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『法具店アマミ』再出発編 第十章 店主が背負い込んだもの
『法具店アマミ』の休暇の日
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翌朝の起床時間。
この国にも四季はあるが、日の出の時間はあまり変わらない。
店主はその日の出の時間の少し前、午前五時頃に寝室から出て来て雑用を始める。
遅れること三十分、セレナが起床。引っ越す前からそんな生活サイクル。
押し掛けてきたシエラは、弟子という立場を弁え、店主の一時間前に起床。居間の掃除を音を立てずに店主の起床時間前までに終わらせる。
そして店舗の掃除に取り掛かる。これは引っ越してからも変わらない。
が、この日は店主の寝室で眠ったセレナが、テンシュがまだ眠っている時間に目が覚めた。
もちろん、目覚めたら店主がいなくなっていたということを恐れのあまり、眠りが浅かったためである。
しかしその心配も被害妄想というものなのだろうか、店主は隣で寝息を立てている。
セレナはこっそりと寝室を出る。
休日なしの仕事をしている店主がゆっくり休める時間は睡眠時間しかない。
その安息の時間を邪魔するようなこともしたくないし、いなくなる心配もなさそうな寝顔。
なにより、店主の寝室から出てくるところをシエラに見られたら、何を言われるか分からない。
静かに寝室のドアを閉じる。
「あれ? 随分早いんですね。お早うございます、セレナさん」
「うわあっ!」
小声で声をかけてきたのはシエラ。しっかりと掃除道具を手にしている。
いつもシエラが掃除をする時間になっていた。
セレナは誰もいないと思っていた方向から突然話しかけられるものだから、聞き覚えがある声だったとしても思わず驚きの声は出てしまう。
「あれ? テンシュの部屋で何してたんですか?」
見られたくない相手に見られてしまった、店主の部屋から出てくる姿。
「え、えーと、ほ、ほら、アレだよ、アレ。ということでちょっと失礼するねー」
「いやいや、店主の部屋で……あ、店主に何か異常ありました?!」
働かない頭を使って言葉を出しても、それで誤魔化せるわけがない。
セレナは慌てて部屋に入ろうとするシエラを抑える。
「う、ううん。な、何にもなかったから。い、いつもと変わらなかったから安心していいよ。ほ、ほら、この店年中無休だし」
「あ、あぁそっか。セレナさんもテンシュと仲良くしたいときがあるでしょうからねー。ちょっとうらやましいけど、私、間に割って入れる立場じゃありませんからねぇ」
「い、いや、えーと、そういうことでもないんだけど」
白い肌の顔が一気に赤く染まるセレナ。
まさしくお湯が沸きそうなくらいゆで上がってるんじゃないかと思えるほど。
「それにしても不思議ですよぇ。なんで寝室一緒にしなかったのかって」
「え?」
「え?」
セレナの指先まで赤くなる。その様子を見てシエラは驚く。
「……えっと……結婚……してるんじゃなかったの?」
「け、けけっ、結婚て、き、急すぎるわよっ!」
「してなかったんですか?! ってか急って、その気はあるんですね……。って、まさか、婚前交しょ……」
「違うわっ!」
思いっきり否定するセレナ。
しかしその直後に店主の言った言葉が蘇る。
『こうして暮らすのも何かの縁だ。だがいつかは切れる。必ず切れる』
どうして昨夜、このことに気付かなかったのだろう。
赤くなった顔色は通常に戻る。
しかしその表情も、昨夜の時に戻ってしまった。
テンシュなら、縁が切れてしまったら、割り切ることが出来るだろう。
しかしそれでもまだ悔いている縁がその心に絡みついている。
絡みついているからこそ、それを教訓とすることが出来ているのだろう。
絡みついているからこそ、恐らくは今日も朝早くにやって来る子供達に手を差し伸べながらも、部を弁えた者達にはドライな反応を見せることが出来るのだろう。
「……ねぇ、シエラちゃん」
「はい? て言うか、今日、セレナさん、変ですよ? 何かありました?」
「……この店って年中無休だよね。何日かくらいまとめてお店休みにして、テンシュも休んでもらって、一緒にどこかおでかけしてみない?」
「……はい?」
セレナの行動と心の動きを終始知らないシエラは、彼女が何を言いたいのか分からずぽかんとする。
この国にも四季はあるが、日の出の時間はあまり変わらない。
店主はその日の出の時間の少し前、午前五時頃に寝室から出て来て雑用を始める。
遅れること三十分、セレナが起床。引っ越す前からそんな生活サイクル。
押し掛けてきたシエラは、弟子という立場を弁え、店主の一時間前に起床。居間の掃除を音を立てずに店主の起床時間前までに終わらせる。
そして店舗の掃除に取り掛かる。これは引っ越してからも変わらない。
が、この日は店主の寝室で眠ったセレナが、テンシュがまだ眠っている時間に目が覚めた。
もちろん、目覚めたら店主がいなくなっていたということを恐れのあまり、眠りが浅かったためである。
しかしその心配も被害妄想というものなのだろうか、店主は隣で寝息を立てている。
セレナはこっそりと寝室を出る。
休日なしの仕事をしている店主がゆっくり休める時間は睡眠時間しかない。
その安息の時間を邪魔するようなこともしたくないし、いなくなる心配もなさそうな寝顔。
なにより、店主の寝室から出てくるところをシエラに見られたら、何を言われるか分からない。
静かに寝室のドアを閉じる。
「あれ? 随分早いんですね。お早うございます、セレナさん」
「うわあっ!」
小声で声をかけてきたのはシエラ。しっかりと掃除道具を手にしている。
いつもシエラが掃除をする時間になっていた。
セレナは誰もいないと思っていた方向から突然話しかけられるものだから、聞き覚えがある声だったとしても思わず驚きの声は出てしまう。
「あれ? テンシュの部屋で何してたんですか?」
見られたくない相手に見られてしまった、店主の部屋から出てくる姿。
「え、えーと、ほ、ほら、アレだよ、アレ。ということでちょっと失礼するねー」
「いやいや、店主の部屋で……あ、店主に何か異常ありました?!」
働かない頭を使って言葉を出しても、それで誤魔化せるわけがない。
セレナは慌てて部屋に入ろうとするシエラを抑える。
「う、ううん。な、何にもなかったから。い、いつもと変わらなかったから安心していいよ。ほ、ほら、この店年中無休だし」
「あ、あぁそっか。セレナさんもテンシュと仲良くしたいときがあるでしょうからねー。ちょっとうらやましいけど、私、間に割って入れる立場じゃありませんからねぇ」
「い、いや、えーと、そういうことでもないんだけど」
白い肌の顔が一気に赤く染まるセレナ。
まさしくお湯が沸きそうなくらいゆで上がってるんじゃないかと思えるほど。
「それにしても不思議ですよぇ。なんで寝室一緒にしなかったのかって」
「え?」
「え?」
セレナの指先まで赤くなる。その様子を見てシエラは驚く。
「……えっと……結婚……してるんじゃなかったの?」
「け、けけっ、結婚て、き、急すぎるわよっ!」
「してなかったんですか?! ってか急って、その気はあるんですね……。って、まさか、婚前交しょ……」
「違うわっ!」
思いっきり否定するセレナ。
しかしその直後に店主の言った言葉が蘇る。
『こうして暮らすのも何かの縁だ。だがいつかは切れる。必ず切れる』
どうして昨夜、このことに気付かなかったのだろう。
赤くなった顔色は通常に戻る。
しかしその表情も、昨夜の時に戻ってしまった。
テンシュなら、縁が切れてしまったら、割り切ることが出来るだろう。
しかしそれでもまだ悔いている縁がその心に絡みついている。
絡みついているからこそ、それを教訓とすることが出来ているのだろう。
絡みついているからこそ、恐らくは今日も朝早くにやって来る子供達に手を差し伸べながらも、部を弁えた者達にはドライな反応を見せることが出来るのだろう。
「……ねぇ、シエラちゃん」
「はい? て言うか、今日、セレナさん、変ですよ? 何かありました?」
「……この店って年中無休だよね。何日かくらいまとめてお店休みにして、テンシュも休んでもらって、一緒にどこかおでかけしてみない?」
「……はい?」
セレナの行動と心の動きを終始知らないシエラは、彼女が何を言いたいのか分からずぽかんとする。
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