暁闇の騎士

琉斗六

文字の大きさ
33 / 75

8-4

しおりを挟む
 レヴィアタン号は、レーダーとソナーが使えない海域を離れ、安全な場所に移動していた。

「ネフェスト艦長、妨害物質の成分分析が終わりました。廃魔石の粉と思われます」
「廃魔石……って、魔力放出できなくなった……アレか?」
「そうです。かなり細かい粉状にすることで、魔力を吸収するようですね。魔力砲を実弾しか撃てなかったの、むしろ不幸中の幸いでしたよ。魔力吸収では、それが命綱になった形です」
「なるほど、海の中なら沈殿に時間が掛かるから、効果も大きいな」
「そうすると、沈下にかなりの時間を要するんじゃないですか?」

 パネルを見ているヒューレルが言った。

「レーダーが効かないんじゃ、ミスティがどこに流されたのか、見当もつかないしな……」
「艦長。前方に識別不明の潜水艇。小型ですが、早いな……。なんだろう?」

 ヒューレルの報告に、トリスタンは顔をしかめる。

「まさか、魔人が?」
「いや、闇魔力ならむしろ識別は簡単ですよ。って言うか、通信入りました」

 ヒューレルは、通信に集中したあとに、驚き顔でトリスタンを見た。

「艦長、ヴァルハラです。こちらが発信した遭難信号を受信して、この辺りの海域を捜索中だそうです」
「遭難信号……? あ、魔導通信が届いたかどうかわからないって言ってた、あれか」
「ヴァルハラって、そんな微弱な信号まで拾えるのか……?」

 シェイドとトリスタンが、それぞれに驚きの声をもらした。
 ヒューレルがパネルから顔を上げる。

「艦長、なんかあっちの様子、変ですよ」

 正面に止まった、白い機体に金のラインが入った小型潜水艦。
 ライトがチカチカと明滅している。
 トリスタンが身を乗り出した。

「なんだろう?」

 相手の潜水艇は、こちらの有視界航行可能窓を正確に見据えるように、真正面に静止した。
 こちらの反応を測るように、リズムのある光が点滅を繰り返している。
 やや間を置いて、ヒューレルが叫んだ。

「世界共通点滅信号だ!」

 そして、手元の古式ゆかしいボードを手に取ると、相手が繰り返す点滅をメモに取っている。

「……今どき紙?」

 後ろで見ていたシェイドが呟く。

「この状況で魔導デバイス使うほーがやばいでしょ」
「なぜ?」
「こっちが通信に音声応答してるのに、わざわざ光の点滅でなんかを説明してるのなんて、盗聴の可能性しか考えらんないっしょ。……えっと、"ミスティは無事保護、安心されたし" ……です!」

 ヒューレルの言葉に、シェイドが歓声を上げた。

「本当ですか!」
「つまり……不死身の男は、ちゃんと自分の事情を伝えられる程度に回復したってことか。ミスティから聞いて、通信が傍受ぼうじゅされている可能性を考えて、直に接触してるんじゃないのか?」
「ってことは、あんまり長く音声通信を返さないと、通信を傍受ぼうじゅしている相手に不審に思われますよね」
「よし、音声通信は僕が応対する。ヒューレルは、あちらとライトで会話して、状況を聞いてくれ」
「わかりました」

 トリスタンとヒューレルは、パネルを切り替え、音声通信を操縦席に引き渡す。

「こちら、深海遺構調査団レガッタ・デ・ガルディア所属のレヴィアタン号、トリスタン・ネフェスト艦長だ。海上で漂流中の船舶から、二人の遭難者を保護したが、そのあとに船籍不明の敵襲を受け遭難。保護した二名はアクアラングを付けて本艦より退去した。その後、不安定ながら再始動に成功、現在は自力航行が可能になったので、退去した二名の捜索をおこなっていた」

 ヒューレルは、受けた端から詳細をメモ紙にしてトリスタンに渡した。
 トリスタンは内容を確認して、わざと "二名の遭難者は退去した" と告げたのだ。

「ヴァルハラ、了解。では、救助の必要なしですね」
「出動、感謝する」

 トリスタンは、真から感謝の念を込めて通信を切った。

「いやぁ、世界共通点滅信号、久々すぎて途中ちょっと混乱しましたよ。こりゃ、少し勉強し直さないとだめかなぁ」

 隣でヒューレルが、笑い混じりにそう言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薄紅の檻、月下の契り

雪兎
BL
あらすじ 大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。 没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。 しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。 鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。 一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。 冷ややかな契約婚として始まった同居生活。 だが、伊織は次第に知ることになる。 鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。 発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。 伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。 月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。 大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

窓のない部屋の、陽だまりみたいな君

MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。 そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。 ​そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。 完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。 ​「五分だけ、ここにいさせてくれないか」 ​一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。 次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。 住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

恋なし、風呂付き、2LDK

蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。 面接落ちたっぽい。 彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。 占い通りワーストワンな一日の終わり。 「恋人のフリをして欲しい」 と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。 「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

ルピナスの花束

キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。 ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。 想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。

処理中です...