよく倒したもんだ」
サルトと名乗った男よりも、体格は随分と大きい。
鎧も相当頑丈そうだ。
続いて名乗ったのは女性二人。
「あたしはショーン。魔法使いよ」
「あたしはチャール。弓使い。よろしくね。……って行きずりの人によろしくってのもなんだかおかしいような?」
「マッキーさん。この四人の冒険者さん達がここに駆け付けてくれたんですよ。そして、マッキーさんを車内に運んでもらったんです」
ここに来てくれた?
ということは、村から出る時に乗っていた馬車ってことよね?
それと、御者の話の途中で、外から馬の蹄が地面を蹴る音が聞こえた。
つまり……御者も無事。
車両も無事。
馬も無事。
最低限の役目は果たせた、ってことよね。
「そ、そう……。あ、ありがと。あたしはマッキー。ご覧の通りダークエルフの……」
あたしも自己紹介しないと失礼よね。
と思ったから名乗ったんだけど、大柄の男がそれを遮ってきた。
「あ、いや、あんたのことを聞くより、体調を聞きたいんだがな」
気を失ったあたしを車内に運び込んでくれただけじゃなく、気まで遣わせちゃった。
「あ、うん。だるい感じもないし……大丈夫」
「そりゃよかった。回復の術もほとんど効かなかったからな」
え?
この疲労、術も薬も効かないんじゃなかったかな?
てことは、自然回復?
「薬と、薬の代用品で何とか回復できた感じね」
「代用品……?」
薬草か何かかな?
「俺達は、つーか、俺達も、か。あんたが落とした飛竜を討伐するために動いてたんだよ。他にも、何人もの冒険者が活動してたな。もちろん俺らの知らない所でも動いてただろうよ」
「光の矢が飛竜の頭頭に刺さって、そのまま落ちてったのを見たのよ。多分みんな見てたんじゃないかな? 見てなかったとしても、落ちた衝動が大きかったからね。気付かない人はいなかったと思うよ?」
「誰かの攻撃ってのは分かったから、誰が落としたかってんで、光の矢が放たれた場所の当たりを探してたんだよ。手配中の飛竜だから、誰かが討った魔物を他の誰かの手柄にするわけにもいかなかったからね」
「そしたらここで馬車が一台停まってたから、話を聞こうとしたら、大当たりってわけね」
なるほど。
でも冒険者って……あれ?
前世じゃ何度も聞いたことあるけど、現世では初めて聞いたような気がする。
まぁいいけど。
でも、光の矢はあたしが撃ったってのはどうやって知ったんだろ?
「御者から話は聞いたよ。撃ったら気を失うとか何とかって話してたらしいね。君を車内に運ぶのに苦労してたから手伝いがてら、本人からも話を聞いとこうと思ってね」
話……?
……村のエルフ達に知られて、それに縛られちゃいけない、ということで長老達はあたしを、父さんと一緒に見送ってくれた。
けど、この人間達に知られたら、今度はこの人間達に縛られる。
村のエルフ達と違って、前世の記憶も参考にすれば彼らはおそらく、生活基盤はどこにでも作ることができる。
ということは、逃げようにも、どこまでも追いかけて来る。
ここは何とか誤魔化そう。
今なら、ただの通りすがりの旅人で何とか抜け出せるはず。
「あ、えっと……たまたま偶然だと思います。角度とか距離とか……。それに、手配中とか何とかっての、よく分からないので……手柄なら、出払っている皆さんのものにしたらいいんじゃないでしょうか? それに、あたし、急いで大きな町の方に向かわなきゃいけないので……介抱していただいてありがとうございました。あ、あの、御者さん、急いで出発していただけます?」
四人を客車から押し出したかったけど、流石にそれは礼儀を欠いた行為。
なら、あたしが先に客車から降りる方が、丁寧な対応に見えるかな。
四人を見送るかたちにもなるし、道路の様子も確認したかったし。
「道端の木々は、全部森側に倒れたのね……」
あたしだけ先に下りて外の様子を見た。
「こっちに向かって倒れた木もありましたが、お客さんが食い止めてくれて、有り難かったです」
独り言のつもりだったけど、あたしの後に降りてきた御者さんにしっかり聞かれてた。
御者に聞かれるのはいいけどあの四人に聞かれたら、更に余計な詮索されちゃうよねぇ。
……光の弓矢を使う条件は、傍に助けてくれる人がいるだけじゃなく、面識がなくてその特別な力をそばに侍らせたがる者がいないってことも加えないといけないってことか。
「ちょっと、マッキーさん!」
「いきなり動いて大丈夫かよ?」
四人があたしを追いかけるように降りてきた。
あたしの心配をしてくれるのは有り難いけどよく知らない人達だし、あたしが求めてる相手でもなさそうだし……。
「えっと、皆さんも、あの飛竜をどうこうしてる人達と一緒にいないといけないんでしょ?」
「いけなくはないが……」
「えっと……確かに手柄は欲しいけど、横取りしてまで欲しいとは思わないのよね」
この人達……善人、なのかなぁ。
とりあえず、しばらくは単独で行動する方がいいよね。
「あ、えっと、でも……あたしはほら、襲われたらたまったもんじゃないから、威嚇してどっかに行ってもらおうと思ってただけだったから……。それに今って、寝てる時間帯だし、御者さんも夜勤の状態だから、早く到着して御者さんを休ませたいし。手柄とか何とか、ほんとによく分からないので……」
と、とりあえず何も知らない田舎者みたいな素振りをしてれば、愛想もつかしてくれるだろう。
と思ったけど……。
「そこまで言うなら……。このまま功の譲り合いしても話は進まないし、何より彼女の言う通り、御者の負担も大きくなるだろうから……」
「じゃあ現場にいるみんなで山分けってことにするか」
「そうね……。飛竜を血抜きして保存を長くしても……」
「運搬はできそうにないもんね。じゃあ飛竜の死体もこっちで引き受けていいのかしら?」
どうやら彼らとはここでお別れできそうだ。
「あ、はい。そちらにお任せします。……えっと、介抱してくれてありがとうございました。あ、もしあたしの手柄と思われるなら、その介抱のお礼として受け取っていただけたら、と」
「あ、あぁ……まぁ、そう言ってくれれば、こちらも受け取る名分もできる、な」
「じゃあそういうことで」
四人に深く頭を下げ、客車に乗り込んだ。
窓を開けて、再度お辞儀をする。
これで怪し気に感じられることもないだろう。
御者も四人に礼を言いながら、馬車は再び大きな町に向かって動き出した。
「お世話になりましたー」
窓から首を出して大きな声で礼を言う。
そこまでする必要はないだろうけど、大きな手柄をいとも簡単に譲ることに不審な思いを持たれたら、それも払しょくしておきたい。
「……でもあたしのこと、ダークエルフだからどうのってのは……一言も言ってなかったわよね……」
人を見る目、ないのかなぁ……。
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