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シアンの婚約者編
婚約者の候補って その1
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「ヨウミー。昼飯の注文行ってくるけど、何がいい? みんなからは何か注文あったか?」
「あたし、麺類がいいな。暖かい物なら何でもいいよ。不在のみんなからは……このメモに書いてる」
「え? もうそんな時間? あたし、丼物がいいかなー」
「俺はぁ……んー……ヨウミと同じでいいやな」
「私はお魚の定食をよろしくお願いします」
全員がダンジョンのガイドをしてるとは限らない。
今日はコーティとミアーノとクリマーが残っていた。
と言っても、ヨウミの手伝いをしてたのはクリマー一人。
他の二人は雪遊びに興じていた。
ま、そんな息抜きもいいんじゃね?
もうじき息が抜けない事態になるだろうけどな。
……シアン一行が来る、ただそれだけのことなんだが。
お忍びだったら気楽に構えても構わないんだが、親衛隊が七人ってのがな。
そしてもう一人ってのも気になる。
「おう、んじゃこのメモと、麺類適当に二つ、魚の定食と丼物な? 行ってくら」
俺はどうしようかな。
雪が降る寒い中だから……。
……鍋焼きうどん、なんてあったかなぁ。
※※※※※ ※※※※※
注文して戻ってくると、やはりいた。
気配の通り、シアンと親衛隊の七人。
そして見慣れない女性が、シアンに親し気にくっついている。
そして、ダンジョンから戻ってきた仲間らと居残りの全員が俺を睨んでいる。
何か悪いことしたか?
「ちょっとアラタ! シアンが来たことくらい分かってたんじゃないの?!」
雪道を往復した俺に、そんな乱暴な口調ってどうよ。
寒い中長い距離を徒歩で来たんだぞ?
お疲れ、くらいの一言があってもいいじゃねぇかよ。
「まぁ、分かってたけど」
「分かってたんなら教えなさいよ!」
「いや、シアンだって、来る時は通話機で報せてたじゃねぇか」
いつも、じゃないけどな。
「いや、今回は私が悪い。済まなかったね、ヨウミ。で、この時間帯だ。せっかくだから昼ご飯を一緒にしたいんだが、いいかな?」
「え? えっと……い、いいんじゃない、かな? あ、罰としてアラタにもう一度注文に行ってもらいましょうか」
俺に降るな。
雪も降るな。
「いや、それは流石に悪い。ルーミラ、悪いがみんなから注文を聞いて、ドーセンの店に行ってくれないか?」
「はい、心得ました」
親衛隊は、俺らにはくだけた感じだが流石にシアンには立場弁えた言い方しなきゃならんか。
ま、そっちにゃそっちの事情ってもんがあるんだろうな」
「で……あ、ところでそちらのお嬢さんは?」
シアンに親し気な感じにしてたその女性は仲間達の方に顔を向けた途端、急に瞳が輝かせて興奮しているような感情の気配が感じ取れた。
ちなみにこんな季節には、ちょっと寒そうな気がするくらいの華やかな衣装。
防寒具は毛糸の帽子とマフラーと手袋くらい……あ、もこもこしてそうな長靴もあるか。
どこぞの貴族か何かか?
「あぁ、今日ここに来たのはそのことが本題だったんだよ。紹介しよう。フレイミー=ヨアンナ。王家を支える十二貴族のヨアンナ家のご息女で、私の婚約者候補の一人だ」
……はい?
「えー?!?!」
と、真っ先に大声で驚いたのは、他でもない、イールだった。
つか、まだいたのかお前。
「た……ただでさえ皇帝陛下がいらっしゃるってだけで腰が抜けそうなのに、婚約者……で、候補の一人……って……」
うん。
俺も、婚約者に候補が何人もいるってのは驚きだが、その一人を連れてくるってのもどうかと思う。
他の候補者に悪いとは思わんのか?
というか……イール……。
「えっと……貴女は……?」
うん。
突然部外者からのコメントがくりゃ、誰でも不審がるわな。
「は、はい。イールと申します! しがない冒険者をしていて……」
「この店の常連の一人だ。気にするな」
幸い店に並ぶ客もなし。
まぁ当然か。
この寒い気温の中、行列を作ってまで順番を待つってのもな。
そこまで俺のおにぎりに価値はなかろうし。
「そ、そうか。いや、一つだけ訂正してほしいのだが……」
「は、はいっ! 何でしょうか、皇帝陛下!」
「……できれば、皇帝じゃなくて、国王陛下、と呼んでもらいたいものだが……」
俺とシアンの思いは一緒。
……なんかやだな、このフレーズ。
で、イールは顔を真っ赤にして俯いている。
で、ヨウミをはじめとする俺の仲間達は、このやり取りの展開について来れず、ポカンとしている。
「あ、あの、そろそろよろしいでしょうか。ご紹介に預かりました、フレイミー=ヨアンナ、と申します」
自己紹介の段になると、その感情は急に落ち着いて、きちんと気を付けをした状態から丁寧なお辞儀をするその女性。
長身のシアンより二十センチは低いか。
そんな体でお辞儀をするもんだから、さらに何となく小さい感じがする。
お辞儀をした時に見えた、毛糸の帽子に隠れていた髪の毛は金髪。
髪の毛はそんなに長くはないな。
「で、こんな場所で立ち話もなんだ。いつもの場所で食事会……は……この雪では無理か?」
なんか、もう一緒に食うつもりだったのか。
まぁいいけどよ。
「簡単なテントを作ってる。温泉があるだろ? あの暖気を暖房代わりにしててな」
一緒に飯を食う、ってのは、なかなか侮れないんだよな。
連帯感が強まるっつーか。
まぁ、個々でボソボソ食ってても楽しくも何ともねぇしな。
「あたし、麺類がいいな。暖かい物なら何でもいいよ。不在のみんなからは……このメモに書いてる」
「え? もうそんな時間? あたし、丼物がいいかなー」
「俺はぁ……んー……ヨウミと同じでいいやな」
「私はお魚の定食をよろしくお願いします」
全員がダンジョンのガイドをしてるとは限らない。
今日はコーティとミアーノとクリマーが残っていた。
と言っても、ヨウミの手伝いをしてたのはクリマー一人。
他の二人は雪遊びに興じていた。
ま、そんな息抜きもいいんじゃね?
もうじき息が抜けない事態になるだろうけどな。
……シアン一行が来る、ただそれだけのことなんだが。
お忍びだったら気楽に構えても構わないんだが、親衛隊が七人ってのがな。
そしてもう一人ってのも気になる。
「おう、んじゃこのメモと、麺類適当に二つ、魚の定食と丼物な? 行ってくら」
俺はどうしようかな。
雪が降る寒い中だから……。
……鍋焼きうどん、なんてあったかなぁ。
※※※※※ ※※※※※
注文して戻ってくると、やはりいた。
気配の通り、シアンと親衛隊の七人。
そして見慣れない女性が、シアンに親し気にくっついている。
そして、ダンジョンから戻ってきた仲間らと居残りの全員が俺を睨んでいる。
何か悪いことしたか?
「ちょっとアラタ! シアンが来たことくらい分かってたんじゃないの?!」
雪道を往復した俺に、そんな乱暴な口調ってどうよ。
寒い中長い距離を徒歩で来たんだぞ?
お疲れ、くらいの一言があってもいいじゃねぇかよ。
「まぁ、分かってたけど」
「分かってたんなら教えなさいよ!」
「いや、シアンだって、来る時は通話機で報せてたじゃねぇか」
いつも、じゃないけどな。
「いや、今回は私が悪い。済まなかったね、ヨウミ。で、この時間帯だ。せっかくだから昼ご飯を一緒にしたいんだが、いいかな?」
「え? えっと……い、いいんじゃない、かな? あ、罰としてアラタにもう一度注文に行ってもらいましょうか」
俺に降るな。
雪も降るな。
「いや、それは流石に悪い。ルーミラ、悪いがみんなから注文を聞いて、ドーセンの店に行ってくれないか?」
「はい、心得ました」
親衛隊は、俺らにはくだけた感じだが流石にシアンには立場弁えた言い方しなきゃならんか。
ま、そっちにゃそっちの事情ってもんがあるんだろうな」
「で……あ、ところでそちらのお嬢さんは?」
シアンに親し気な感じにしてたその女性は仲間達の方に顔を向けた途端、急に瞳が輝かせて興奮しているような感情の気配が感じ取れた。
ちなみにこんな季節には、ちょっと寒そうな気がするくらいの華やかな衣装。
防寒具は毛糸の帽子とマフラーと手袋くらい……あ、もこもこしてそうな長靴もあるか。
どこぞの貴族か何かか?
「あぁ、今日ここに来たのはそのことが本題だったんだよ。紹介しよう。フレイミー=ヨアンナ。王家を支える十二貴族のヨアンナ家のご息女で、私の婚約者候補の一人だ」
……はい?
「えー?!?!」
と、真っ先に大声で驚いたのは、他でもない、イールだった。
つか、まだいたのかお前。
「た……ただでさえ皇帝陛下がいらっしゃるってだけで腰が抜けそうなのに、婚約者……で、候補の一人……って……」
うん。
俺も、婚約者に候補が何人もいるってのは驚きだが、その一人を連れてくるってのもどうかと思う。
他の候補者に悪いとは思わんのか?
というか……イール……。
「えっと……貴女は……?」
うん。
突然部外者からのコメントがくりゃ、誰でも不審がるわな。
「は、はい。イールと申します! しがない冒険者をしていて……」
「この店の常連の一人だ。気にするな」
幸い店に並ぶ客もなし。
まぁ当然か。
この寒い気温の中、行列を作ってまで順番を待つってのもな。
そこまで俺のおにぎりに価値はなかろうし。
「そ、そうか。いや、一つだけ訂正してほしいのだが……」
「は、はいっ! 何でしょうか、皇帝陛下!」
「……できれば、皇帝じゃなくて、国王陛下、と呼んでもらいたいものだが……」
俺とシアンの思いは一緒。
……なんかやだな、このフレーズ。
で、イールは顔を真っ赤にして俯いている。
で、ヨウミをはじめとする俺の仲間達は、このやり取りの展開について来れず、ポカンとしている。
「あ、あの、そろそろよろしいでしょうか。ご紹介に預かりました、フレイミー=ヨアンナ、と申します」
自己紹介の段になると、その感情は急に落ち着いて、きちんと気を付けをした状態から丁寧なお辞儀をするその女性。
長身のシアンより二十センチは低いか。
そんな体でお辞儀をするもんだから、さらに何となく小さい感じがする。
お辞儀をした時に見えた、毛糸の帽子に隠れていた髪の毛は金髪。
髪の毛はそんなに長くはないな。
「で、こんな場所で立ち話もなんだ。いつもの場所で食事会……は……この雪では無理か?」
なんか、もう一緒に食うつもりだったのか。
まぁいいけどよ。
「簡単なテントを作ってる。温泉があるだろ? あの暖気を暖房代わりにしててな」
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