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後日譚
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煌環の騎士は、浮遊城が再建されるまで、同盟連邦評議会の本部内に、仮住まいすることとなった。
そして騎士たちが再招集され、続々と集まっていた。
ミスティは、ラウンジで報告書に目を通していた。
隣ではクリスが、同じようにページをめくっている。
「はぁい、ミスティ、クリス」
明るい声とともに姿を現したのはダイアナだった。
「やあ、ダイアナ」
「久しぶりだな。あのときは、本当に世話になった」
クリスはそっけなく言っただけだったが、ミスティは素早く立ち上がった。
浮遊城最後の日、
ミスティを連れ出してくれたのは、他ならぬ彼女だった。
感謝の気持ちを込めて、ミスティはダイアナに短くハグを送る。
「あら、ずいぶん顔つきが変わったわね。前はお人形さんみたいだったのに」
ミスティに勧められて、ダイアナはクリスとの間に座る。
「ちらっと聞いたけど、あのあと、すごい活躍をしたんですって?」
「いや、僕はなにも。むしろ……きみに改めて謝りたくて、今日ここで話せてよかった」
「へえ? なにかしら」
「……あの時、浮遊城の最期と、クリスのことを教えてくれたろう。あの時の僕は……あまりに鈍かった。きみが僕のために怒ってくれたって、全然わからなかった」
ミスティのまさかの懺悔に、ダイアナは一瞬目を見開いた。
あの頃にはなかった "人間らしさ" が、明らかに彼の表情にあった。
「あなた、本当にいろいろ経験してきたのね」
「……ああ。正直、ひどい目に遭ったよ。人が残酷になった時ほど恐ろしいことはないって、身をもって知った。……僕はあの時、クリスがてっきり僕を "気晴らしに使ってる" んだと思ってたけど──全然、そんなんじゃなかったんだ」
ミスティの軽すぎる発言に、黙ってコーヒーを飲んでいたクリスは盛大に噴いた。
「ミスティ……よせ……!」
「ちょっと、それは聞き捨てならない話ね。クリスは、てっきりミスティを "気遣い" つつ口説きに行ったと思ってたけど」
「……えっ? ……ああ、そうか。あれは口説きだったのか?」
真顔で首をかしげるミスティに、クリスは泣きそうである。
しかし、なんらかの言い訳をしようにも、そこにはダイアナという "最強の壁" が立ちはだかっていた。
「ねえ、ミスティ。クリスはあなたに、なんて言ったの?」
「……ええと……改めて聞かれると話しにくいが……。最初は、シャワールームで突然キスをされて……。あのときは、僕もほんとに……ひどい対応をしたんだ。クリスにも謝らないといけない」
にこやかに話を促しているが、ダイアナの背後のクリスは悪寒を感じていた。
気づかないミスティは、続ける。
「でもまさか……シャワールームで、最後までされるとは思わなかったから……」
周囲に聞こえないように声は控えめになったが──。
聞こえるべき二人には、ちゃんと聞こえていた。
「……なるほど。そういう話なのね」
静かに立ち上がったダイアナは、報告書に隠れようとするクリスの襟首をがっしり掴んで引きずり出す。
「ダ……、ダイアナ……さん?」
「クリス、知ってる? それって世間一般には "強姦" って言うのよ」
言い終えるより早く、ダイアナの拳が炸裂した。
飛竜を扱い自由に空を飛ぶ飛竜騎士団の長は、拳に容赦がなかった。
クリスの体は、軽く後ろに吹っ飛ばされる。
「えっ、ちょっ……!? ダイアナ!?!?」
「いい? ミスティ。嫌なことは嫌って、ちゃんと断らなきゃダメなのよ」
「え……? 断る必要はないだろう?」
「あら、じゃあ合意だったの?」
「いや、僕はネクシオンだし。クリスの気晴らしに "使ってもらえる" なら構わないかと……」
その発言に、ダイアナの氷嵐が暴風雪へと進化した。
よろよろと立ち上がったクリスが、再び襟を掴まれる。
「うわっ!?」
「スヴェン……まさか、ずーっとミスティを "おもちゃ" にしてたの?」
「と、とんでもございません! 断じて! そのようなことは!」
「ほんと~うにぃ~?」
ダイアナの目が、鋭くミスティを捉える。
クリスは激しく首を横に振っていた。
「ええと……クリスは本当によくしてくれてるよ。きみが恋人だった頃のものを、いろいろ……その……使わせてもらったり……とか? してたけど。わざわざ僕のために、その……え……選んで? 揃えてくれたし……。問題ない」
「ちょ、ミスティ……それはむしろ爆弾……!」
クリスが悲鳴を上げる間もなく、襟がさらに締め上げられた。
だが、オロオロと取りなそうとするミスティの姿に、ダイアナの表情がふっと和らぐ。
「……まあ、いいわ。ミスティ。あなたが無事に戻ってきて、人の顔で笑ってるのを見られて、安心した」
「ありがとう。……本当に、全部クリスのおかげなんだ。……その、もう手を離してやってくれないか……?」
しぶしぶ、といった顔でクリスを見下ろすと、ダイアナはぽいっと彼を床に投げ捨てる。
クリスはようやく呼吸を取り戻し、床の上でゴホゴホと咳き込んだ。
「じゃあね。お幸せに、ミスティ」
ダイアナはミスティをぎゅっと抱きしめ、
その背中でミスティが見ていないのをいいことに──
クリスの向こう脛を思い切り蹴り飛ばして、颯爽と立ち去っていった。
終わり。
そして騎士たちが再招集され、続々と集まっていた。
ミスティは、ラウンジで報告書に目を通していた。
隣ではクリスが、同じようにページをめくっている。
「はぁい、ミスティ、クリス」
明るい声とともに姿を現したのはダイアナだった。
「やあ、ダイアナ」
「久しぶりだな。あのときは、本当に世話になった」
クリスはそっけなく言っただけだったが、ミスティは素早く立ち上がった。
浮遊城最後の日、
ミスティを連れ出してくれたのは、他ならぬ彼女だった。
感謝の気持ちを込めて、ミスティはダイアナに短くハグを送る。
「あら、ずいぶん顔つきが変わったわね。前はお人形さんみたいだったのに」
ミスティに勧められて、ダイアナはクリスとの間に座る。
「ちらっと聞いたけど、あのあと、すごい活躍をしたんですって?」
「いや、僕はなにも。むしろ……きみに改めて謝りたくて、今日ここで話せてよかった」
「へえ? なにかしら」
「……あの時、浮遊城の最期と、クリスのことを教えてくれたろう。あの時の僕は……あまりに鈍かった。きみが僕のために怒ってくれたって、全然わからなかった」
ミスティのまさかの懺悔に、ダイアナは一瞬目を見開いた。
あの頃にはなかった "人間らしさ" が、明らかに彼の表情にあった。
「あなた、本当にいろいろ経験してきたのね」
「……ああ。正直、ひどい目に遭ったよ。人が残酷になった時ほど恐ろしいことはないって、身をもって知った。……僕はあの時、クリスがてっきり僕を "気晴らしに使ってる" んだと思ってたけど──全然、そんなんじゃなかったんだ」
ミスティの軽すぎる発言に、黙ってコーヒーを飲んでいたクリスは盛大に噴いた。
「ミスティ……よせ……!」
「ちょっと、それは聞き捨てならない話ね。クリスは、てっきりミスティを "気遣い" つつ口説きに行ったと思ってたけど」
「……えっ? ……ああ、そうか。あれは口説きだったのか?」
真顔で首をかしげるミスティに、クリスは泣きそうである。
しかし、なんらかの言い訳をしようにも、そこにはダイアナという "最強の壁" が立ちはだかっていた。
「ねえ、ミスティ。クリスはあなたに、なんて言ったの?」
「……ええと……改めて聞かれると話しにくいが……。最初は、シャワールームで突然キスをされて……。あのときは、僕もほんとに……ひどい対応をしたんだ。クリスにも謝らないといけない」
にこやかに話を促しているが、ダイアナの背後のクリスは悪寒を感じていた。
気づかないミスティは、続ける。
「でもまさか……シャワールームで、最後までされるとは思わなかったから……」
周囲に聞こえないように声は控えめになったが──。
聞こえるべき二人には、ちゃんと聞こえていた。
「……なるほど。そういう話なのね」
静かに立ち上がったダイアナは、報告書に隠れようとするクリスの襟首をがっしり掴んで引きずり出す。
「ダ……、ダイアナ……さん?」
「クリス、知ってる? それって世間一般には "強姦" って言うのよ」
言い終えるより早く、ダイアナの拳が炸裂した。
飛竜を扱い自由に空を飛ぶ飛竜騎士団の長は、拳に容赦がなかった。
クリスの体は、軽く後ろに吹っ飛ばされる。
「えっ、ちょっ……!? ダイアナ!?!?」
「いい? ミスティ。嫌なことは嫌って、ちゃんと断らなきゃダメなのよ」
「え……? 断る必要はないだろう?」
「あら、じゃあ合意だったの?」
「いや、僕はネクシオンだし。クリスの気晴らしに "使ってもらえる" なら構わないかと……」
その発言に、ダイアナの氷嵐が暴風雪へと進化した。
よろよろと立ち上がったクリスが、再び襟を掴まれる。
「うわっ!?」
「スヴェン……まさか、ずーっとミスティを "おもちゃ" にしてたの?」
「と、とんでもございません! 断じて! そのようなことは!」
「ほんと~うにぃ~?」
ダイアナの目が、鋭くミスティを捉える。
クリスは激しく首を横に振っていた。
「ええと……クリスは本当によくしてくれてるよ。きみが恋人だった頃のものを、いろいろ……その……使わせてもらったり……とか? してたけど。わざわざ僕のために、その……え……選んで? 揃えてくれたし……。問題ない」
「ちょ、ミスティ……それはむしろ爆弾……!」
クリスが悲鳴を上げる間もなく、襟がさらに締め上げられた。
だが、オロオロと取りなそうとするミスティの姿に、ダイアナの表情がふっと和らぐ。
「……まあ、いいわ。ミスティ。あなたが無事に戻ってきて、人の顔で笑ってるのを見られて、安心した」
「ありがとう。……本当に、全部クリスのおかげなんだ。……その、もう手を離してやってくれないか……?」
しぶしぶ、といった顔でクリスを見下ろすと、ダイアナはぽいっと彼を床に投げ捨てる。
クリスはようやく呼吸を取り戻し、床の上でゴホゴホと咳き込んだ。
「じゃあね。お幸せに、ミスティ」
ダイアナはミスティをぎゅっと抱きしめ、
その背中でミスティが見ていないのをいいことに──
クリスの向こう脛を思い切り蹴り飛ばして、颯爽と立ち去っていった。
終わり。
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