『転移先は公爵家の寝室でしたが、地味執事なので静かに守護します

トンカツうどん

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異世界転移、そしてアラート発動
佐々木拓海、17歳。
横浜在住の普通の高校二年生。
趣味は隠密系アクションゲームの周回とサバイバルゲーム。
無駄に隠れる技術と、防災士資格を持つインドア寄りアウトドア人間だ。
そんな俺が、ある日の帰り道――トラックに撥ねられた。
目を開けた瞬間、視界は闇。
……いや、違う。
厚手の絨毯の上。
背中に感じるのは柔らかなクッション。
天蓋付きの大きなベッドが部屋の中央にあり、金装飾のシャンデリアが月光を反射している。
どう見ても俺の部屋じゃない。
どうやら――寝室の隅、来客用の長椅子の前に転がされているらしい。
「…………は?」
起き上がった瞬間、甘い香りが鼻をかすめた。
視線の先。
月光に照らされたベッドの上に、白銀の長髪を揺らす女性がいる。
年の頃は二十五前後。
白いネグリジェを纏い、気品と静謐を宿した姿。
その瞳が、俺を捉えた。
そして。
「きゃあああああああああ!!」
絶叫。
「待て待て待て! 俺も状況が分からん!!」
だが遅い。
廊下から足音。重装備の衛兵が突入してくる。
――アラート状態、発令。
反射的に長椅子の陰へ転がり込み、さらに床下へ滑り込む。
心拍数を落とせ。
呼吸を整えろ。
(くそ……ルミエラのやつ……!)
数分前。
青髪のポンコツ女神――ルミエラ。
「転移ボーナスどうする~?」
「……トンファー」
「地味!」
「うるさい」
そして座標ミス。
「ちょっとズレちゃった☆」
その結果がこれだ。
今、寝室は完全包囲。
俺は床下から這い出し、窓へダッシュ。
二階。問題ない。
転移スキル《適応生存術》発動。
冷気、恐怖、暗闇――瞬時に最適化。
身体が“生き延びる動き”を自動選択する。
屋根へ跳躍。
壁走り。
視界外へ移動。
完璧だ。
だが――
「そこにいらっしゃいますわね」
背後から静かな声。
振り返ると、ローブを羽織った女性。
エリクス・アルヴェリア公爵夫人。
「この屋敷には結界があります。逃げきれませんわ」
夫が遺した防護結界。
俺はため息を吐く。
「俺は敵じゃない。女神のミスだ」
「女神……?」
彼女は俺をじっと見つめ、やがて言った。
「娘が、あなたに懐いていますの。
『おにいちゃんが来た』と」
「……は?」
「今夜だけ、いていただけませんか」
強くあろうとする瞳の奥に、崩れかけた孤独が見えた。
俺は舌打ちする。
「面倒くせぇ……」
だがトンファーを収めた。
「一晩だけだ」
こうして始まった。
派手な魔法も無敵もない。
ただ“生き残る力”だけを持つ俺の異世界生活。
影に徹し、守るだけの――
地味な守護者の物語。
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