441 / 493
番外編 この世界で唯一前世の記憶を持つダークエルフ編
放浪中にて そしてミナミ・アラタ達と共に
しおりを挟む
賞金首になってしまった、らしい。
まぁあたしの命を狙うやつらがいるとは思えないんだけど。
でも、行商人の中にも、あたしに襲われて荷物奪われた、なんて狂言言い出して、それを真に受けた冒険者達が襲ってくるってことも考えられるよね。
ということで、依頼の目的地と思われるところに拘らないことにした。
のはいいんだけど……。
考えてみれば、行商人の身の安全を考えてやってあげてたことなんだけどな。
なのに、どうして賞金を懸けられるのか分からない。
理不尽極まりなくない?
まぁそれを、理不尽じゃなくする方法が一つあるんだけど。
命に別状はない程度で、行商人の体を標的にする、ということをやってみた。
まぁ遊び半分だから、人体を狙うつもりは全くない。
ミスって当たったらごめんね程度なもん。
って言うか、どう頑張っても当たらない場所を狙うんだけど。
それをして得することがあるかどうか。
ある。
あたしの耳にも届くようになったんだけど、依頼や何とか現象の現場付近に現われる黒いエルフっていう噂。
つまり逆を言えば、賞金首の黒いエルフは、その現場付近に現われることが多い、ってこと。
ということは、そこを狙えばあたしは囚われの身になってしまうかもしれない。
けれど、その場所に拘らなければ、あたしは捕まらずに済む。
だってあたしがいる場所ってば、林や森の中の高木の枝の影とか、あたしの肌の色のこともあって目立たない場所。
だから、その人達がいる場所から遠ざかってるし、そんな場所はあちこちにあるから探そうにも場所を絞り切れないってわけ。
となるとどうなるか。
行商人が襲われる場所は不特定だし、あたしの姿を誰も見ることはない。
だから犯人の手掛かりは、賞金がかかる原因となったあたしの特徴どころか何も得られない。
その結果、意外と自由に身動きがとれるようになった。
けれど行商人を狙う時は、周りに目撃者がいないことが絶対条件。
そんな機会に巡り合うのは、なかなか難しい。
けど、そんなタイミングを見計らうのも退屈しのぎの一つとも言える。
それにしても……。
「村を出てから五年くらいかな。四回雪が積もるのを見たから、そうなるよね……」
あたしも、いろいろ随分変わったなあ。
長老達から受け取ったお金はすでに使いきった。
村の外に出て、冒険者業のようなことをして小金稼いでたもんだから、貯金なんかできるはずもない。
その日暮らしな生活で、お金が全くないときは、野宿で日々をやり過ごす。
そして、噂を聞いてからそんな悪戯を始めてもうじき一年。
魔物から遠ざけるための威嚇をしてた頃は、行商人の安全を図るため、という大義名分があった。
それが今では……。
「誰かのために何かをする、なんてことから、すっかり遠のいたわよねえ……」
だからといって、誰かの役に立とうとするようなことも、今更なあ。
仲間の全滅の危機。
みんなの命を救うために光の弓矢を使ったら、そのみんなから切り捨てられた。
行商人達の安全のため、良かれと思ってしたことは逆手にとられ、冤罪をでっち上げられた。
村では、恐らくそうなりそうなことになる前に出ることができたから、面倒ごとにならずにすんだけど、やることなすこと、すべて裏目に出るのって……。
前世から続いてるんだよね。
「はぁ……。こんな一生を過ごしたいってこと、もう少し具体的にお願いすべきだったよね……。……ん?」
何本か高い樹木の中の一本のてっぺんから見える、どこかの町からどこかの町に繋がる道で、珍しい荷車が移動している。
何が珍しいって、二人の人間が引っ張っている。
普通、荷車を引くときって動物とか魔獣に引かせるものなのよね。
人間が荷車を引っ張ってるって、どんだけお金がないのよ。
って、あたしも人のこと言えないけどさ。
けど、一人は女性みたいね。
女性に力仕事をさせるって、男の方はどんだけ甲斐性ないのよ。
「周りに誰もいないし、ちょいとからかってみようかな」
女の方にかすり傷一つでも負わせたら、男の方は労わって休ませるんじゃないかな?
ということで放った矢が、まさかこんな長い付き合いの始まりになるなんて、この時は夢にも思わなかった。
※※※※※ ※※※※※
行商人としては普通じゃない、と思ってたのよね。
まさか商品がおにぎりだけだったとは。
けど、美味しかったし、お金で高給取りになったりしたら、それを狙う輩が出てこないとも限らない。
それにお金の価値はよく分からない。
それよりも、このおにぎりの方がよほど貴重だし、人間達にはこの価値をよく分からなそうだし。
それに……。
気配を消す道具を使ってから矢を放ったけど、それでもあたしがどこにいたかも分かってたってところがね。
それに……キシュ? とかやってたとか言うし。
そのせいなのかしらね、普通の人間の考え方とはちょっと違うところがあるのよ。
助けを求めるなら助けに行くけど、助けを求めない奴には助けに行くどころか見向きもしない、みたいなことを言うし。
他には、あたしを用心棒として雇うって言った割には、あたしを頼ろうってつもりがあまり見られないし、そういうところって、今まで言い寄ってきた冒険者達とはちょっと違うのよね。
都合のいいように振り回そうとか、危険な目に遭いそうになったら切り捨てようとか、そんなつもりもなさそうだし。
……こいつが、あたしが探している縁の相手、とは言い切れないけど……。
ミナミ・アラタって言ったっけ?
こいつの傍にいるのって……居心地は悪くないって感じよね……。
縁を切らなきゃならないってことにならない限りは、しばらくこいつと一緒に生活するのも悪くないかな、うん。
まぁあたしの命を狙うやつらがいるとは思えないんだけど。
でも、行商人の中にも、あたしに襲われて荷物奪われた、なんて狂言言い出して、それを真に受けた冒険者達が襲ってくるってことも考えられるよね。
ということで、依頼の目的地と思われるところに拘らないことにした。
のはいいんだけど……。
考えてみれば、行商人の身の安全を考えてやってあげてたことなんだけどな。
なのに、どうして賞金を懸けられるのか分からない。
理不尽極まりなくない?
まぁそれを、理不尽じゃなくする方法が一つあるんだけど。
命に別状はない程度で、行商人の体を標的にする、ということをやってみた。
まぁ遊び半分だから、人体を狙うつもりは全くない。
ミスって当たったらごめんね程度なもん。
って言うか、どう頑張っても当たらない場所を狙うんだけど。
それをして得することがあるかどうか。
ある。
あたしの耳にも届くようになったんだけど、依頼や何とか現象の現場付近に現われる黒いエルフっていう噂。
つまり逆を言えば、賞金首の黒いエルフは、その現場付近に現われることが多い、ってこと。
ということは、そこを狙えばあたしは囚われの身になってしまうかもしれない。
けれど、その場所に拘らなければ、あたしは捕まらずに済む。
だってあたしがいる場所ってば、林や森の中の高木の枝の影とか、あたしの肌の色のこともあって目立たない場所。
だから、その人達がいる場所から遠ざかってるし、そんな場所はあちこちにあるから探そうにも場所を絞り切れないってわけ。
となるとどうなるか。
行商人が襲われる場所は不特定だし、あたしの姿を誰も見ることはない。
だから犯人の手掛かりは、賞金がかかる原因となったあたしの特徴どころか何も得られない。
その結果、意外と自由に身動きがとれるようになった。
けれど行商人を狙う時は、周りに目撃者がいないことが絶対条件。
そんな機会に巡り合うのは、なかなか難しい。
けど、そんなタイミングを見計らうのも退屈しのぎの一つとも言える。
それにしても……。
「村を出てから五年くらいかな。四回雪が積もるのを見たから、そうなるよね……」
あたしも、いろいろ随分変わったなあ。
長老達から受け取ったお金はすでに使いきった。
村の外に出て、冒険者業のようなことをして小金稼いでたもんだから、貯金なんかできるはずもない。
その日暮らしな生活で、お金が全くないときは、野宿で日々をやり過ごす。
そして、噂を聞いてからそんな悪戯を始めてもうじき一年。
魔物から遠ざけるための威嚇をしてた頃は、行商人の安全を図るため、という大義名分があった。
それが今では……。
「誰かのために何かをする、なんてことから、すっかり遠のいたわよねえ……」
だからといって、誰かの役に立とうとするようなことも、今更なあ。
仲間の全滅の危機。
みんなの命を救うために光の弓矢を使ったら、そのみんなから切り捨てられた。
行商人達の安全のため、良かれと思ってしたことは逆手にとられ、冤罪をでっち上げられた。
村では、恐らくそうなりそうなことになる前に出ることができたから、面倒ごとにならずにすんだけど、やることなすこと、すべて裏目に出るのって……。
前世から続いてるんだよね。
「はぁ……。こんな一生を過ごしたいってこと、もう少し具体的にお願いすべきだったよね……。……ん?」
何本か高い樹木の中の一本のてっぺんから見える、どこかの町からどこかの町に繋がる道で、珍しい荷車が移動している。
何が珍しいって、二人の人間が引っ張っている。
普通、荷車を引くときって動物とか魔獣に引かせるものなのよね。
人間が荷車を引っ張ってるって、どんだけお金がないのよ。
って、あたしも人のこと言えないけどさ。
けど、一人は女性みたいね。
女性に力仕事をさせるって、男の方はどんだけ甲斐性ないのよ。
「周りに誰もいないし、ちょいとからかってみようかな」
女の方にかすり傷一つでも負わせたら、男の方は労わって休ませるんじゃないかな?
ということで放った矢が、まさかこんな長い付き合いの始まりになるなんて、この時は夢にも思わなかった。
※※※※※ ※※※※※
行商人としては普通じゃない、と思ってたのよね。
まさか商品がおにぎりだけだったとは。
けど、美味しかったし、お金で高給取りになったりしたら、それを狙う輩が出てこないとも限らない。
それにお金の価値はよく分からない。
それよりも、このおにぎりの方がよほど貴重だし、人間達にはこの価値をよく分からなそうだし。
それに……。
気配を消す道具を使ってから矢を放ったけど、それでもあたしがどこにいたかも分かってたってところがね。
それに……キシュ? とかやってたとか言うし。
そのせいなのかしらね、普通の人間の考え方とはちょっと違うところがあるのよ。
助けを求めるなら助けに行くけど、助けを求めない奴には助けに行くどころか見向きもしない、みたいなことを言うし。
他には、あたしを用心棒として雇うって言った割には、あたしを頼ろうってつもりがあまり見られないし、そういうところって、今まで言い寄ってきた冒険者達とはちょっと違うのよね。
都合のいいように振り回そうとか、危険な目に遭いそうになったら切り捨てようとか、そんなつもりもなさそうだし。
……こいつが、あたしが探している縁の相手、とは言い切れないけど……。
ミナミ・アラタって言ったっけ?
こいつの傍にいるのって……居心地は悪くないって感じよね……。
縁を切らなきゃならないってことにならない限りは、しばらくこいつと一緒に生活するのも悪くないかな、うん。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる