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『法具店アマミ』再出発編 第十章 店主が背負い込んだもの
店主 昔語り そして夜が更ける
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「……テンシュ、すごいな」
「……褒めるとこなんざねぇよ。何にもねぇ」
「私よりは、すごいよ」
店主の額と頭を撫でるのを止め、仰向けの店主と同じ方を向く。
「ウィリックの、憧れのお兄ちゃんのことを今でも思い出す時がある」
セレナはそう言うとまた体を横向きにして店主の方を見る。
「この世界はね、生きてる者が死んだら、その魂、……心は天に昇って、またこの世界に生まれ変わるの。でもね、心でいつも想ってる相手がいたら、その相手に寄り添えるの」
セレナの声が次第に籠っていく。
店主の耳に入っていないかもしれない。
それでも、セレナの話は続く。
「亡くなった者の心の中に、想い人がいなければ、その肉体を脱ぎ捨てて次の生に生まれ変わるの。……お兄ちゃんと一緒に過ごす時間がもっと長かったら、ずっと一緒に居れたかもしれないって、まだ思ってる」
店主は仰向けのまま目を閉じている。だが眠ってはいない。
そしてセレナはそれを実感している。そんな店主に聞いてもらいたい。
感想はいらない。ただ、ただ聞いてもらいたい。
そんな思いを持ちながら、セレナはその先を続ける。
「私はお兄ちゃんのことをまだ思い出す時があるよ。でもそれよりももっとずっと長く、テンシュはその人に尊敬しながら思い続けて……。それでも他の人に、あんな風に手を伸ばしてたんだね。そして私にもシャワー貸してくれて、傷薬までつけてくれて……。私には無理だった。そんな余裕なかったよ。お兄ちゃんの敵討ち、別のやり方はないだろうかって、そんな気持ちも残ってた」
セレナは突然店主にしがみつき、そのまま全身をかすかに震わせる。
「テンシュ、急にどこかにいなくなったら嫌だからね? あの子供達も、客達も、みんなテンシュの事頼りにしてるし……。その人が急にいなくなったのは、その人がテンシュに優しかったから。テンシュもみんなに優しいもの。無愛想だったり突き放したりするようなことを言ってても、それが本音だったらあんなに子供達集まらないよ。お客さん達だって、私だって……。……私も、テンシュみたいに、強くなり」
「……もう寝ろ。明日も、いつものように早ぇぞ」
セレナの話を強引に打ち切る店主。
それは、これからの毎日も今までと変わらない日常を送るつもりでいる意思の表れだった。
それでもセレナは、店主が普段の気まぐれな行動を起こしふらりとこの場所からいなくなるような気がして、その場から離れることに不安を感じる。
「うざってぇな。さっきも言ったろ。あの人を探すにしてもあてはねぇ。生きているかどうかも分からねぇ。やれることっつったら、あんな悲しい人を増やさないようにするってことしかねぇんだよ。せめてあいつらが、自分の力で助けを求められるようにな」
店主は言い終わってセレナの方をようやく向く。
「泣いてんのはどっちだよ。とっとと自分の部屋に戻れ。……仕事ほっぼり出してまでどっかに行こうなんて思っちゃいねぇよ。それに今更こんな話聞いたって何も変わりゃしねぇよ。大体お前が心配することは、俺にはいつでも出来たことなんだよ。話聞いたからってそれが決め手になるこたぁねぇよ」
店主の体に自分の顔を埋めっぱなしのセレナは、そのまま首を横に振る。
店主は追い出すことを諦める。
「んじゃ好きにしろ。ただし安眠妨害すんじゃねぇ。寝られねぇところには、それこそいたくねぇしな」
自分の寝間着の裾がさらに強く握られるのを感じながら、店主は静かに眠りについた。
「……褒めるとこなんざねぇよ。何にもねぇ」
「私よりは、すごいよ」
店主の額と頭を撫でるのを止め、仰向けの店主と同じ方を向く。
「ウィリックの、憧れのお兄ちゃんのことを今でも思い出す時がある」
セレナはそう言うとまた体を横向きにして店主の方を見る。
「この世界はね、生きてる者が死んだら、その魂、……心は天に昇って、またこの世界に生まれ変わるの。でもね、心でいつも想ってる相手がいたら、その相手に寄り添えるの」
セレナの声が次第に籠っていく。
店主の耳に入っていないかもしれない。
それでも、セレナの話は続く。
「亡くなった者の心の中に、想い人がいなければ、その肉体を脱ぎ捨てて次の生に生まれ変わるの。……お兄ちゃんと一緒に過ごす時間がもっと長かったら、ずっと一緒に居れたかもしれないって、まだ思ってる」
店主は仰向けのまま目を閉じている。だが眠ってはいない。
そしてセレナはそれを実感している。そんな店主に聞いてもらいたい。
感想はいらない。ただ、ただ聞いてもらいたい。
そんな思いを持ちながら、セレナはその先を続ける。
「私はお兄ちゃんのことをまだ思い出す時があるよ。でもそれよりももっとずっと長く、テンシュはその人に尊敬しながら思い続けて……。それでも他の人に、あんな風に手を伸ばしてたんだね。そして私にもシャワー貸してくれて、傷薬までつけてくれて……。私には無理だった。そんな余裕なかったよ。お兄ちゃんの敵討ち、別のやり方はないだろうかって、そんな気持ちも残ってた」
セレナは突然店主にしがみつき、そのまま全身をかすかに震わせる。
「テンシュ、急にどこかにいなくなったら嫌だからね? あの子供達も、客達も、みんなテンシュの事頼りにしてるし……。その人が急にいなくなったのは、その人がテンシュに優しかったから。テンシュもみんなに優しいもの。無愛想だったり突き放したりするようなことを言ってても、それが本音だったらあんなに子供達集まらないよ。お客さん達だって、私だって……。……私も、テンシュみたいに、強くなり」
「……もう寝ろ。明日も、いつものように早ぇぞ」
セレナの話を強引に打ち切る店主。
それは、これからの毎日も今までと変わらない日常を送るつもりでいる意思の表れだった。
それでもセレナは、店主が普段の気まぐれな行動を起こしふらりとこの場所からいなくなるような気がして、その場から離れることに不安を感じる。
「うざってぇな。さっきも言ったろ。あの人を探すにしてもあてはねぇ。生きているかどうかも分からねぇ。やれることっつったら、あんな悲しい人を増やさないようにするってことしかねぇんだよ。せめてあいつらが、自分の力で助けを求められるようにな」
店主は言い終わってセレナの方をようやく向く。
「泣いてんのはどっちだよ。とっとと自分の部屋に戻れ。……仕事ほっぼり出してまでどっかに行こうなんて思っちゃいねぇよ。それに今更こんな話聞いたって何も変わりゃしねぇよ。大体お前が心配することは、俺にはいつでも出来たことなんだよ。話聞いたからってそれが決め手になるこたぁねぇよ」
店主の体に自分の顔を埋めっぱなしのセレナは、そのまま首を横に振る。
店主は追い出すことを諦める。
「んじゃ好きにしろ。ただし安眠妨害すんじゃねぇ。寝られねぇところには、それこそいたくねぇしな」
自分の寝間着の裾がさらに強く握られるのを感じながら、店主は静かに眠りについた。
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