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第一話
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「この国にはもう聖女などというものは必要ない!」
突然王宮に呼び出された聖女である私エル=ペールに、アルベール王国第十六代国王ミシス=アルベールは突然そう告げると、さっさと謁見の間を出て行ってしまいました。
いったい突然なんなの?
私の頭の中ははてなマークで一杯です。
先代の聖女から役割を受け継いで十年。
結婚もせず恋愛もせず一生懸命国を守るためにおつとめしてきたというのに。
その全てを国王になったばかりの若造が踏みにじったのです。
「どういうことなんですか!」
私はその場に居並ぶ国の重鎮たちに目を向けました。
しかし、そこには見知った顔は一人もいません。
前王が急逝し、国葬や様々な引き継ぎの執務に負われていた私は知らなかったのですが、ミシスが新国王として即位した時、今まで国に尽くしてきた重鎮たちを全て退任させ、自らの取り巻きをその位に就けたと知ったのは後の事。
いえ、たった一人だけ見知った顔が王が去った玉座の横に立っていました。
その男の名はエルダー=ロー。
この国の宰相補佐を務めていた男だったはずです。
「エルダー、あなたがどうしてそんな所にいるのかしら?」
王座の横に立てるのは宰相のみだったはず。
最初補佐でしかない彼がそこにいるのはおかしい……と、そこまで考えて私は気がつきました。
「どうしてだと? 宰相である私が王の側にいて何がおかしいというのだ?」
エルダーはその痩けた頬を醜く歪め笑うと私を感情のこもってない目で見下ろしながらそう答えたのです。
「カリウス様はどうしたの?」
「ああ、あの老いぼれなら今頃辺境の地でゆっくりと余生を楽しんでおられる頃でしょうな」
「まさか貴方、カリウス様を追放したというのですか」
カリウス様は、前王と共にこの国を守り続けてきた素晴らしい宰相でした。
前王が亡くなられた今、若き新国王を見守り育て導く、それが彼に託された使命のはずだというのに。
「さて、もうそれくらいでよろしいですかな? 我々はこれからの新しい国家運営で忙しいのです」
「どういうことですか?」
「どうもこうも。今まで『聖女』等というまがい物の神に不当に支配されていた我が国を、これから正しき道へ戻さないといけないのでね」
聖女をまがい物扱いとは。
私は彼のその言葉に絶望しました。
どうやら先王は王子にこの国になぜ聖女が必要なのかを伝えぬまま亡くなってしまったようですね。
「本当に私を……聖女をこの国は捨てるおつもりですか?」
私は怒りと共に諦めににた気持ちに苛まれつつそうエルダーに問いかけました。
ですが、それに対する返答は――
「なんだ。まだ出て行かないのか? おいお前たち、この女をつまみ出せ! そして二度と王宮へ入れるんじゃないぞ!」
そんな非常な言葉だったのです。
私はその言葉を聞いて兵士たちに引きずられるように謁見の間を出ました。
そして、その扉が閉まる前に最後に一言だけエルダーに聞こえるように大きな声で叫んだのです。
『聖女を捨てたこの国は滅びるわ。その事を心に刻みつけておきなさい!!』
突然王宮に呼び出された聖女である私エル=ペールに、アルベール王国第十六代国王ミシス=アルベールは突然そう告げると、さっさと謁見の間を出て行ってしまいました。
いったい突然なんなの?
私の頭の中ははてなマークで一杯です。
先代の聖女から役割を受け継いで十年。
結婚もせず恋愛もせず一生懸命国を守るためにおつとめしてきたというのに。
その全てを国王になったばかりの若造が踏みにじったのです。
「どういうことなんですか!」
私はその場に居並ぶ国の重鎮たちに目を向けました。
しかし、そこには見知った顔は一人もいません。
前王が急逝し、国葬や様々な引き継ぎの執務に負われていた私は知らなかったのですが、ミシスが新国王として即位した時、今まで国に尽くしてきた重鎮たちを全て退任させ、自らの取り巻きをその位に就けたと知ったのは後の事。
いえ、たった一人だけ見知った顔が王が去った玉座の横に立っていました。
その男の名はエルダー=ロー。
この国の宰相補佐を務めていた男だったはずです。
「エルダー、あなたがどうしてそんな所にいるのかしら?」
王座の横に立てるのは宰相のみだったはず。
最初補佐でしかない彼がそこにいるのはおかしい……と、そこまで考えて私は気がつきました。
「どうしてだと? 宰相である私が王の側にいて何がおかしいというのだ?」
エルダーはその痩けた頬を醜く歪め笑うと私を感情のこもってない目で見下ろしながらそう答えたのです。
「カリウス様はどうしたの?」
「ああ、あの老いぼれなら今頃辺境の地でゆっくりと余生を楽しんでおられる頃でしょうな」
「まさか貴方、カリウス様を追放したというのですか」
カリウス様は、前王と共にこの国を守り続けてきた素晴らしい宰相でした。
前王が亡くなられた今、若き新国王を見守り育て導く、それが彼に託された使命のはずだというのに。
「さて、もうそれくらいでよろしいですかな? 我々はこれからの新しい国家運営で忙しいのです」
「どういうことですか?」
「どうもこうも。今まで『聖女』等というまがい物の神に不当に支配されていた我が国を、これから正しき道へ戻さないといけないのでね」
聖女をまがい物扱いとは。
私は彼のその言葉に絶望しました。
どうやら先王は王子にこの国になぜ聖女が必要なのかを伝えぬまま亡くなってしまったようですね。
「本当に私を……聖女をこの国は捨てるおつもりですか?」
私は怒りと共に諦めににた気持ちに苛まれつつそうエルダーに問いかけました。
ですが、それに対する返答は――
「なんだ。まだ出て行かないのか? おいお前たち、この女をつまみ出せ! そして二度と王宮へ入れるんじゃないぞ!」
そんな非常な言葉だったのです。
私はその言葉を聞いて兵士たちに引きずられるように謁見の間を出ました。
そして、その扉が閉まる前に最後に一言だけエルダーに聞こえるように大きな声で叫んだのです。
『聖女を捨てたこの国は滅びるわ。その事を心に刻みつけておきなさい!!』
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