王子様より素敵な人

ミツビリア*

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恋のライバル関係

お茶会は波乱な予感

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 ジトーッとした朝は、寝心地も悪い。
ふぁああとあくびを漏らしながら、ファルに着替えを手伝って貰う。

 カインのイベント(白銀の月夜に)が発生するのはいつになるかわからないので、あの後から一カ月した雨上がりの季節、カインには内緒で犯人となる、ある侯爵の娘と侯爵を追っている。


 今日は、その侯爵の娘が開くお茶会へと招かれたので、さっそくルンルンと鼻歌混じりに髪のセットアップをして貰う。いつもと違って、髪を流さずに横に結って貰った。

「今日はカナサーディン侯爵令嬢、サルディーナ様が開くお茶会ですわ。カイン様の幼馴染ですわね、是非仲良くさせて頂きましょうね」

「えぇ、わかっているわファル。失礼の無いように私、頑張るから!」


 一通り準備も終わり、一息ついた頃。

何やらドタバタとファルが慌ただしい。

「ファルー?どうしたの?」

 お菓子のクッキーを摘みながら、ファルを眺める。

「えっと…お嬢様、あの、カイン様が…」

「えッ……カイン?!何?今日はお茶会に参加するからと断ったはずよ?!」

「それがー…私は存じませんが」

どうしても、と。
ファルが申し訳なさそうに言う。
 普通は、断りを入れてから相手に会いに行くのだが、今回はバーバジニ家も知らない事だったらしい。





******



「…それで、何で来たのです?カイン」

 ファルは気を遣って出て行ったので、どうしても不思議に思っていることを話す。

「突然、訪問したのは悪かった…忠告と共にお願いがしたくてね。それと、フィーシアの顔見たさだ」

 赤面しつつ、頰を少し掻きながらカインは話す。
よく見ると、カインの格好はパーティ向けの衣装だ。彼の瞳と同じ蒼色をモチーフとした、華やかな衣装である。

「?カイン…今日は貴方もパーティーなのですの?」

「こっこれは!違って…フィーシアに付いていこうと思って。それが今日のお願いなんだ」

(…お願い?ま、まさか!あれだけの告白をしておいて、実はサルディーナさんの方が良いの?!会いに行くために付いてくるの?!)

 頭の中にカインとサルディーナ(会ったことないけど)のラブラブとした光景がぐるぐると巡る。

「___………だから、フィーシアも気をつけて?フィーシア、さっきから虚ろだけど、聞こえてる?」

「はっ!な、なんでしたか?おほほ…」

「だから、サルディーナには気をつけてっ話だよ。アイツ、俺…じゃなくて僕と仲良い子を執拗に虐めてくるんだよ、だからこそ僕は一緒に行くんだ。いい?」

「え、えぇ。お茶会に一緒に参加してくれるのは嬉しいですけど…」

やっぱりか。この性格はゲームとの設定と相変わらずだ。

 サルディーナ・カナサーディン侯爵令嬢。
 彼女はゲームの中のフィーシアの友人の一人であった。

 思い出す限りではあるが。
 フィーシアはカインの事などゲームでは眼中にも入れてない為、カインルートの悪役令嬢であり、そしてカインの婚約破棄を自ら求めたフィーシアに密かにカインの代わりに復讐を望んでいた。
 アルビノという稀な容姿が、幼少期は酷くコンプレックスとして抱え込んでいたが、同い年で幼馴染のカインが褒めたことで、自分の容姿と向き合いカインに心を強く惹かれるようになっていった。
 ゲームではヒロインがカインと仲良くなるイベントを障害として邪魔をして、最後の最後"白銀の月夜に"イベントではカインサブイベントコンプリートが最低条件とし、裏エンディングとして発生する。
 拉致したカインに致死量の毒を飲ませ、自らも一緒に服毒死するはずだった。しかし、カインに毒を飲ませた所で他の攻略対象達がヒロインの選択次第で助っ人として入る。
 追い詰められたサルディーナは予定通り、カインが拘束されている側で服毒し、カインを慈しみながら毒死する。
そしてカインは毒は飲まされたが、奇跡的に身体の機能は衰えておらず、植物状態となる。
 そして一時的に目覚めると、学園を卒業してからも看病していた主人公を見つめ、愛の言葉を語りまた長い眠りへとつく……_____というのが裏カインルートの一連の流れである。

 まぁ、これは裏エンディングで、本来の普通エンディングならば普通に植物状態とかも無しでカインは健康的に終わる。まぁ、サルディーナもこのまま行けば残念ながらさよならバイバイになってしまうが。違いは好感度マックスか、そうではないかというだけなのだが、カインの最後の謎(ある意味核心)を裏エンディングでは入れないとは、製作陣たちの強い思い入れがある意味感じられる。

(だからこそ、未来の旦那さんを守るんだけどね!)

 まずは王子も毒のことを勘付いているそうだし、予め毒のことに関しては話しておいた。少し、怪しまれたけどね。

「あっ!そういえば、殿下から貰った防御指輪があるので、大抵の事は平気ですわよ?」

「?!シアンの事か!アイツ…黙っていれば余計なことを…それで、どんな指輪?」

 カインの表情がニコォと深まっていく。なんだか背筋が凍りそう。

「えっと…これですわよ?デザインも素晴らしいですわよね!」

 手袋を外して、メッセージ入りだったあの黄色い指輪を見せる。なんと、あれはメッセージの他に、通信機能、防御などの効果が付与されていたらしく、王子の声が脳内に響いた時は心臓止まるかと…

『ふーん…魔道具を加工した指輪か…アイツ、いつこんなの作ってたんだよ、ていうかフィーシアに気に入ら…』

 小声でゴニョゴニョとカインが唸っているが、聞き取れない。

「フィーシア、この指輪に魔力を流したいけど良いかな?」

「別に良いですわよ…ってやっぱり無しですわ!!」

(そうだ、魔力を流すとメッセージがバレる!)

危ない、危ない。これでバレたら調査の意味ないよ。

「どうして?婚約者なんだから、ほらほら隠し事は駄目だよー」 「あ!」

 スルッと指から指輪が抜ける。カインの指先に指輪があった。

 すぐさま蒼色の光がカインの指から溢れ出す。

「ん?[カインには内緒で送ったけど、今の気分はどう?]って!あのやろ…防御機能とそれから、つ、通信機能?!フィーシア?!」

「は、はいぃ!」
「これはいつ貰ったんだい?他の男から貰ったモノがあれば、僕に言うんだよ?僕が片付けるショブンするからね?」

(今、本音が聞こえたような?)

「えっえと、一ヶ月前くらいですわね…?」

 目を逸らしがちになるが、グッと堪える。

「ふーん、だとするとパーティーの後…そう!それならいいんだよ」

 考え込むように、唸っていたが、やがて暗黒のオーラが消え、無邪気な笑顔を見せた。

コンコン。

ノックの音がカインの次の声を遮る。

「…ではでますわ。どうぞ、いいですわよ。!まぁ、ケイ様ですわね!お久しぶりですわ!」

 正しく執事の礼を取りながら入ってきたのは、カイン付きの執事、ケイさんである。
 このケイさん、爽やか美青年だが意外と女性の噂が絶えない人でもある…

「失礼します。えぇ、こちらこそお久しぶりですね。我が主が迷惑かけていませんでしょうか?さて、お茶会に出かける手配を整えました。フィーシア様と我が主、カイン様は一緒にご乗車頂きますよう」

 どうぞ、とケイさんの手を借りながら椅子から立ち上がる。

 カインがムスッとして、ケイさんがニヘッとしていた気がするが、多分気のせいだろう。

玄関の大きな扉がガタンと開かれる。

さあ、お茶会の幕開けだ。


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