クロスオーバーKAGURAZAKA

琉斗六

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Untitled:バーテンダーとの会話

9.

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「俺、オヤジに会いに行っても…良いんすかね?」
「だって、お父さんから会いたいって言われてるんだろ?」
「でも、もう随分以前だし。俺はずっと、会いに行ってないし…」
「しつこくしたら嫌われるって思って、次の手紙を出せないだけかもだろ? 一度その、弁護士ってのに連絡してみたら?」

 妙に晴れ晴れとした気持ちになり、同時に到流は、文雄の言っていた「バーテンダーはカウンセラー」の意味が解ったような気がした。

「あの、なら俺もいっすか?」
「なんだい?」
「お客さんが、ホントに大事なのって、飲み屋をやる夢なんすか? それとも、家族なんすか?」
「え…っ?」
「時々来る、佐藤って和菓子屋のおっさん、元は自衛官だって言ってました。和菓子作るのが苦手で、甘い物も苦手で、だけどオヤジさんがガンで亡くなった時に、自分がお菓子作らなくても、のれんを守る方法を考えたって、言ってたんす」
「佐藤さんなら、俺も知ってる。穂刈さんを紹介してくれたし」
「じゃ、考えてみてください。脚立から落ちた時、オヤジさんが頭打って死んだとして、お客さんは『清々した』って思ったと思うんすか?」

 文雄はびっくりして、思わず返事が出来なかった。
 そして、到流の言う状況を想像した時に、やっぱり自分は今と同じように店の切り盛りをするために、バーテンダーを辞めていただろう事も、容易に想像がついてしまう。

「お客さんが、俺とオヤジの仲がこじれてる理由がわかったのは、お客さんも自分のオヤジさんと仲直りしたいって思ってるからなんじゃないんすか?」
「…あ…はは…、キミはすごいな」

 もし自分が飲食店を持つ夢に邁進し、いつかこの王様の涙のような店を構えたとして、心のどこかに父との確執を後悔する気持ちが残っただろう。
 例えどの選択肢を選んでも、選ばなかった道への未練は残る。
 文雄は、その事に気付いた。

「ありがとう。なんか、少し気が晴れたよ」
「いえ、俺の方こそ、ありがとうございました」

 厨房から、穂刈が顔を出した。

「川田君、上がっていいよ。文雄君は、俺が送っていくから」
「いえ、自分で帰れます。長々と、すみませんでした」

 酔いが冷めた様子の文雄に、穂刈は笑みを返す。

「そう。じゃあ、戸締まりよろしく」
「お疲れさまでした」

 到流の答えに、穂刈は頷いて店から出て行った。

「俺も帰るよ」

 文雄がスツールを降りる。

「また、来てください」

 到流はカウンターを回り込んで、出入り口まで文雄を見送りに来た。

「今度来る時は、お父さんと会った話を聞かせてよ」
「はい」

 到流は戸締まりをすると、以前に祖母から貰った弁護士の連絡先を探すために、部屋に戻った。



*バーテンダーとの会話:おわり*
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