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召喚士は辛いよ
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「「「おおおおおお」」」
「勇者様だー!」
「召喚が成功したぞー!」
周りは喜びの声で包まれていた。
当然召喚士の代表である自分も喜ぶ反面ホッとした。
なんせこの召喚には俺も含め5人分の魔力が必要だったからだ。
幼い頃から魔力持ちだと言うことで親には売られたが、売られた先の師匠が実力者だったから召喚術も極められたし、変な貴族にも目をつけられずに済んだし、召喚は成功するしで、漸く師匠の所に戻って師匠孝行が出来そうだ。
微かに遠い目をしながら森の中の師匠の家を思い浮かべる。
「ちょっと、何なのよ、これ」
ん?
ああ、忘れてた。召喚した勇者様に説明しなければ。
「勇者様、ようこそお越し下さいました。ここはツイッカンバン国でございます」
「椎間板?」
ちょっと発音が違う様に聞こえたが、まぁいい、説明を続けよう。
「勇者様、どうか我が国をお助け下さい」
「もしかして、これって流行りの異世界召喚ってやつ?」
流行りなのか?
しかしこの勇者、あんなに太腿剥き出しの服を着て、胸元も娼婦の様に開襟しているのに顔はノッペリしてて地味だな。
「是非お助け頂きたく、勇者様を召喚させて頂きました。詳しくは我が国の陛下からお聞き下さいませ」
説明が先に進まないな。早く帰りたいんだが。
「ふぅ~ん。つか、あんた、イケメンじゃん!しかも銀髪に赤い目とか何処の中二かっつーの!」
「は、はい?」
え?え?なんだこいつ。
確かに俺の髪と目の色の組み合わせは珍しいが、いないわけじゃないぞ。
「うっける~~!何?左手とか疼いちゃうの?」
「ひ、左手ですか?確かに左手には召喚士の証である石がありますが……ヒッ!」
勇者は一瞬目を見開くと召喚陣から俺に向かって飛んで来た。
歩くのではなく、飛んだのだ。
因みに勇者が佇んでいた召喚陣の中心から、俺の立っていた場所までは大股で7歩ぐらいの距離があった。
「わぁ~ガチだわ!何この宝石?めっちゃ綺麗じゃん!それよりあんたの目!ルビーみたいだわ!」
勇者は俺の左手首を掴み、まじまじと石を見た後に俺の顔をガシッと両手で挟むと興奮した様にこう言った。
「惚れた!」
は???
一体何がどうなったのか、今、俺は勇者に腕を組まれたまま謁見の間に佇んでいる。
陛下の前で膝まづかないなんて不敬罪もいいとこだが、流石勇者と言ったところか馬鹿力で振り解けないのだ。
召喚部屋から謁見の間までの様子を周りに居た騎士から伝えられているのか、陛下も宰相様も近衛兵も若干気の毒そうに俺を見ている。いたたまれない。
「勇者殿、我が国は魔族の侵攻により危機に瀕しております。どうか勇者殿のお力をお貸し願えないだろうか?」
「うはっ!定番キターーーー!」
「ゆ、勇者様」
「ん?何?ダーリン?」
「ダーリンではございません!真面目にお聞き下さい!」
「大丈夫、大丈夫!そんで、あたしがマオーをやっつければいいんでしょ?」
勇者は人差し指と中指を立て、目の上下を挟む様にくっ付けながら陛下に向けて喋った。
異世界の礼儀なのか?
陛下も俺と同じことを思ったのか、勇者と同じ様に指を目に当てながら説明を続ける。
「何とか食い止めてはいるものの、徐々に押されておるのだ。ところで勇者殿のステータスはどうなっておるのかな?」
「勇者様、ステータス、オープンとお言葉を発して頂けますか?」
陛下の問いに宰相様は勇者に向かってステータス開示を促した。
「ステータスって、まんまゲームじゃん。えっと、ステータス、オープン!!」
開示されたステータスはこうだ。
鈴木 舞花 16
勇者
体力 SSS
魔力 SSS
魔力操作 SSS
回避 SSS
必中 SSS
速力 SSS
智力 D
何だこれ、金剛級の冒険者でもSだぞ?智力はまぁ、置いといて、SSSなんて化け物じゃないか。
「素晴らしいぞ!勇者殿は最強であったか!」
「あたし最強??ウェーーーィ!」
陛下も宰相様も周りの近衛兵達も喜びに湧いていた。
「召喚士シンゾーン、最強の勇者をよく召喚してくれた。素晴らしい働きである」
「はっ、勿体ないお言葉有り難き幸せにございます。これで我が師匠カンゾーの元に胸を張って帰れます」
「そうであったな。カンゾー殿にも宜しく伝えてくれ」
ああ、帰る前に王都で師匠へのお土産買わないとな。やっぱ酒が一番だろうか?
「ねぇねぇ、オーサマ?あたしこの召喚士?シンゾー?心臓?と、マオー倒しに行くから。これ決定事項だから」
は?こいつ何言ってんの?俺召喚士なんだけど。
「ゆ、勇者殿?その者は召喚士で戦いには向いとらんぞ?」
「うん、だから召喚でマオーを呼んじゃえばいいじゃん」
「「「は?」」」
陛下と宰相様と俺の声が重なる。
「ちょ、ちょっと、勇者様、無理、無理です!魔王を召喚なんて!」
「大丈夫だって!ゲーム的にやれそうだしぃ」
「げぇむってなんですか??無理です!魔力も足りませんし!」
一体何を言い出すんだ!この勇者は!
「マオーやっちゃえば残りの魔族なんてカスじゃん?ダーリンの魔力足んないんだったらあたしが魔力供給してやっから!」
陛下は開いた口が塞がらず、近衛兵はザワついている。当たり前だ。そんな非常識なこと出来るか!
そんな中宰相様が口を開いた。
「魔王を召喚ですか……。具体的にはどの様な状況で?」
「ん~魔族がシンコー?してくるってどのくらい来るの?」
「1度目の侵攻では1000体、2度目は1500体程でした」
「お、予想より少ないじゃん」
「少ないでしょうか?魔族は魔法攻撃に長けております。しかし我が国、いえ、人族は魔力を有している者は圧倒的に少ないのです」
それから俺は智力Dの勇者と宰相様の話し合いを青い顔して聞いていた。
そして今、俺は最前線に来ている。いや、来させられてる。
遥か向こうに黒い線が見える。
荒野の地平線に現れた魔族達だ。数はおよそ2000体と斥候から伝えられた。
俺から歩幅で言えば20歩程離れた場所に描かれた巨大召喚陣。
勇者は俺の背中から抱きつき魔力を注いで来るが、本当にこうしないと供給出来ないのだろうか。
早く終わらせたい。
黒い線は次第に形を表していく。人族よりも倍近い巨大な身体が黒くモヤを纏いながら近付いてくる。
俺は必死で詠唱を続ける。詠唱中でもドンドン魔力が失われていくが、その都度勇者から膨大な魔力が供給されてくるので魔力枯渇時に起こる頭痛も全く無い。
『魔王召喚!!!』
巨大魔法陣が黒い光を放ち、その中心部分から徐々に黒光りした2つの角が現れ始めた。
ギラりとした金色の瞳が現れると俺を威嚇しながら凝視してくる。怖い。
「我を呼んだのはお前か」
腰まで姿を現した時には魔族からもそれが目視出来たのか「魔王様だ」「何故魔王様がここに?」とザワついているのが聞こえる。
「呼んだのはダーリン、そんであたしが勇者!ほんじゃ行っきまーす!!」
「勇者だと……グッ」
俺は何を見せられているんだろうか?
ああ、魔族も血は赤いんだな。それに暖かいんだ。
俺は頭からバシャバシャと降りかかる血を感じていた。
勇者が手刀で魔王の頭から真っ二つに身体を引き裂いたのだ。
暫く立っていた魔王だったものはゆっくりと倒れていった。
「魔王様!!」
「ギャーーー!魔王様がーー!」
「化け物だ!!」
勇者は戸惑い混乱した魔族に向かって巨大な火の玉を何発も打ち放つ。
討伐と言うより蹂躙だった。
逃げ惑う魔族は次第に数を減らしていく。飛んで逃げようとした魔族にも容赦が無かった。
俺は血塗れでその光景を見させられていた。
どのくらいの時間が経っただろうか?
「シンゾーちゃん?ダーリン?真っ赤って、あたしとおそろいじゃん?ペアルック?ふふふ」
師匠、師匠、すみません。俺、多分新たな魔王に拉致されました。
帰れそうにないです。
勇者は畏怖の対象としかならず、陛下と宰相様も勇者を称えつつも取り扱いに困っている状態だった。
結局褒美として王都に豪邸と爵位を無理矢理押し付け、俺を犠牲に城から切り離すことにしたらしい。
勿論勇者は「あたしが貴族って、凄くない?」と上機嫌だった。
師匠には手紙を送ったが届いただろうか?
「ダーリン、豪邸の掃除とかもメイドがしてくれるんだって!メイドだよ?メイド!明後日には愛の巣に入れるって」
明後日には俺は墓場に入るらしい。
そしてとうとうその日がやって来た。
勇者はメイドの案内で玄関から入る。
それはもうニコニコしながら。
赤い絨毯には小さな魔法陣。ん?魔法陣?
召喚陣だ!
目も開けられないぐらいの白い閃光が天井に向けて走り、気が付いた時には勇者の姿は消えていた。
「成功したようじゃな」
聞き慣れた声。
「し、師匠ーーー!」
「シンゾーン、よくぞ耐えた」
俺の顔は涙でグシャグシャだったろう。
「膨大な魔力、手紙に書かれた通り魔王の様な勇者じゃったな」
「師匠、師匠、ありがとうございます!」
師匠は俺の手紙を読んで陛下の元を訪れ、今回館のエントランスに召喚陣を組み込んだらしい。
元の世界に送り返すことは、召喚魔法の権威である師匠でも難しい魔法だと聞いていたのだが、流石師匠だ。
「師匠!私は一生師匠に付いて行きます!」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「勇者様、よく召喚を受けて下さいました。どうか我が国の発展に御助力お願い致します。我が国ノーサイボーは資源に乏しく、隣国のツイッカンバンに遅れをとっております」
「ツイッカンバンが隣国?」
「はい」
「なんだ、資源?無かったら隣から奪っちゃえばいいじゃん?」
「それは宣戦布告しろと言うことでしょうか?」
「宣戦布告、いいね!あたしも丁度ツイッカンバンに欲しいものがあるから手伝ってあげるよ」
(ダーリン、待っててね)
「勇者様だー!」
「召喚が成功したぞー!」
周りは喜びの声で包まれていた。
当然召喚士の代表である自分も喜ぶ反面ホッとした。
なんせこの召喚には俺も含め5人分の魔力が必要だったからだ。
幼い頃から魔力持ちだと言うことで親には売られたが、売られた先の師匠が実力者だったから召喚術も極められたし、変な貴族にも目をつけられずに済んだし、召喚は成功するしで、漸く師匠の所に戻って師匠孝行が出来そうだ。
微かに遠い目をしながら森の中の師匠の家を思い浮かべる。
「ちょっと、何なのよ、これ」
ん?
ああ、忘れてた。召喚した勇者様に説明しなければ。
「勇者様、ようこそお越し下さいました。ここはツイッカンバン国でございます」
「椎間板?」
ちょっと発音が違う様に聞こえたが、まぁいい、説明を続けよう。
「勇者様、どうか我が国をお助け下さい」
「もしかして、これって流行りの異世界召喚ってやつ?」
流行りなのか?
しかしこの勇者、あんなに太腿剥き出しの服を着て、胸元も娼婦の様に開襟しているのに顔はノッペリしてて地味だな。
「是非お助け頂きたく、勇者様を召喚させて頂きました。詳しくは我が国の陛下からお聞き下さいませ」
説明が先に進まないな。早く帰りたいんだが。
「ふぅ~ん。つか、あんた、イケメンじゃん!しかも銀髪に赤い目とか何処の中二かっつーの!」
「は、はい?」
え?え?なんだこいつ。
確かに俺の髪と目の色の組み合わせは珍しいが、いないわけじゃないぞ。
「うっける~~!何?左手とか疼いちゃうの?」
「ひ、左手ですか?確かに左手には召喚士の証である石がありますが……ヒッ!」
勇者は一瞬目を見開くと召喚陣から俺に向かって飛んで来た。
歩くのではなく、飛んだのだ。
因みに勇者が佇んでいた召喚陣の中心から、俺の立っていた場所までは大股で7歩ぐらいの距離があった。
「わぁ~ガチだわ!何この宝石?めっちゃ綺麗じゃん!それよりあんたの目!ルビーみたいだわ!」
勇者は俺の左手首を掴み、まじまじと石を見た後に俺の顔をガシッと両手で挟むと興奮した様にこう言った。
「惚れた!」
は???
一体何がどうなったのか、今、俺は勇者に腕を組まれたまま謁見の間に佇んでいる。
陛下の前で膝まづかないなんて不敬罪もいいとこだが、流石勇者と言ったところか馬鹿力で振り解けないのだ。
召喚部屋から謁見の間までの様子を周りに居た騎士から伝えられているのか、陛下も宰相様も近衛兵も若干気の毒そうに俺を見ている。いたたまれない。
「勇者殿、我が国は魔族の侵攻により危機に瀕しております。どうか勇者殿のお力をお貸し願えないだろうか?」
「うはっ!定番キターーーー!」
「ゆ、勇者様」
「ん?何?ダーリン?」
「ダーリンではございません!真面目にお聞き下さい!」
「大丈夫、大丈夫!そんで、あたしがマオーをやっつければいいんでしょ?」
勇者は人差し指と中指を立て、目の上下を挟む様にくっ付けながら陛下に向けて喋った。
異世界の礼儀なのか?
陛下も俺と同じことを思ったのか、勇者と同じ様に指を目に当てながら説明を続ける。
「何とか食い止めてはいるものの、徐々に押されておるのだ。ところで勇者殿のステータスはどうなっておるのかな?」
「勇者様、ステータス、オープンとお言葉を発して頂けますか?」
陛下の問いに宰相様は勇者に向かってステータス開示を促した。
「ステータスって、まんまゲームじゃん。えっと、ステータス、オープン!!」
開示されたステータスはこうだ。
鈴木 舞花 16
勇者
体力 SSS
魔力 SSS
魔力操作 SSS
回避 SSS
必中 SSS
速力 SSS
智力 D
何だこれ、金剛級の冒険者でもSだぞ?智力はまぁ、置いといて、SSSなんて化け物じゃないか。
「素晴らしいぞ!勇者殿は最強であったか!」
「あたし最強??ウェーーーィ!」
陛下も宰相様も周りの近衛兵達も喜びに湧いていた。
「召喚士シンゾーン、最強の勇者をよく召喚してくれた。素晴らしい働きである」
「はっ、勿体ないお言葉有り難き幸せにございます。これで我が師匠カンゾーの元に胸を張って帰れます」
「そうであったな。カンゾー殿にも宜しく伝えてくれ」
ああ、帰る前に王都で師匠へのお土産買わないとな。やっぱ酒が一番だろうか?
「ねぇねぇ、オーサマ?あたしこの召喚士?シンゾー?心臓?と、マオー倒しに行くから。これ決定事項だから」
は?こいつ何言ってんの?俺召喚士なんだけど。
「ゆ、勇者殿?その者は召喚士で戦いには向いとらんぞ?」
「うん、だから召喚でマオーを呼んじゃえばいいじゃん」
「「「は?」」」
陛下と宰相様と俺の声が重なる。
「ちょ、ちょっと、勇者様、無理、無理です!魔王を召喚なんて!」
「大丈夫だって!ゲーム的にやれそうだしぃ」
「げぇむってなんですか??無理です!魔力も足りませんし!」
一体何を言い出すんだ!この勇者は!
「マオーやっちゃえば残りの魔族なんてカスじゃん?ダーリンの魔力足んないんだったらあたしが魔力供給してやっから!」
陛下は開いた口が塞がらず、近衛兵はザワついている。当たり前だ。そんな非常識なこと出来るか!
そんな中宰相様が口を開いた。
「魔王を召喚ですか……。具体的にはどの様な状況で?」
「ん~魔族がシンコー?してくるってどのくらい来るの?」
「1度目の侵攻では1000体、2度目は1500体程でした」
「お、予想より少ないじゃん」
「少ないでしょうか?魔族は魔法攻撃に長けております。しかし我が国、いえ、人族は魔力を有している者は圧倒的に少ないのです」
それから俺は智力Dの勇者と宰相様の話し合いを青い顔して聞いていた。
そして今、俺は最前線に来ている。いや、来させられてる。
遥か向こうに黒い線が見える。
荒野の地平線に現れた魔族達だ。数はおよそ2000体と斥候から伝えられた。
俺から歩幅で言えば20歩程離れた場所に描かれた巨大召喚陣。
勇者は俺の背中から抱きつき魔力を注いで来るが、本当にこうしないと供給出来ないのだろうか。
早く終わらせたい。
黒い線は次第に形を表していく。人族よりも倍近い巨大な身体が黒くモヤを纏いながら近付いてくる。
俺は必死で詠唱を続ける。詠唱中でもドンドン魔力が失われていくが、その都度勇者から膨大な魔力が供給されてくるので魔力枯渇時に起こる頭痛も全く無い。
『魔王召喚!!!』
巨大魔法陣が黒い光を放ち、その中心部分から徐々に黒光りした2つの角が現れ始めた。
ギラりとした金色の瞳が現れると俺を威嚇しながら凝視してくる。怖い。
「我を呼んだのはお前か」
腰まで姿を現した時には魔族からもそれが目視出来たのか「魔王様だ」「何故魔王様がここに?」とザワついているのが聞こえる。
「呼んだのはダーリン、そんであたしが勇者!ほんじゃ行っきまーす!!」
「勇者だと……グッ」
俺は何を見せられているんだろうか?
ああ、魔族も血は赤いんだな。それに暖かいんだ。
俺は頭からバシャバシャと降りかかる血を感じていた。
勇者が手刀で魔王の頭から真っ二つに身体を引き裂いたのだ。
暫く立っていた魔王だったものはゆっくりと倒れていった。
「魔王様!!」
「ギャーーー!魔王様がーー!」
「化け物だ!!」
勇者は戸惑い混乱した魔族に向かって巨大な火の玉を何発も打ち放つ。
討伐と言うより蹂躙だった。
逃げ惑う魔族は次第に数を減らしていく。飛んで逃げようとした魔族にも容赦が無かった。
俺は血塗れでその光景を見させられていた。
どのくらいの時間が経っただろうか?
「シンゾーちゃん?ダーリン?真っ赤って、あたしとおそろいじゃん?ペアルック?ふふふ」
師匠、師匠、すみません。俺、多分新たな魔王に拉致されました。
帰れそうにないです。
勇者は畏怖の対象としかならず、陛下と宰相様も勇者を称えつつも取り扱いに困っている状態だった。
結局褒美として王都に豪邸と爵位を無理矢理押し付け、俺を犠牲に城から切り離すことにしたらしい。
勿論勇者は「あたしが貴族って、凄くない?」と上機嫌だった。
師匠には手紙を送ったが届いただろうか?
「ダーリン、豪邸の掃除とかもメイドがしてくれるんだって!メイドだよ?メイド!明後日には愛の巣に入れるって」
明後日には俺は墓場に入るらしい。
そしてとうとうその日がやって来た。
勇者はメイドの案内で玄関から入る。
それはもうニコニコしながら。
赤い絨毯には小さな魔法陣。ん?魔法陣?
召喚陣だ!
目も開けられないぐらいの白い閃光が天井に向けて走り、気が付いた時には勇者の姿は消えていた。
「成功したようじゃな」
聞き慣れた声。
「し、師匠ーーー!」
「シンゾーン、よくぞ耐えた」
俺の顔は涙でグシャグシャだったろう。
「膨大な魔力、手紙に書かれた通り魔王の様な勇者じゃったな」
「師匠、師匠、ありがとうございます!」
師匠は俺の手紙を読んで陛下の元を訪れ、今回館のエントランスに召喚陣を組み込んだらしい。
元の世界に送り返すことは、召喚魔法の権威である師匠でも難しい魔法だと聞いていたのだが、流石師匠だ。
「師匠!私は一生師匠に付いて行きます!」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「勇者様、よく召喚を受けて下さいました。どうか我が国の発展に御助力お願い致します。我が国ノーサイボーは資源に乏しく、隣国のツイッカンバンに遅れをとっております」
「ツイッカンバンが隣国?」
「はい」
「なんだ、資源?無かったら隣から奪っちゃえばいいじゃん?」
「それは宣戦布告しろと言うことでしょうか?」
「宣戦布告、いいね!あたしも丁度ツイッカンバンに欲しいものがあるから手伝ってあげるよ」
(ダーリン、待っててね)
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